IS01 法林 岳之編

IS01

 2010年のケータイ市場は、近年まれに見る動きの激しい1年だった。この記事が公開される年末商戦では、本誌記事や一般メディアの反響を見るまでもなく、スマートフォンが圧倒的に話題を集めているが、ここまでの活況ぶりは1年前にとても想像できなかったというのが本音だろう。もちろん、昨年末以前にも何機種ものスマートフォンが登場し、なかでもiPhone 3GSは、今年6月のiPhone 4の発売まで、市場をリードし続けたが、実は1年前の段階ではソニー・エリクソンのXperiaもグローバル向けに発表されたのみで、国内向けは2010年1月発表、4月発売という時系列になる。それが2010年冬春モデルでは各社からAndroid採用スマートフォンが発表され、その数も10機種を超えるほど、ラインアップが充実している。各社のトップからは、2011年はスマートフォンのモデル数が全モデル数の半数近くになるというコメントも飛び出しており、しばらくはスマートフォンに話題が集中することになりそうだ。

 そんな中、今年の端末を振り返り、個人的に印象に残ったものを挙げてみよう。まず、先陣を切るのは、やはり、ソニー・エリクソンの「Xperia SO-01B」だ。iPhoneの対抗軸という捉えられ方もしたが、ソニー・エリクソンらしいユーザーインターフェイスや日本のケータイに迫るハイスペックも注目できるポイントだった。同じくグローバル市場で成功したAndroid採用端末として、SAMUSUNG mobile製の「GALAXY S」も今年を代表する端末のひとつと言えるだろう。個人的にもXperiaと並んで、もっとも利用頻度の高かったスマートフォンだ。そして、これらのグローバル市場での強者を迎え撃つ日本のスマートフォンとして、現在も市場で人気を集めているauのシャープ製端末「IS03」も外せない存在だ。auのユーザーにとっては、待望の1台目として使えるスマートフォンとして登場したが、Skype auという新しい楽しみが提供されるなど、サービス面の充実ぶりも他製品を一歩リードした格好だ。

 一方、フィーチャーフォンについては、非常に完成度の高いモデルが多かった。なかでもNTTドコモの「N-02C」「SH-01C」「P-03C」、ソフトバンクの「945SH」などは全体的なバランスもよく、非常にソツなくまとまっている印象だ。ただ、いずれもスマートフォンのインパクトをはじき返すほどの強い個性を持っているわけではなく、どちらかと言えば、ハイスペック指向ながらもコンサバティブなユーザーが選ぶモデルという印象だ。これに対し、強い個性を発揮したのが世界初のセパレート構造を実現した「F-04B」、10周年を迎えた「G'zOne TYPE-X」、名機モバイルギアを彷彿させた「N-08B」、デザイン面で強いインパクトを残したiidaの「LIGHTPOOL」だ。いずれの製品も成熟した日本のケータイだからこそ、できることを見せてくれたという意味でも今年を代表する端末と言えるだろう。

 そして、最終的に筆者が「俺のケータイ of The Year」として、選んだのがauのシャープ製端末「スマートブック IS01」だ。ここまでの話からもわかるように、今年は「スマートフォン元年」と呼ぶに相応しい一年だったが、その一方で今まで我々が10年近く使い続けてきた「ケータイ」が何だったのかをもう一度、よく考えるべきタイミングでもあった。

 確かに、スマートフォンには今までのケータイにはない魅力があるが、その一方で今までのケータイで当たり前のように使ってきたものがスマートフォンにはなく、ユーザーもなかなか手を出せない状況にある。各社の冬春モデルを見てもわかるように、こうしたスマートフォン移行の足かせも徐々に解消されつつあり、今後はスマートフォンとケータイがよりクロスオーバーしていくことが予想されるが、ケータイとスマートフォンという2つの文化がクロスしたポイントに登場した端末がまさに「スマートブック IS01」だったのではないだろうか。

 Androidというオープンなプラットフォームを採用しながら、ワンセグや赤外線通信、Cメールや「~@ezweb.ne.jp」のメール、au oneナビウォークやau one助手席ナビをはじめとしたキャリアのサービスをしっかりとサポートすることにより、ケータイの良さとスマートフォンの可能性を融合させようとしたチャレンジは、もっと高く評価されるべきだろう。メジャーアップデート断念は残念だったが、それでも「Skype au」や「au oneニュースEX」などのauの新しいスマートフォン向けサービスにも対応するなど、しっかりとユーザーに楽しみを提供してくれたことも喜ばしいことだ。日本のユーザーのことをきちんと考えたエポックメイクなauのシャープ製端末「スマートブック IS01」に、2010年の「俺のケータイ of The Year」を送りたい。

 


2010/12/27/ 13:05