ケータイ用語の基礎知識
第811回:LTEカテゴリーM1 とは
2017年6月21日 11:56
さらにもう一つのLPWA向けLTE規格
LTEカテゴリーM1は、LTE通信のカテゴリーのひとつです。「LPWA(Low Power Wide Area)」というIoT向け通信のひとつでもあり、「LTE Cat-M1」と表記されることもあります。
LPWAは、過去の本連載「第792回:LPWA とは」でも解説していますが、少ない消費電力で、km単位の距離で通信できる無線通信技術の総称です。
もともとLTEの標準規格が定められた当時、3GPPの標準では「Release 8」において、機器向け通信として、最も速度の遅い規格「カテゴリー1」が定められていました。
さらに、従来のLTE通信と互換性のある20MHz帯域幅での運用や、上りと下りの通信を同時に行わない「半二重通信」などをサポート、待受の工夫で省電力化した「カテゴリー0」も「Release 12」で定められました。
一方、LPWAに含まれる規格には、「LoRaWAN」など、さらに省電力化や長距離通信化、そして無線通信関連の回路をよりシンプルにした規格が登場してきました。せっかく規格として策定した「LTEカテゴリー0/1」でIoT向けデバイスを作ろうとしても、性能面で物足りない状況になってきていました。
そこで、LTEをベースとしつつ、ながらもよりLPWAとして必要な「低消費電力、広いエリア、低コスト」ができる規格が「Release 13」では定義されました。そのひとつが「LTEカテゴリーM1」なのです。
ローパワー化、長距離通信化、そしてローコスト化を一層進める
「LTEカテゴリーM1は」、カテゴリー1をベースにLPWAへ適した形に、シンプルにした規格です。カテゴリー1とカテゴリー0では、20MHzのLTE帯域幅をそのまま利用することに代わりはなかったのですが、カテゴリーM1では1.4MHz幅まで減少させました。これにあわせて通信速度は上下最高1Mbps(カテゴリー1では上り5Mbps、下り10Mbps)になっています。
また低消費電力化のため、待受時間の間隔を大幅に延ばすということも行っています。これまでLTEの規格では電話が着信して呼び出す仕組みとして、数秒周期で呼び出しを待っていました。これを最大40分間隔といった程度まで周期を延ばすことで、その分、電力を節約するわけです。
このような間欠受信の仕組みは「連続しない待ち受け」を意味する英語“Discontinuous Reception”、略してDRXとも呼ばれます。LTE カテゴリーM1で最大40分まで延ばしたDRXは「拡張DRX」と呼ばれることもあるようです。
通信距離を延ばすために「カバレッジ拡張(Coverage Enhancement、CE)」という仕組みも導入されています。長距離通信で電波が弱い状況では、データを送っても一部受信できていないという状況が起こりえますが、それなら、壊れたデータを再び受信すればいいだろう、ということで何度か同じデータを送るというやり方です。
米国で来年実用化、日本でも実証実験が開始
LTE カテゴリーM1の実用化に向けて、国内外でさまざまな動きが出てきています。
たとえば米ベライゾンでは、全米でのLTE カテゴリーM1での商用利用を2017年3月から開始しています。機器としては、ルーター、モデム、センサーモジュールなどが用意され、顧客となる企業は自社製品にカテゴリーM1対応モデムなどをを組み込んで活用できるようになっています。
日本ではNTTドコモが2016年11月からLPWAの検証を開始しており、センサー用無線としてLoRaに対応し、公衆用の無線としてLTEカテゴリーM1も利用するIoTゲートウェイを利用し、検証を進めています。またKDDIもアルテアセミコンダクターとともに、テストを実施しています。