ドコモ、環境センサーネットワークの展開を解説


「環境センサーネットワーク」の概要 ※花粉センサーの実測値マップは「2011年3月3日観測値」が正しい

 NTTドコモは、携帯電話基地局に併設する観測局や、単独で設置する観測局で構築する「環境センサーネットワーク」事業の、今後の展開を解説する説明会を開催した。

 ドコモの「環境センサーネットワーク」は、携帯電話基地局にセンサーを備えた観測局を併設したり、基地局と関わりなく単独で設置したりすることで、気温、湿度、風向風速、雨量や、花粉、紫外線、雷といった各種の気象データを全国規模で詳細に収集できるようにするもの。気象庁のアメダスは全国約1300カ所に降雨観測所を設置しているのに対し、「環境センサーネットワーク」では既に全国2500局に設置。2011年度は4000局にまで拡大し、地方自治体との連携やコンビニ屋上などへの設置を行うことで、最終的には9000局の設置を目標にしている。なお、他社における同様の取り組みとしては、KDDIとウェザーニューズの協業でも行われており、アメダスより詳細な観測データという特徴で気象情報サービスが提供されている。

 ドコモでは、携帯電話・スマートフォンから閲覧できる「ドコモ花粉ライブ!」を1月14日より無料で提供しており、10分間隔のリアルタイムに近いデータが提供されている。2011年度には紫外線と気温情報も提供される予定。また、2010年8月からは全国約20拠点に設置された設備により、落雷情報も提供されている。

 ドコモは現在、観測局から得られる情報を実況データとして外部に提供し、過去のデータを蓄積している段階。一方、予測情報についてはドコモ自身では提供せず、提携した気象予報会社などから提供される。観測拠点を拡大しながら、リアルタイムの実況情報を提供し、予測などのサービスは提携各社から提供される、というのが同事業における基本的な方針になっている。

 中期的には、自治体や民間の観測網と観測情報の融合を図るほか、新興国を中心とした海外のキャリア向けにも展開される予定。

さまざまな分野で事業提携を推進

NTTドコモ フロンティアサービス部長の高木一裕氏

 10日に開催された説明会で登壇したNTTドコモ フロンティアサービス部長の高木一裕氏は、「高密度なネットワークの測定値を事業提携で提供できる。ドコモ自身が予測をすることはなく、データを蓄積することで価値を高める」と、基本的には観測データを各社に提供する立場として事業を進める方針を示す。また、落雷情報の提供では、工場の電源管理や保険会社、ゴルフ場、銀行のATM運営関連といった幅広い業種に情報を提供している様子を示し、健康気象や防災・危機管理といったさまざまな分野で事業提携を推進していく方針を明らかにした。

 

いであは「熱中症ハザードマップ」のモバイル版を提供

いであ 代表取締役会長兼社長の田畑日出男氏

 説明会では、環境センサーネットワークを活用する企業として、いであ、レスキューナウからも説明が行われた。いであは、民間の気象予報会社としてスタートし、人体への影響と気象情報を関連付けた「バイオウェザーサービス」などを提供している。いであ 代表取締役会長兼社長の田畑日出男氏は、「気象の変化には適切な対応が必要。観測網の整備が非常に重要になってきている。ドコモのネットワークはこのような社会の要請に応えるもの。テクノロジーの融合で、これまでより高度なサービスが期待でき、幅広い分野をカバーできる」などと語り、詳細な観測データが得られるドコモのネットワークを評価。熱中症で死亡する高齢者が続出した昨年の例を挙げ、今後の予定として熱中症の危険度を示す「熱中症ハザードマップ」のモバイル版を提供予定であるとした。また今後は、屋内での熱中症の発症を未然に防止することを想定し、関東にモデル地域を設定して、熱中症対策サービスの実証実験を行う予定であるとした。

 

レスキューナウは「防災気象アラートサービス」を予定

レスキューナウ 取締役会長の市川啓一氏

 レスキューナウ 取締役会長の市川啓一氏は、さまざまな危機管理に関する情報を収集し、24時間監視するセンターを通じて企業などに情報を提供している同社の業務のほか、危機管理全般を対象にしたコンサルティング、システムの提案といった昨今の事業についても紹介した。

 ドコモの環境センサーネットワークの情報を活用したサービスでは、設定した条件に合致するとアラートを届ける「防災気象アラートサービス」を今後提供予定であるとし、店舗管理や鉄道会社の運行判断、自治体の避難判断といった場面において、これまでにない、現場近くの詳細なデータを提供できるとした。市川氏は、「防災システムは数千万~数億円という規模が必要で、ほとんどの自治体はこうしたシステムを組めない」と語り、地方自治体を有望な市場としており、同社の有人の危機管理センターなどと連携させた危機管理の総合ソリューションとして提供する方針。また、将来的には、予測のデータを利用したアラートサービスや、アラートを出すしきい値の算出機能の開発、被害の発生予測についても開発を行っていくとしている。

会場に展示された「環境センサーネットワーク」観測局の装置

 FOMA通信モジュール
落雷情報の提供イメージ

 



(太田 亮三)

2011/3/10 17:47