ケータイ用語の基礎知識
第777回:LTE-Advanced Pro とは
2016年10月18日 13:17
「LTE-Advanced Pro」とは、通信規格の標準化を進める業界団体「3GPP」が定めた名称で、現在、日本でも導入されている「LTE-Advanced」を拡張させた規格です。LTEとその発展形の標準規格を定めた「3GPP Release 13」以降で定義されるLTE-Advancedの拡張技術を示す名称になります。2017年から商用サービスが提供されると考えられています。
現在の次にあたる通信規格、つまり5G(第5世代)はまだ策定中で、2020年以降の商用化が見込まれています。「LTE-Advanced Pro」は5Gの一歩手前の規格で、そして4Gとしては最後の拡張規格ということになります。その立ち位置から、一部の通信機器メーカーなどではLTE Advanced Proを「4.5G」という呼び方をすることもあるようです。
主な特徴は「さらなる高速化」「利用用途の拡大」
「LTE-Advanced Pro」の特徴は、現在のLTE-Advancedの延長として、さらなるデータ通信速度の向上に向けた技術が複数導入されることなどが挙げられます。
通信機器を手がける企業のなかには、LTE-Advanced Proのことを、4Gと5Gの間に位置する「4.5G」とするところもあります。
5Gでは、これまで使用しなかった技術や電波帯域も取り込んで、速度向上だけでなく信頼性やセキュリティ、エネルギー効率など、幅広い進化を追求する一方、LTE-Advanced Proは、これまでのモバイル向け通信として進化してきた4G技術をベースにしてします。
たとえば、Release 13で標準化される技術としては、キャリアアグリゲーション(CA)の高度化が挙げられます。LTE-AdvancedのCAではLTEキャリアの同時接続数は最大5波です。それが、Release 13、つまりLTE-Advanced Proでは最大32波に拡張されます。これによって仕様上の最大通信速度は下り約25Gbps/上り9.6Gbpsとなります。
キャリアアグリゲーションの高度化では、端末~基地局への上り通信が混雑する問題を解消するため、「PUCCH on SCell」というような仕様も制定されています。これは、簡単に言うとCAの制御において、端末~基地局への通信に回路を設定することで、混雑を避けようというものです。たとえば、マクロセル内にスモールセルを多数配置する「ヘテロジニアスネットワーク」のなかで、広いエリアをカバーするマクロセルと、限られたエリアになるスモールセルのうちのひとつのどちらとも、上り通信を設定できます。こういった設定で、ネットワーク内での通信リソースを効率的に使うことができ、結果的にスループット(通信速度)の低下が避けられるようになるわけです。
さらにLTE-Advanced Proでは、LTE-Advancedの最新規格「Release 12」で標準化された「デュアルコネクティビティ」(Dual Connectivity : DC)という仕組みをさらに発展させます。「デュアルコネクティビティ」では、異なる基地局へ同時に接続するキャリアアグリゲーション技術が用意されています。LTE-Advanced Proでは、これをより柔軟に運用するための拡張や、上り通信速度を上げるための仕様の追加、3D-MIMO/Full Dimension(FD)-MIMOといったMIMO(複数のアンテナを使って高速化する仕組み)の立体化技術、無線免許がいらないアンライセンス周波数帯を使う「LAA(Licensed-Assisted Access using LTE)」といった仕様も追加し、無線リソースをこれまでよりもっと効率的に使うといった取り組みが含まれています。
また、「利用用途の拡大」という点では、たとえば、IoT/M2M向け通信規格の拡充として「LTE カテゴリM1」「LTE カテゴリ NB1(NB-IoT)」や端末間直接通信(D2D)や屋内での位置特定といった用途に使用できる仕様が追加されています。「LTE カテゴリM1」の端末は通信速度が上り・下りとも0.8Mbps、カテゴリ NB1は62kbpsという超低速通信ですが、いずれもLTEの通信帯域を利用することで2G/3Gよりも電波を有効活用できます。また、省エネできるパワーセービングモードもあり、IoT機器向けの仕組みになっています。
5G時代でも継続利用、継承される見込み
2020年以降の「5G」時代になっても、LTE-Advanced Proは5Gと併用されると見込まれています。5Gでは、従来の周波数帯に加えて、飛躍的なデータ通信速度の向上をめざすためにミリ波など新しい周波数帯(New Radio、NR)を使用することになっています。新しく活用する周波数帯は従来のモバイル向け周波数帯よりも遠くに届かず、移動しながら通信するような用途にはあまり向いていません。5G以前の通信方式を併用することで、より広いエリアをカバーしやすくなると考えられているのです。
また、5Gとは言っても、当然、スムーズな移行のためには、それまでの規格との互換性をできるだけ保ち続けることが望ましいでしょう。そこで、5G対応の端末は、LTE-Advanced Proと5Gで新たに導入される周波数帯(NR)の両方に繋げられるようにする必要があるでしょう。とはいえ、今のところ、同時接続と言っても、LTE-Advanced Proと5Gを単純にキャリアアグリゲーションのように使う、といったことになるのかなど、5G関連の仕様はまだまだ策定中です。いずれにしてもLTE-Advanced Proは、5Gへの懸け橋とになると考えられているのです。