レビュー

「Google Pixel Buds」はリアルタイム翻訳と「OK Google」が魅力の完全ワイヤレスイヤフォン

Pixel Buds

 2020年8月20日、グーグルは完全ワイヤレスイヤフォン「Google Pixel Buds」の販売を開始した。

 米国ではケーブル型の同名製品に続く第2世代モデルとしてすでに発売されているが、国内では第1世代が販売されていないため、完全ワイヤレス型の第2世代が国内初のPixel Budsになる。

 左右のイヤフォンが独立したケーブルレスの完全ワイヤレスモデルで、音楽再生や音声通話と言った基本機能に加えて、リアルタイム翻訳やGoogleアシスタントといったグーグル独自の機能が特徴。

 本体カラーはClearly White、Almost Black、Quite Mintの3色で、Google Storeのほかauやソフトバンク、家電量販店で購入できる。価格は2万800円(税込)。

Quite Mint

 なお、3色のうちQuite Mintは数が少ないのか圧倒的な人気なのかはわからないが、Google Storeや家電量販店のオンラインストアは発売日である8月20日の時点で軒並み在庫切れの状態だった。筆者はauの店舗で入手できたほか、auのオンラインストアでは8月26日現在まだ在庫があるようだ。

通訳を介して話しているようなリアルタイム翻訳はまさに「ほんやくコンニャク」

 Pixel Budsの看板機能とも言えるリアルタイム翻訳機能は、事前にAndroidアプリ「Google翻訳」をインストールしておく必要がある。また、この機能が利用できるのはAndroid 5.0以上のスマートフォンのみで、iOS端末では利用できない。

Google翻訳アプリ

 Google翻訳アプリをインストールしたら、Pixel Budsを長押し、または「OK Google」と発声してGoogleアシスタントを起動し、続けて「通訳して」と発声すると、スマートフォン側でGoogle翻訳アプリの「会話」機能が起動する。

「OK Google 通訳して」でGoogle翻訳アプリの会話機能が起動する

 なお、グーグルのヘルプでは「翻訳して」と発声するよう説明があるが、「翻訳して」と発声するとアプリをインストールしているにも関わらずアプリのインストールを求められてしまう。今後対応の可能性もあるが現時点では「通訳して」がお勧めだ。

 音声ではなく手動操作でGoogle翻訳を起動してもリアルタイム翻訳は利用可能。また、「○○語で通訳して」と発声すると、翻訳する言語を指定できる。「通訳して」の場合は前回使った設定のまま起動するため、起動してから思った言語設定ではなかった、ということがないよう「○○語で通訳して」と言語を指定しておくのがいい。

 以下、日本人の筆者が英語圏の外国人とこの機能で会話する、という設定で一連の流れを説明しよう。

 相手とのやり取りはPixel Budsを装着している側から始めるほうがわかりやすい。Pixel Budsを長押している間に翻訳して欲しい日本語を発声すると、アプリには日本語と英語が表示され、英語の音声が相手に聞こえるようスマートフォンから再生される。

Pixel Budsを長押ししながら翻訳したいフレーズを発声

 翻訳を聞いた相手は、スマートフォンのマイクを使って返事することになる。翻訳の際にはアプリのマイクボタンを都度押す必要があるが、こちらの翻訳が終わると相手の言語のボタンに「Tap or hold」と表示されるので、相手が何をすればいいのかがわかりやすい。

画面には日本語と英語が表示され、英語の音声がスマートフォンから再生。画面右下には「Tap or hold」というガイドが表示される

 相手のフレーズが終わると、英語と日本語がアプリに表示され、日本語の音声はPixel Budsで再生される。続けて会話したい場合はこの流れを繰り返せばいい。

相手がスマートフォンのマイクで英語を話すと日本語の翻訳がPixel Budsに流れ、アプリには日本語と英語が表示される

 Google翻訳自体はAndroidとiOS向けにアプリが提供されているため、ワイヤレスヘッドフォンとスマートフォンがあれば一見してPixel Budsに近い使い方は可能だ。しかし、その場合はすべての音がヘッドフォンから流れてしまうため、相手は画面の翻訳を見ることができても音声を聞くことができない。

 また、Pixel Budsが無い場合は、自分と相手が同じスマートフォンで発声や操作を行うため、スマートフォンを都度渡したりというやりとりがやや煩雑だ。異言語の相手とやりとりするという緊張が生まれるシーンにおいて、できるだけ余計な手間は省きたい。

 Pixel Budsなら、自分はPixel Budsのみ、相手は自分のスマートフォン、と端末を分担することで、まるで通訳を介しているかのような会話が実現できる。まだにドラえもんの「ほんやくコンニャク」のような体験だ。

 なお、Google翻訳の会話機能で認識できるのは現時点では短いフレーズのみで、プレゼンテーションのような長文は認識できない。長い会話の同時通訳は今後のアップデートで対応予定だという。

「OK Google」でGoogle アシスタントを起動。Google Homeを身につける感覚

 Google アシスタント機能もPixel Budsの特徴の1つ。Google アシスタント機能を搭載しているヘッドフォンやイヤフォンはほかにもあるが、Pixel BudsはGoogle Homeのように「OK Google」という音声フレーズで起動できる。

Google アシスタント機能

 他社の対応製品と同様、Pixel Budsの側面長押しでもGoogle アシスタントは起動できるのだが、荷物を持っている時や料理している時など手が塞がっている時でも音声で簡単に起動できるのはとても便利。使い勝手としてはまるでGoogle Homeを持ち歩いているような感覚だ。

 筆者はこれまでWear OS搭載のスマートウォッチでGoogle アシスタントを活用していたのだが、「OK Google」での認識は腕時計を口に近づける必要があるほか、認識精度もさほど高くなく、思うように起動できないことも多い。

 そのためディスプレイにGoogle アシスタントを設定しておき、必要な時にはタップ操作で呼び出すようにしていたのだが、腕時計を装着した手とタップした手の両方を使うため、荷物を持っている時などは操作が煩雑になり、それなら画面の大きいスマートフォンのほうが操作しやすい、という状況だった。

 その点、Pixel Budsは認識の精度も高く、完全にハンズフリーでGoogle アシスタントを呼び出せる。Google アシスタントのヘビーユーザーとしては非常に嬉しい機能だ。

 なお、自宅などで使う場合は「OK Google」だと自宅のGoogle Homeも反応してしまうのだが、その後の認識はPixel Budsが優先されるようで、フレーズを続けるとほぼ必ずPixel Budsが反応してくれる。フレーズ認識時の「ピコン」という音さえ気にならなければ、Google Homeが設置されている環境でも併用できるだろう。

 筆者が活用している機能はリマインダー。仕事や家事の間に「後でやろう」と思ったことを忘れないよう「リマインダー メールに返信 1時間後」などのフレーズでリマインダーへ登録し、Androidの通知画面で確認するという流れだ。

「OK Google」に続けて「リマインダー 【内容】 【時間】」と発声してハンズフリーでリマインダーが設定できる

 Pixel BudsからGoogle アシスタントに連携した家電のコントロールも可能。YouTubeの動画をテレビで再生する、照明を点ける、エアコンのオンオフなども操作できるので、Google Homeを設置していない部屋で家電を操作するということも可能だ。

音楽を聴く操作はほぼ本体で可能。音質も音楽を楽しむのに十分

 完全ワイヤレスイヤフォンとしての機能は、再生や一時停止、トラック操作に加えて音量もPixel Budsのタッチ/スワイプ操作で可能。

 完全ワイヤレスイヤフォンの中には音量がコントロールできないものも多く、音楽を聴くのに必要なほぼすべての操作がPixel Budsで完結するのが嬉しい。

操作はPixel Budsのアプリから確認できる

 装着検知も備えており、耳から外すと自動的に音楽が止まり、装着すると自動的に再開するのも便利だ。

耳から外すと自動的に音楽が止まる装着検知

 前述のGoogle アシスタントは長押しで呼び出せるのだが、長押しが続くと時刻や新着の読み上げが発動するため、音声操作のタイミングが慣れるまでは難しい。実際には音声認識の開始を示す通知音が鳴る前から音声認識がスタートしているので、長押ししたらすぐにフレーズを発声すると認識されやすい。

 音質面では12mmのダイナミックスピーカードライバを搭載、優れた音質を実現したという一方で、ノイズキャンセリングやaptX、LDACといった機能は搭載されていない。筆者はあまり音質にこだわらないタイプではあることは断った上で、音楽を楽しむには十分な音質と感じた。ワイヤレスでも高音質を追求したい、というこだわりがなければ十分に満足するだろう。

 発売後のアップデートでは低音を強調するバスブースト機能など音質面の強化も図られている。機能をオンにして聞き比べてみたところ、ドラムの音などは確かに強調されて奥行きを感じるものの、あまり音にこだわらない筆者としては「言われて聞き比べれば確かにわかる」というのが正直な感想だ。

アップデートでバスブースト機能が追加

 独自の機能として、周囲の状況に応じて音量を自動でコントロールしてくれるアダプティブサウンドを搭載。この機能をオンにして実際に室内や室外へとの移動をしてみたが、正直なところあまり実感できなかった。ただし、実感できないほどアダプティブコントロールがうまく働いているのかもしれない。音量はスワイプで簡単にコントロールできることもあり、音量周りはほぼ不満を感じなかった。

 マイクの音質も良好だ。ビデオ会議サービスのZoomを利用してテストしたが、Pixel Budsからの発声はとてもクリアで聞きやすい声だった。ビデオ会議では音質の低いマイクを使うと相手が会話を聞きにくく会議が円滑に進まないこともあるが、Pixel Budsならその心配はなさそうだ。

 Bluetoothの接続性も十分安定している。スマートフォンをお尻のポケットに入れていると、人通りの多い場所で時折音が途切れることがあったが、同じ場所でもスマートフォンとPixel Budsが見通せる位置にあれば途切れることはなかった。

バッテリーは音楽再生で約5時間。ケース併用で「24時間」利用も可能

 本体サイズは20.5×18.2×19.5mm(W×D×H)、重量は5.3gで、サイズ感としては一般的な完全ワイヤレスイヤフォンと遜色ない。IPX4の防滴仕様も備えており、急な雨なども一時的にしのぐことができる。

 ケースは63×47×25mmで、小ぶりの卵を平たくしたようなサイズ感。重量はイヤフォンを含み66.7gと若干重く、手に持つと見た目よりもずっしりとした重みを感じる。

本体は一般的な完全ワイヤレスイヤフォンと同程度のサイズ
本体ケース
AppleのAirPodsケースとサイズ比較

 装着部はカナル型で、イヤーピースがサイズごと3種類用意されている。筆者は密閉性が高く外音が聞き取りにくくなるカナル型は苦手なのだが、Pixel Budsの装着感はさほど悪くなく、着けていてもカナル独特の閉じ込められる感じは少なかった。

装着部はカナル型
イヤーピースは3種類

 バッテリーは1回の充電で音楽再生が最長5時間、音声通話が最大2.5時間を公称し、ケースへの充電はUSB Type-C、またはQiワイヤレス充電に対応。Pixel Budsを使ってZoomのビデオ会議に参加してみたが、2時間が経過したところでバッテリー残量は30%近くまで減っており、ほぼほぼ公称通り。完全ワイヤレスイヤフォンの駆動時間としても標準的な数値だ。

本体を収容すると自動的に充電

 ケースに入れると10分で2時間分の音楽再生が可能で、Googleはケースを合わせると24時間の音楽再生が可能としている。しかし、実際には充電の待ち時間もあるため、これをもって24時間というのは厳しい。また、音楽再生であればともかくビデオ会議を中断して充電するのも難しいため、1日中つけっぱなしというよりも移動中や会議など要所要所で利用するスタイルがよさそうだ。

 本体は最大6台までペアリングが可能なほか、Android 6.0以上のスマートフォンであれば、Pixel Budsの蓋を開けてスマートフォンに近づけるだけでペアリング設定を開始できるGoogle Fast Pair」が利用できる。画面に表示された通知をタップして対応アプリ「Google Pixel Buds」をインストール、チュートリアルを見ながら設定を進めていく、という流れだ。

ケースの蓋を開いてスマートフォンに近づけると自動で認識
タップすると専用アプリのインストールを促される
アプリをインストールすると設定を開始

 同機能に非対応の場合は蓋を開けた状態で本体背面のボタンを長押ししてペアリング状態にすることで、スマートフォン側からBluetoothのペアリング設定が可能だ。

本体背面にペアリング用のボタン

 複数台をペアリングした場合、切り替えはPixel BudsのアプリではなくBluetoothの設定画面から接続することで切り替えられる。わざわざペアリング設定をリセットせずに切り替えられるのは楽だが、アップルのAirPodsのようにワンタッチで切り替えられる手軽さに比べるとそうさがやや煩雑だ。今後はPixel Budsのアプリから切り替えられるようになることを期待したい。

十分な音質と充実の機能。リアルタイム翻訳やGoogleアシスタントが魅力

 AirPodsの登場以降、完全ワイヤレスイヤフォン市場は急速に広がっており、最近では1万円以下の価格帯でも完全ワイヤレスイヤフォンが入手できる。

 その中で2万円の価格帯は比較的高級路線であり、AirPodsのQi対応モデル(2万2800円、アップルストア価格)、ソニーの「WF-1000XM3」(2万5880円、ソニーストア価格)などが比較対象となるだろう。

 価格だけで比較すると税込でほぼ2万円は上記製品と比べて若干ながら安価な価格設定だ。また、ノイズキャンセリングやaptXには対応していないものの音質は十分で、本体操作も充実しているため使いやすい。

 今回は細かく触れていないが、アップデートにより2人で片方ずつ使う場合にそれぞれ音量設定できる共有検出、赤ちゃんの泣き声や緊急サイレンなどが聞こえた場合に音量を下げて認識しやすくするアテンションアラート、といった機能も追加で提供されるなど機能は充実している。

 何より対応スマートフォンであれば使えるリアルタイム翻訳とGoogleアシスタントは他の製品にはない魅力だ。リアルタイム翻訳はまだ実際に外国人との会話で使うことはできていないものの、いざというときに音声だけで起動からコミュニケーションまで完結できる流れは、外国人との会話の心理的障壁を下げてくれる存在だろう。また、今後対応予定という長文のリアルタイム翻訳も期待大だ。

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