第566回:Simeji とは

大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我 ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連の Q&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


 「Simeji」は、Android端末向けの日本語入力用アプリです。Android端末には、標準の日本語入力方法が存在しますし、他の日本語入力システムが組み込まれている機種があるにも関わらず、Android用の日本語インプットメソッドとして非常に人気があります。もともとは個人が開発するアプリとして提供されていましたが、現在は、バイドゥ株式会社が事業取得しています。

 文字の入力方法として、iPhoneなどで採用されている「フリック入力」が利用できるほか、「ケータイ入力」「フルキーボード入力」「ポケベル入力」を利用することも可能です。

SimejiはAndroid端末向けの日本語インプットメソッド。フリック入力が可能だ

 Simejiというソフトの名前は「Social IME 字(Ji)」から由来しており、変換辞書としてオンライン上にある辞書「Social IME」を利用していたところから来ています。

 Social IMEは、インターネットユーザー上で辞書を共有し、使えば使うほど賢くなる日本語変換エンジンとして設計されたもので、Web上のテキストを収集してその統計情報から語彙を収集するようなことも行っていて、その語彙は、インターネット上のAPIから利用することができるようになっています。こうした仕組みから、かつてのSimejiでは、ひらがなを漢字に変換するたびにネット接続することがあったのですが、その後、端末上にあるOpenWnn辞書を利用して変換を行うようになったため、変換速度は格段に速くなり、使い勝手も大幅に向上しています。

 現在のバージョンでも、OpenWnn辞書に変換候補がない場合、語彙の豊富なSocial IMEを参照して変換することも依然として可能です。たとえば、顔文字やアスキーアートなどもSocial IMEには収録されているので、これらを使いたい場合は一度Social IMEを使うといいでしょう。Simejiには学習機能があり、一度Social IMEで変換した文字は、本体辞書に取り込まれます。


 ユニークな「マッシュルーム」ソフトの存在

 さらに、SimejiをユニークなIMEたらしめているのは、「マッシュルーム」の存在でしょう。このマッシュルームは、「Simeji」と連携するほかのソフトを呼び出して、さまざまな入力を補助する機能です。

 たとえば、「Contact Picker」というアプリは、Android端末に登録した「連絡先」からさまざまな情報を取り出すことができます。Simejiを使ってメールを書くときに、相手のアドレスを簡単に入力したくなれば、Simejiのマッシュルームボタンで「Contact Picker」を起動して連絡先の相手の項目を選択、そして、表示される項目からメールアドレスのチェックを入れて入力します。これで簡単にメールアドレスをテキストボックスに書くことができるわけです。メールアドレスだけでなく、連絡先に登録されている名前や電話番号ももちろん、ワンタッチで入力することができます。

 こうしたマッシュルームソフトは、Simejiの開発元以外からも多く作り出されていて、現在では、Google Play上で多種多様なマッシュルームを手に入れることが可能です。たとえば、Google Playで「マッシュルーム」で検索すると、さまざまなマッシュルームをワンパッケージにした「マッシュルームパック」や顔文字集の「KaoChou」、ドコモの絵文字を入力できる「docomo絵文字マッシュルーム」など、多種多様なマッシュルームソフトを見つけられます。

 なお、もともとSimejiの拡張機能として登場したマッシュルームですが、現在はSimeji以外のアプリでも利用できるようになっており、さらに応用範囲が広がってきています。たとえば、同じ日本語インプットメソッドである「ATOK」でも利用が可能ですし、ソーシャルサービス「Twitter」のクライアントとして有名な「twicca」などでは、マッシュルームを利用するためのプラグインが公開されています。

URL

Android向け日本語入力アプリ Simeji
http://simeji.me/




(大和 哲)

2012/6/5 12:25