DATAで見るケータイ業界

総務省のタスクフォースの影響で構造変化する端末市場の行方

 昨年末に開催された総務省の「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」では、大きく下記の3点が論点となった。

(1) 料金の透明化と公正性確保
(2) データ使用量の少ないライトユーザー向けの割安な料金プラン
(3) MVNOの普及・競争促進

 今回は、タスクフォースの要請を受けた後の市場の変化について見ていきたい。

構造変化する端末市場のイメージ(出典:MCA)

 携帯キャリアはタスクフォースの提言に対応するため、今年2月からは0円端末を一掃し、新たにライトユーザー向けに1GBプランを5000円弱で投入すると発表した。短期間で携帯会社を乗換え、現金を得ている人の原資を長期契約者が負担しているという不公平感の是正が今回のタスクフォース立ち上げの一つの理由ではあったが、その意味では一定の効果はあった。

 しかし、それ以上に店頭価格が高くなったことで、携帯ショップへの来店者数急減という新たな問題を引き起こしている。影響が出てそれほど時間が経過していないため、これが一時的なものなのか長期的なトレンドとなるのかの判断は難しいが、周辺のショップ関係者の話では2月以降、来店者数は2~3割程度減少しているという。

 一方、キャリア端末の高騰を受け、注目を集めているのがSIMフリー端末だ。3月、家電量販店のPOS情報を集計しているBCNは、1~2月のスマホ販売状況に関するレポートを発表した。

 それによると、実質0円端末の終了を前にした駆け込み需要で、1月はスマートフォンの販売台数が前年同月比138.6%と大幅に増加したが、2月に入ると前年同月比82.5%と急激に落ち込んだという。こうした中、急激に販売量を伸ばしているのがソフトバンクの「Y!mobile」とSIMフリー端末である。

 総務省は2007年にも携帯市場の健全化を目指し端末と回線の分離などを要請したが、この時には結果的に国内端末ベンダーの撤退と今につながるiPhone偏重という市場の変化を後押ししたものの、携帯キャリア中心の端末市場自体には大きな変化はなかった。

 しかし、MVNOというしっかりした受け皿ができた今は、携帯キャリア以外の選択肢があり、そこへ着実に水が流れているのだということを感じさせられる。機を見るに敏な家電量販店の一部では、既に売り場の主役を携帯キャリアからSIMフリーとY!mobileにチェンジ。売り場で好きなSIMフリー端末を顧客に選んでもらい、端末価格から数万円を値引きするようなY!mobileの売り方は、従来とは一線を画しユニークである。

 仮に今後もこうした流れが続くようなら、これまで携帯キャリア中心だった『端末市場の構造変化』や、さらに踏み込むなら『携帯キャリアショップの位置づけ』、『携帯キャリアにとって端末を扱うことの意味』などについても、考えねばならない時が早晩来るのかも知れない。

MCA

IT専門の調査・コンサルティング会社として、1993年に設立。「個別プロジェクトの受託」「調査レポート」「コンサルティング」などクオリティの高いサービス提供を行う。