カスペルスキー、Android向けセキュリティアプリを発表
カスペルスキーは、Android向けセキュリティ製品「カスペルスキーモバイルセキュリティ9」を発表、同社Webサイトでの提供を開始した。1カ月無料の体験版として提供されるが、当面、有料化の予定はなく、試用期間が延長される見込み。
同社では14日、都内で記者会見を開催した。本社CEOのユージン・カスペルスキー氏と日本法人代表取締役会長の加賀山 進氏からは同社の戦略が、代表取締役社長の川合 林太郎氏からは新製品の紹介が行われた。
■カスペルスキーモバイルセキュリティ9
製品概要 |
Android向けセキュリティアプリとなる「カスペルスキーモバイルセキュリティ9」は、ウイルスやマルウェアからスマートフォンを保護し、盗難対策として遠隔ロックなどが可能となっている。海外ではこれまでにも同ブランドによるSymbianやWindows Mobile向けセキュリティ製品が提供されており、今回はAndroid専用ながら、バージョン番号を引き継いだ名称となった。Android 1.6~2.2対応で、2.3以降は順次対応となる。
起動時にはアクティベーションコードを入力することもできるが、現状ではアクティベーションコードは配布されておらず、試用版として利用することになる。
主な機能は「アンチウイルス」「プライバシー保護」「盗難対策」「着信拒否」となる。アンチウイルスは、Androidを標的にしたウイルス、マルウェアを検知して駆除できるというもの。アプリインストール時、あるいはインストール済みのアプリに対して内蔵メモリと外部メモリ(microSDカード)に対してスキャンを行う。手動でのスキャン実行やスケジュールを決めて実行することもできる。アプリ本体は1.3MB、データベースは180KBとのことで、端末のパフォーマンスに影響せず、悪意あるアプリから保護できるとしている。
「プライバシー保護」については、連絡先、SMSの履歴、発着信履歴、SMSを保護できる。また盗難対策として、SMSを送信することで、遠隔操作でロックしたりデータを消去したりできるほか、端末のGPSを使った現在地通知、異なるSIMカードを装着した場合に通知する機能が用意される。なお、アプリそのものが削除されないよう、インストール時にユーザーが「モバイルセキュリティ9」暗証番号を設定しておき、電源ON時に端末がロックされる仕組みとなっており、盗難・紛失時にアプリが削除されないようになっている。
アンチウイルス | プライバシー保護 |
盗難対策 | 着信拒否 |
川合氏 |
スクリーンショット |
「着信拒否」は、着信を拒否する“ブラックリスト”と、着信を受け入れる“ホワイトリスト”を組み合わせて利用する機能。初めての連絡先からの着信は、ポップアップが表示され、ブラックリスト/ホワイトリストのどちらかに追加する、あるいはどちらにも登録しないという選択ができる。ブラックリストだけ、あるいはホワイトリストだけを運用するモードのほか、両方を組み合わせたハイブリッドモードも用意される。
製品の概要を説明した川合氏は「Androidのセキュリティはカスペルスキーに任せろ、とアピールしていく。まずは無料で提供し、その後の提供形態はあらためて検討するが、まずは利用し続けていただきたい」と説明する。これはカスペルスキー自体が、セキュアな環境をもたらすことを使命としていること、上場しておらず短期的な利益ではなく長期的な視点での戦略で活動できることに基づくとする。加賀山氏は、成熟市場である日本においてカスペルスキーブランドの認知度を高める施策でもあると説明。カスペルスキーとしては今回の「モバイルセキュリティ9」を無料アプリとして100万本の配布を目指す。
携帯電話事業者に対しての取り組みは今後検討するほか、川合氏からは、ルート権限を奪取するようなマルウェアが登場することに対しては、端末メーカーとの連携も重要との認識が示された。
■カスペルスキーの今後
会見冒頭に挨拶したカスペルスキー氏は、日本法人がロシア本社の100%子会社になったことなどに触れ、日本市場へ注力すると説明。東日本大震災について、4月12日に発表した支援策などを紹介し、「ロシアでも日本からのニュースが注目されている。今は最上の時期とは言えないが、日本のチームを含め、今後の成長に向けて邁進したい」と語った。また、震災、そして原発事故による不安があるこのタイミングで訪日したカスペルスキー氏は、これまで20回以上日本に滞在した経験がありながら、今回初めて桜を堪能したと笑顔で語っていた。
カスペルスキー氏 | 加賀山氏 |
製品説明に先立ち、カスペルスキーの戦略についても説明が行われた。これまでは日本ではフランチャイズ形式で展開していたものの、2011年3月をもってロシア本社の完全子会社になった。
西欧および米国では既に一定の成功を収めたとのことで、ロシア本社と統合する一方、ロシア市場や中国・APEC市場、南米市場は、それぞれの地域を大まかに統括する部門と、その下で国ごとに担当する部門という二段構えで取り組む。市場全体の規模としては大きな成長は見込めない日本市場は、カスペルスキーのシェア伸長は見込めるとして、他のアジア諸国とは別の市場と位置付けられている。
販売パートナーに対しては、これまでパートナー側が一次サポートを受け持つような形だったが、新体制ではカスペルスキー側が一次サポートを持つなど、役割を拡充して、パートナーになりやすい環境になったとのこと。こうした取り組みで、現在11社のパートナー企業は、今年度中に250社まで拡充し、将来的には数千社を目指すという。
シマンテック日本法人社長も務め、今年1月から現職という加賀山氏は、今後6年で日本のアンチマルウェア市場において、シェア1位を目指すと語っていた。
2011/4/14 18:50