第490回:Micro-USB とは

大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我 ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連の Q&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


 Micro-USBは、USB規格の標準化や普及活動などを行っている団体「USB Implementers Forum」によって策定されたUSB 2.0/3.0、およびUSB On-The-Goを補助する規格の一つです。

 正式には「Micro-USB ケーブル・コネクタ仕様」として、主にスマートフォンを中心とした携帯電話やモバイルデバイスのために、コネクタ形状、電気特性、ケーブル仕様などが定められています。最初のバージョンは、2007年、USB 2.0の補助規格として策定されました。

 現在では、この規格に沿ったコネクタが、スマートフォンを中心とした一部の携帯電話やモバイルデバイスに、充電用途やデータ通信用途で搭載されています。

 「Micro-USB ケーブル・コネクタ仕様」は、それだけで単独の規格ではなく、USB規格の補助として策定されています。具体的には、

・Micro-Bコネクタの規格 ・Micro-ABコネクタの規格 ・ケーブルの規格 ・Micro-A・Micro-Bの2種類のプラグ形状などの規格

が策定されており、それ以外は、USB2.0または、3.0、あるいはUSB On-The-Goと規格を使用する、と定められています。つまり、コネクタに流れる電圧が5Vであったり、ケーブル長さは導体断面積0.56ミリのAWG20規格でもので最長5.3メートルまでといった部分は変わりません。

 「Micro-Bコネクタ」は、一般的な用途、つまりPCの周辺機器として使用される携帯電話やモバイルデバイスに装備されます。

 「Micro-ABコネクタ」は、自身が周辺機器となり、また他の機器のホストになる携帯電話やモバイルデバイスに装備されてます。たとえば、ウィルコムの「HYBRID W-ZERO3」のコネクタがこのタイプです。USB On-The-Go 規格に準拠したホストケーブルをこのコネクタに差し込み、他の機器と接続することで、対応している機器であれば、たとえばキーボードのようなUSB周辺機器をケータイから使うことも可能です。

携帯電話・モバイルデバイスを志向して作られた規格

 「Micro-USB」という規格が作られた背景としては、USBが当初想定していたPCやその周辺機器だけでなく、携帯電話やモバイルデバイスとのデータ交換用に使われるようになってきた流れがあります。

 これらのデバイスの多くは、当初のUSBやMiniUSB規格が策定された当時からすると、非常に小さなサイズであることに加え、頻繁に“接続”と“切断”をする性質があることから、コネクタにはさらなる耐久性が必要と考えられました。

 そこで、スマートフォンなどを含めた携帯電話やモバイルデバイス向けとして、新たにこの規格が作られたのです。単なるデータ送受信用の規格ではなく、パソコンともやり取りするという使い方は当然ありますので、Micro-USBは従来のUSBとは、互換性を非常に重視した規格となっています。

 「Micro-USB」のサイズは、従来のMini-USBコネクタと比較して、外形寸法が半分となったものの、電気信号はUSB 2.0/3.0およびUSB On-The-Goと互換があります。たとえば、1つのケーブルで片方が「USB」のAコネクタ、もう一方が「Micro-USB」のBコネクタとなっていると、パソコンと携帯電話に装着してデータをやり取りできるのです。

 なおかつ「Micro-USB」以前の規格である「Mini-USB」の置き換えも想定し、コネクタ形状の小型化により、携帯機器をより小さく設計できるようにするため、コネクタ素材のステンレスを使用し、1万回以上の抜き差しに対応する耐久性と外部からの加重に耐える構造であることが定められています。

 また、置き換えという意味では「Micro-USB」は、これまでMini-USBをサポートしていなかったスマートフォンなどのコネクタでも利用されつつあります。

 2009年にGSM携帯電話の規格標準化・普及促進団体である「GSMアソシエーション(GSM Association)」が充電統一規格にMicro-USBを採用することを、また欧州委員会もNokia、Sony Ericsson、Apple、Motorola、Texas Instruments、Qualcomm、Research In Motion(RIM)、NEC、LG電子、Samsungの10社が携帯電話の充電器をMicro-USBにすることで合意した、と発表しています。今後、欧州を中心に販売される携帯電話から、充電コネクタ、また兼用のデータポートとしてMicro-USBを備える機種が大勢を占めることでしょう。

 なお、USB2.0の次の規格であるUSB3.0にもMicro-USBが用意されています。ただし、USB3.0 Micro-Bコネクタ、Micro-ABコネクタとも、USB2.0のそれとは若干形状が違っていて、USB 2.0のMicro-USBのコネクタの横にUSB3.0の独自部分を追加した構造となっています。ただUSB2.0から継続するコネクタは従来通りですので、2.0のケーブルをここに差し込むことが可能です。

USB3.0 Micro-USBは、USB2.0 Microとプラグ形状が違うが、互換性を持った拡張規格となっている。2.0 Micro-Bのプラグを3.0A/Bコネクタに差すことも可能だ。

 

(関口 聖)

2010/10/26 12:25