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法改正で「初期契約解除」「海外端末の国内利用」はどうなるのか

 政府は4月3日、「電気通信事業法等の一部を改正する法律案」を閣議決定した。国会に提出された段階のため法案はまだ成立していないが、初期契約解除や海外端末の技適問題など利用者にとって関心の高い内容の改正も含まれている。

 そこで、改正案の内容を先取りし、論点整理を試みたい。

Q. 携帯電話の契約にもクーリングオフ制度が導入されると聞いたが本当か。

 契約直後であれば解約が可能な「初期契約解除制度」が改正電気通信事業法案に盛り込まれている。

 現行法では、携帯電話の販売や取次を行う者は、契約の際に料金などの提供条件を利用者に説明することが義務づけられている(第26条)。改正案ではこれに加え、書面の交付も明記された。なお、利用者が希望する場合は書類を電磁的に交付することも可能となっている。

 そして、その書面を受け取った日、またはサービスが提供開始された日のどちらか遅い方から8日間は、利用者は書面により契約の解除が行えることとなった。

 解除にあたり「損害賠償もしくは違約金の請求」を事業者が求めることは禁止されているため、解除の際に利用者が支払う必要があるのは通話料などの利用料実費のみで済む。ただし、改正案で「契約に関して利用者が支払うべき金額として総務省令で定める額」の徴収は認められており、今後の省令には留意する必要がある。

 また、改正案では、事業者が「8日以内でも解約はできません」と利用者を騙して解約を阻止する事案への対策も盛り込まれた。虚偽説明によって解約できないと誤認させられた利用者は、契約の解除ができることが記載された書面を受け取った日から8日間であれば初期契約解除が可能と改正案に明記されている。

 なお、ここで初期契約解除が可能なのはあくまで「電気通信役務の提供」すなわち通信契約に関する部分であり、端末の売買契約については対象外となる方向だ。

Q. 初期契約解除のほかには、どのような内容が盛り込まれているのか。

 総務省がまとめた「電気通信事業法等の一部を改正する法律案の概要」に「利用者・受信者の保護」と記載されているとおり、先述の初期契約解除制度をはじめ消費者保護を強化する内容が数多く盛り込まれた。

 改正案で新設された「電気通信事業者等の禁止行為」(改正電気通信事業法案 第27条の2)もその1つとして挙げられる。

 「利用者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものにつき、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為」や「契約の締結の勧誘を受けた者が当該契約を締結しない旨の意思を表示したにもかかわらず、当該勧誘を継続する行為」を禁止している。

 また、電気通信事業者に対しては、代理店などの業務委託先が適正かつ確実に業務を行うよう必要な措置を講ずることも求めている(同第27条の3)。

 いずれも、あえて法案化する必要があるのかと思える当たり前の内容だが、裏を返せば改正案に明記せざるを得ないほど現状はルールが守られていないとも言える。法改正を機に、関係各位が法律を遵守することを切に望みたい。

Q. いわゆる「技適」のない端末の国内利用は解禁されるのか。

 訪日外国人に対して、期間を定めた上で解禁される方向だ。

 改正電波法案 第4条において、国内を訪れる者が持ち込む端末について、適合表示無線設備でない場合であっても入国日から90日を超えない範囲に限っては「適合表示無線設備とみなす」ことで、実質的に利用が解禁される。

 ただし、総務大臣が告示により指定する、技適に相当する(海外の)技術基準に適合した端末に限られ、期間についても90日以内で別途総務省令で定められるものとなっている。

 一方、国内での違法な端末の利用を防ぐべく、規制の強化も盛り込まれた。

 技適のない端末が他の無線局の運用を妨害したり、そのおそれが認められる場合、現行の電波法では製造業者または販売業者に対して必要な措置を講ずるよう勧告できるようになっている(第102条の11)。改正電波法案では、製造業者、販売業者に加えて輸入業者も新たに勧告の対象に加えられた。

 さらに、新たに「無線通信の秩序の維持に資するため、技術基準に適合しない無線設備を製造し、輸入し、又は販売することのないように努めなければならない」との条文も記された。

MCA

IT専門の調査・コンサルティング会社として、1993年に設立。「個別プロジェクトの受託」「調査レポート」「コンサルティング」などクオリティの高いサービス提供を行う。