レビュー

キーボード一体なクラムシェルスマホ「Cosmo Communicator with HDMI」レビュー

ビデオ会議やテレワークも便利な一台の魅力に迫る

 リンクスインターナショナルが販売する「Cosmo Communicator with HDMI」はイギリスのPlanet Computerが開発したスマートフォンだ。本商品は2019年12月に発売になった「Cosmo Communicator」に、HDMIアダプタを同梱したモデルとなる。

 基本性能は変わっていないが、テレワークやビデオ会議が当たり前の時代となった今、ノートパソコンのようなスタイルで利用できるクラムシェル型スマートフォンの利便性は高いとあらためて感じられる。

Cosmo Communicator with HDMI。HDMIアダプタが付属する

1. 小型ボディーに物理キーボードを搭載、閉じたままでも使える

 Cosmo Communicator with HDMI(以下「Cosmo Communicator」)は本体を横から開くクラムシェル型のスマートフォンである。

 閉じた状態では普通のスマートフォンサイズ、本体を横から開くと超小型のノートパソコンスタイルと2つの形状で使うことができる。

 メインディスプレイは6インチ2160x1080ピクセル、天板部分のサブディスプレイは1.91インチ570x240ピクセル。

 なおチップセットはメディアテックのHelio P70を搭載、メモリは6GB、ストレージは128GB。SIMスロットは後述するがデュアルで、SIM+SIMまたはSIM+マイクロSDのどちらかで利用できる。

Cosmo Communicator。閉じた状態ではサブディスプレイのみが利用できる
天板を開くと6インチディスプレイとキーボードが現れる
左側面にはUSB Type-C端子と3.5ミリヘッドフォンジャック
右側面にあるのは電源ボタンとType-C端子。天板を開くとヒンジ裏が立ち上がりキーボードに傾斜が付く

 Planet Computersの初代のスマートフォン「Gemini PDA」は着信がある場合は天板を開く必要があった。Cosmo Communicatorでは天板にサブディスプレイを搭載したことで、閉じたまま通話の発着信やカメラ操作などができるようになった。

 サブディスプレイはタッチ操作にも対応。時計や通知を表示する待ち受け画面と、閉じたまま操作できるアプリのアイコン画面を切り替えることができる。

 サブディスプレイ部分に搭載された2400万画素カメラも天板を開くことなく撮影できる。サブディスプレイをプレビュー画面として自撮りができるわけだ。

 また指紋認証センサーは左右がボタンとなっており、通話時に「着信」「切断」などの操作もできる。閉じた状態でも意外とできる操作が多い。

サブディスプレイには時計や通知を表示可能
閉じたまま利用できるアプリのメニュー
電話の発着信も開くことなく操作できる
カメラも操作可能。閉じた状態でも自撮りできる

2. 小型ながらも押しやすいキーボード

 天板を開くとCosmo Communicatorの最大の特徴である物理キーボードが現れる。

 スマートフォンサイズのデバイスのキーボードとしては大きいサイズで、キーピッチは約14mm。上下左右が斜めにカットされており表面もわずかにくぼんでいる。長文を入力してみたがミスタイプのしにくいキー形状だ。

 押したときの左右のぐらつきも少なく、指先での押し具合も心地よい。机の上に置いて左右の人差し指と中指を使ってタッチタイプしたり、本体を両手で保持して親指で入力することもできる。

キーピッチは14mmあり指先でタッチタイプできる
本体を持って親指での入力も可能だ

 キーボードにはPlanet Computersのロゴアイコン(土星の絵)のキーがある。これは「AppBar」キーで、これを押すとディスプレイの最下段に10個のアプリが表示される。ここによく使うアプリを登録しておけば、アプリの起動や切り替えも素早く行うことができるわけだ。10個以上のアプリを登録した場合は、AppBarを左右にスワイプすれば隠れているアイコンが表示される。

 キーボードはバックライトを搭載しており暗いところでの文字入力も問題なく行える。

 日本発売品ということからキー配列は日本語でかな入力も可能だ。筆者は使い慣れたGoogle日本語入力を入れて使っている。キーの数が少ないため一部の文字はShiftやFnキーとのコンビネーションになるが、すぐに慣れるだろう。

AppBarキーを押すと、ディスプレイ下に10個のアプリアイコンが表示される
バックライトを搭載。一部の文字はコンビネーションで入力する

 Cosmo Communicatorは快適な文字入力ができる物理キーボーを搭載しているが、ソフトキーボードの利用は一般的なスマートフォンほど快適ではない。フリック入力はソフトキーボードが画面横一杯に表示されてしまうため片手入力は無理だろう。

 Cosmo Communicatorは普段からパソコンでQWERTY配列のキーボードも利用しており、超小型のパソコンとしても使いたいという人に向いた製品なのである。文字入力は基本的に両手を使うことになるため、長文を書く用途などビジネスシーンに適しているだろう。

ソフト(仮想)キーボードを表示することもできる
フリック入力は現実的ではない

3. UMPCより小型、ビジネス用途に最適

 6インチの横向きのディスプレイにキーボードを備えたCosmo CommunicatorはAndroid OSを搭載したスマートフォンだが、外出先で報告書や原稿を書いたりビデオ会議に参加するなど、超小型のノートパソコン、いわゆるUMPCと同じような使い方ができる。

 Cosmo Communicatorは閉じれば171x79.3x13.3mmというスマートフォンと変わらないサイズのため持ち運びが苦にならない。本体を開いてもUMPCよりフットプリントは小さい。重量も326gとスマートフォンとしては重いものの、500gを超えるモデルが多いUMPCよりも軽量だ。

 またAndroid 9.0を搭載するため、普段スマートフォンで使っているアプリもそのまま使える。メインカメラ性能も高いため資料や記録用の写真撮影用途にも十分利用できるだろう。LTEモデムを踏査しているため単体でも通信が可能だ。

 なおeSIMにも対応しており、SIMスロットはマイクロSDと排他仕様のデュアル仕上げだ。「物理SIM+物理SIM」「物理SIM+マイクロSD+eSIM」という組み合わせで利用できる。

 一方UMPCはディスプレイやキーボードの物理的サイズが大きく、キータイプや画面の視野性により優れている。複数のUSB端子を備えるなど拡張性も高い。OSにWindows 10を採用しているためWindowsアプリを利用できる。Windows必須で小さいマシンを求めている人はUMPCが向いている。

Cosmo Communicator(左)とUMPCのOneMix2S(右)を比較
SIMスロットは天板の左側、eSIMにも対応。単体で通信可能だ

 Cosmo CommunicatorプリインストールアプリはAndroid OSの標準アプリと、Planet Computersのオリジナルアプリが提供されている。いくつかのオリジナルアプリはビジネス向けで使い勝手も良いと感じられた。

 「Agenda」は予定表アプリで、Googleカレンダーと同期して手帳のような見やすさで予定を表示できる。

 また「Notes」はデータベーススタイルのノートアプリで、タイトルごとにメモを切り替えて利用できる。

 これらのアプリは1990年代後半に販売されていたPDA、PSION(サイオン)に搭載されていたものをAndroid用アプリとしてよみがえらせたもの。Planet ComputersはそのPSIONの関係者が立ち上げた会社であり、Gemini PDAやCosmo Communicatorの横開きクラムシェルスタイルもPSIONのPDAのスタイルを引き継いでいるのだ。

カレンダー表示が見やすいAgenda
左右のコラムを使ってメモを整理できるNote
各種設定のアプリも搭載。AppBarは登録アプリを自由にカスタマイズできる
独自のメールクライアント「Airmail」も搭載

 筆者はGemini PDA時代からこのクラムシェルスタイルのスマートフォンを使っており、原稿書きに重宝していた。Cosmo Communicatorでもキーボードを使う時間が最も多い。Googleドキュメントを使い自宅などではノートパソコンを、移動中はポケットからCosmo Communicatorを取り出し原稿を書いている。

 一般的なスマートフォンでソフトウェアキーボードを使うと、原稿の表示エリアが狭くなるため文章全体を見返しにくい。Cosmo Communicatorなら6インチディスプレイの全画面を使って文字が書けるため原稿も捗る。

 表計算アプリも同様に入力した数字全体を見渡せるため数字の入力がしやすいと感じる。

この原稿もGoogleドキュメントで書いている
Excelを起動、全画面を見ながらキーボードから数字を入力できる

 もちろん仕事以外にもCosmo Communicatorを使っている。

 YouTubeを見たりSNSをするときも、ディスプレイが見やすい角度になるので食事中のながら視聴などにも向いている。パソコンで原稿を打ちながらCosmo Communicatorで動画(特に音楽ビデオ)を流しっぱなしにする、というのが筆者のお気に入りの仕事スタイルだ。

YouTubeを視聴するときもスタンドいらず、ちょうどいい角度で見ることができる
SNSは2つのアプリを開いていてもキーボードからの文字入力がしやすい

4. ビデオ会議に便利なクラムシェルスタイル

 Cosmo Communicatorが便利と感じるのはビデオ会議を行うときだ。

 以前はビデオ会議など年に数回程度だったが、今や多い時には毎日のようにビデオ会議やオンラインカンファレンスに参加している。

 一般的なスマートフォンを使うときはスタンドが必要だが、見つからないときは身の回りにある適当なもので台替わりにしていた。

 Cosmo Communicatorはディスプレイの左上に500万画素カメラが内蔵されており、開けば自分の顔を映しながらビデオ会議に参加できる。なおディスプレイの開く角度はやや浅いので、背筋を伸ばしてCosmo Communicatorを覗き込むようにするとちょうどいい感じで自分の顔を映せるようだ。

 ビデオ会議はノートパソコンでも参加できるが、内蔵カメラは画質が低いためこちらで資料などを映して見せるときは相手が見にくいときがある。

 また時差のある会議の時、早朝に寝坊してしまい慌ててノートパソコンをスリープから復帰させアプリを起動しカメラやマイクをセットするよりも、Cosmo Communicatorを開いてアプリを立ち上げたほうが早い。これは筆者の実際の体験だ。

開けばそのままビデオ会議に参加できるわけだ
2画面分割して資料を見ながら話す、なんてこともできる

 そして付属のHDMIアダプタを使えば、パソコンモニターや大画面TVにCosmo Communicatorのディスプレイ表示をすぐに映し出せる。

 Cosmo Communicatorは専用のHDMI to Type-Cアダプタが必要なので、今回発売されたケーブル付属モデルは買ってすぐに大きいモニターを利用できるのだ。

 大きいモニターをを使えばこちらが複数人でビデオ会議に参加するときに相手との会話もしやすい。あるいはオンラインカンファレンスならプレゼンテーションのより細かい部分を見ることもできる。

 最近は自主的に昼間ホテルに籠って仕事をする人も多いが、ホテルにあるテレビはノートパソコンなどを接続できるものも多いので、それを活用できる。

ビデオ会議も大きいディスプレイで参加できる
サンプルを見せてもらうときなど、大画面なら細かいディテールも見やすい

 テレワークの普及がこれから進むと、ノートパソコンを持ち運びどこでも仕事するワークスタイルが定着していくだろう。

 Cosmo Communicatorはノートパソコンよりさらに小さいため持ち運びもしやすく、付属のHDMIアダプタを使い大きいモニターを利用することもできる。普段使いのスマートフォンとは別に、テレワーク用スマートフォンとして2台持ちするのもよさそうだ。

 仕事に使えるモバイルデバイスとして、Cosmo Communicatorは今また注目すべきスマートフォンだろう。

テレワーク時代のビジネススマートフォンとして最適な1台と感じた