ケータイ用語の基礎知識

第694回:シンクコール とは

 「シンクコール」とは、スマートフォンでWebブラウジングやアプリの操作中でも表示したまま通話の着信ができ、また、通話相手と画面やカメラ映像などをリアルタイムで共有できるという機能です。

 auのVoLTE対応機種向けに、2015年1月29日からサービスが開始されました。対応機種では無料で利用可能です。ただし通話にかかる通話料、およびデータ通信にかかるパケット通信料は別途必要になります。

 2015年2月現在、「AQUOS SERIE mini SHV31」で利用できます。「URBANO V01」「isai VL LGV31」でもソフトウェアを更新すると利用できるようになっています。

VoLTEだから実現

 auの携帯電話はこれまで、通話には3G(CDMA2000)方式を用いていました。LTE対応機種でも、CS(回線交換)フォールバックといって、音声通話を使用する際はこの方式に切り替えられます。この方式では、パケット通信を行う際と同時に音声データを流すことはできません。そこで、携帯電話やスマートフォンを使っているときにデータ通信を行っているときに着信があると、パケット通信が通話中止まってしまうというような現象が起きます。ちなみに「割込通話サービス」というオプションを「停止」にすると、逆にパケット通信中は通話着信をしなくなります。

 VoLTE対応機種では、通話にはVoLTEという方式を採用しています。本連載でも過去に解説したように(※関連記事)VoLTEとは、デジタル化された音声をLTEのネットワークを使ったデータ通信でやりとりする方式です。これにより、音声とデータ通信を同時にやり取りできるようになり、通話しながらアプリで通信する、といったことが可能になりました。

VoLTEの裏でのデータ通信の応用のひとつが「シンクコール」

 音声通話と同時に通信できるようになることで、いくつか新しい使い道が実現できます。その応用のひとつがこのシンクコールです。

 シンクコールには、大きくわけて、2つの機能があります。1つは「基本機能」です。これは、通話相手がシンクコール非対応の機種でも利用できる機能で、Webを閲覧していたり、動画やゲームなどデータ通信を行うアプリを使用していたりするときに着信があった場合でも、その画面のまま着信し、通話をすることができます。もちろん、通話中もデータ通信が可能ですから、たとえばBluetoothヘッドセットなどを利用している場合であれば通話しながらWeb閲覧で次のページを見たり、動画を見続けることができます。この基本機能は、通話相手がシンクコール非対応でも利用が可能です。

 もうひとつの大きな機能は「シンク機能」です。これは、「スマートフォンの画面」「カメラで映している映像」「位置情報」「手書きの文字や絵」を通話しながら、通話相手とリアルタイムで共有することができるというものです。

「スマートフォンの画面」を共有すると、手元にあるスマホを操作して、通話相手にその画面内容を見せられます。

 また「カメラで写している映像」のシンクは、同じく通話中に「カメラシンク」をタップすることで利用が可能になります。この機能を使うと自分が撮影している映像を話しながら見せることが可能になります。

 同じく「位置情報」の共有は「位置シンク」をタップすることで利用できます。通話しながら、お互いの位置が地図上にマッピングされるので、位置を確認しながら相手を通話で誘導することなどが可能です。

 「手書きの文字や絵」は、通話相手と共有している写真などに手書きで文字や絵を書き込むことができるという機能です。描いた内容はお互いの画面に連動しますので、イメージを共有しての打ち合わせなどに使えるでしょう。

 これら4つの「シンク機能」は、「基本機能」とは異なり、VoLTEでの通話中でかつ、通話相手もau VoLTE対応機で1対1の通話の場合に利用が可能です。

 なお、VoLTEでは、基本的に音声パケットを優先的にネットワーク上に流すように制御が行われるようになっているため、回線状態が悪くなりデータ通信速度が遅くなったりした場合、「シンク機能」に使うための十分なデータ帯域が取れなくなり表示が乱れる場合や接続しにくくなる場合もあり得ます。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)