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NTT、2020年に向け「おもてなし」「スポーツ観戦」など研究開発を披露
NTT R&Dフォーラム 2015でデモを展示
(2015/2/18 16:18)
NTTは、研究開発の成果やコンセプトを披露する「NTT R&Dフォーラム 2015」を2月19日、20日に開催する。会場はNTT武蔵野研究開発センタで、18日には報道陣向けのプレスツアーが開催された。本稿では新しく発表された研究の中から、モバイル関連の情報をお伝えする。
2020年は東京オリンピックが開催されることもあり、研究開発の分野でも、2020年をひとつの目標として掲げられている場合は多い。NTTの担当者によれば、今回発表されているような研究開発自体は2020年だけを目標にしているわけではなく、2050年といった、さらに先も視野に入れながら開発しているという。一方で、こうした継続した取り組みの中から、いくつかを2020年に向けて加速させているということも、意識して行っているとのことだった。
今回の展示では「おもてなし」「スポーツ観戦」「スポーツ上達支援」という3つのテーマが掲げられており、これらを新しいレベルで実現するNTTの研究所の技術が披露されている。
同社はまた、発表されたり展示されたりしたものは、今後さまざまなパートナーと一緒に実現を目指していくことになるとしており、パートナーを見つけるという意味でも、動態展示(デモ展示)にこだわったとした。
訪日外国人向けの「おもてなし」の技術
スマートフォンやタブレット、メガネ型のデバイスなどを想定して開発されているのが観光ナビゲーションの分野で、ここではNTTの研究所が開発した「アングルフリー物体検索技術」が利用されている。
「アングルフリー物体検索技術」は、従来は大量の写真の撮影が必要だった物体の認識技術を、数枚の撮影で済むようにしたもの。高精度な認識処理をクラウド上のサーバーで行うほか、参照するデータベースも10分の1の量で済むとする。店舗の看板やその周囲など、固定されたものを優先して認識し、日によって変わるノボリやポップに影響されないようになっているという。
利用イメージは、スマートフォンやタブレットのカメラで目の前の建物を写すと、さまざまな情報や関連情報が表示されるというもの。ユーザーの国籍や他の利用者の行動履歴をあわせたパーソナライズも可能になっている。
同様の利用イメージで、駅の乗り換えや混雑・事故時の突発的な案内表示などにも対応するという、リアルタイム多言語翻訳技術とユーザ状況推定技術を組み合わせた移動支援サービスも展示されている。
選手の情報を随時確認できる「スポーツ観戦」関連の技術
マラソン観戦をタブレットで拡張
スマートフォンやタブレットを想定したスポーツ観戦の技術開発では、手元のデバイスでスポーツ観戦を拡張するような取り組みが行われている。
例として挙げられていたのは、沿道でのマラソン観戦。デバイスには、(すでに実用化済みの技術で)選手が走っている位置を表示できるほか、ほかのユーザーからアップロードされた沿道からの写真や映像を、すぐに確認でき、目の前を通り過ぎる前に、選手の走っている状態を見ることが可能。応援する選手だけに絞って表示することもでき、選手個人の成績といった情報も確認できる。
技術としては、ブログやSNSなどにアップロードされた画像や映像を自動的に収集するCGMオートザッピング機能が利用されているほか、選手ごとに映像を管理する技術も用いられている。
自宅からフィールド内の視点を体験
スポーツ観戦などで臨場感を高める取り組みとして開発されているのは「全天球映像音響インタラクティブ視聴技術」で、これは全方位カメラとマイクのシステムを利用して競技フィールド内で映像を撮影するというもの。自宅などでヘッドマウントディスプレイを利用するユーザーが、あたかもフィールド内にいるような臨場感を味わえ、ダンボール製でスマートフォンと組み合わせるヘッドマウントディスプレイのキットでも手軽に体験できる様子が紹介されていた。
映像については、注視している方向以外を低解像度にして、必要な帯域を節約できる技術も投入されている。また、音声をヘッドホンで聞くと、首を向けた方向に合わせて音響も追従して変化する仕組みも取り入れられている。
競技や空間そのものをリアルタイムに再現する配信技術
モバイル分野とは直接関係はないものの、先端技術を結集したデモになっていたのが、パブリックビューイングなどでの利用を想定した「イマーシブテレプレゼンス技術 Kirari!」だ。これは、映像や現場の音響の再現、それらの同期技術、4K/8Kのプロジェクションマッピングなど、さまざまな先端技術を統合し、3Dで再現することで、競技そのもの、空間そのものを高臨場感で配信・再現するという技術。
球技や格闘技などでも、比較的狭い面積で行われる競技には特に向いている印象で、デモの中では、卓球のシングルスの模様を紹介していた。デモ会場のステージには本物の卓球台が置かれているものの、そのほかは舞台装置のみ。選手は、被写体として選手のみが切りだされ、3Dで投射されており、あたかもステージ上で試合をしているかのように再現される。
音声についても、スタジアム、屋内施設など、競技会場の空間が音響技術で再現される。会場での声援や歓声といった盛り上がりは、遠隔地と開催地の双方向でやり取りすることもできるという。