VMware、複数OSを同時稼働できる携帯向け仮想化技術をデモ
VMware MVPの概要と構成 |
ヴイエムウェアは、携帯電話向けのVMware仮想化プラットフォーム「VMware MVP」について、国内で最新のデモンストレーションを披露した。22日から開催されるWIRELESS JAPAN 2009の同社ブースにてデモ展示が行われる。
同社の「VMware MVP」は、携帯電話上に展開できる仮想化プラットフォーム。仮想化プラットフォームを導入することでハードウェアとソフトウェアを分離でき、携帯電話上で複数のOSを稼働させ、切り替えて利用するといったことが可能になる。ARMアーキテクチャーを採用した端末を動作対象とすることで幅広い端末に対応でき、仮想化プラットフォーム上ではOSとしてAndroid、Symbian OS、Windows CE、μITRON、ecos、μC-OS/IIがサポートされる。対応OSを限定して開発されたアプリケーションに対しても、本来のOSに相当する小型のシステムとセットにすることで、異なるOS上で利用できるようになる。また、2つの環境で、異なる電話番号をそれぞれ待ち受けることも技術的には可能という。稼働できるOSの数は搭載されるメモリに依存し、2つ以上のOSを同時に扱うことも可能。
法人向けに、業務環境と個人環境を両立できるようなソリューションとして開発されているほか、キャリアを通じて個人向けに提供することも検討されている。
■AndroidとWindows CEを同時に起動
「Nokia N800」上でAndroidとWindows CEを同時に稼働させるデモ。写真のUIはデモ用のものだ |
21日には国内で記者向けに「VMware MVP」の説明会が開催され、同時に同社のモバイル関連の戦略全般についても解説された。デモでは、「VMware MVP」をセットアップした「Nokia N800」上でAndroidとWindows CEを同時に稼働させ、切り替えて操作できる様子が披露された。また、WIRELESS JAPAN 2009の同社ブースではさらに新しい端末上でデモを行うことも明らかにされた。
デモでは2つのOSを同時に稼働させている様子が分かりやすいよう、OSを切り替えるLinuxのユーザーインターフェイス(UI)が別途用意されており、合計で3つの仮想化されたプラットフォームが稼働していたことになる。なお、実際に導入される場合には、ユーザーがOSの切替を意識しなくて済むような仕組みが用意されるとのことで、デモのようなUIは基本的に提供されない見込み。
Androidが起動したところ | こちらはWindows CEでソリティアを立ち上げたところ |
■さまざまな課題を仮想化で解決
米VMwareのSrinivas Krishnamurti氏 |
同社のモバイル向け戦略については、米VMware ディレクター プロダクトマネジメント兼マーケットディベロップメント モバイルマーケティング担当のSrinivas Krishnamurti氏が登壇し説明を行った。同氏は日本国内向けに最新のデモを披露したことについて、パソコン向け仮想化プラットフォームで圧倒的なシェアを持つ同社にとっても、モバイル関連の市場が今後大きく成長すると予測しており、技術的に先行する日本市場が重要であると説明した。
モバイル向け戦略については、コンピュータ化が進むことでパソコンと同じ課題が生まれると指摘。プライベートと業務向けといった環境の使い分けや、セキュリティ・管理性などの、パソコンから継承するというさまざまな課題に対し、「携帯電話から社内のデータセンターにアクセスできる環境」「携帯電話のシンクライアント化」「携帯電話の仮想化」という同社の3つの戦略を挙げた。すでに試験提供中という「vCenter」はBlackBerryなどのスマートフォンから社内のシステムにアクセスできるというもので、技術部門の管理者などが外部から携帯電話を通じて社内のサーバーなどを操作する際に利用するもの。
「携帯電話のシンクライアント化」では、現在はノートパソコンなどが担っているシンクライアントとしての位置を携帯電話が担うようになると予測し、スマートフォン向けのシンクライアントアプリなどを紹介した。
3つめの仮想化はデモを交え、時間をかけて紹介されたもので、携帯端末上で複数のOSを稼働させることでさまざまな課題に対応しようというもの。同氏は、現在の課題として、世界的に見ても携帯電話上で扱う情報がますます豊富で重要になり、加えて、ユーザー視点では端末の買い替え時に起こるデータのコピーが困難といった、複雑でさまざまな要望で出てきているとした。また、キャリアにはリッチでオープンなOSに移行しようとする動きが見られ、従来型ビジネスモデルとの共存方法が課題になっているという。
メーカー側では、端末開発費の高騰により開発ペースのスローダウン、国際市場に対応させるための移植作業に時間がかかるといった、日本で顕著な例を示し、加えてアプリ開発の視点では、互換性に乏しい複数のOS・プラットフォームが台頭することで市場が分散化するとした。さらに企業の視点では、個人が携帯電話を当たり前のように持つ今、メール以上の利用方法を導入するなど、コンシューマ市場での圧倒的な携帯電話の普及が企業の方針にも影響を及ぼしている点を指摘した。
携帯電話の仮想化では、1台の携帯電話の上に異なるOS・環境を搭載できることでこれらの課題を解決できるという。具体的には、デバイスにとらわれない固有の環境を構築でき、異なる環境の共存、アプリケーションの新たなプラットフォームとしての利用、通信販売などのトランザクションにおける安全性の向上といったメリットを挙げた。例えば企業なら個人用と業務用といった環境を構築でき、企業のセキュリティポリシーを業務用環境のOSにのみ適用することも可能という。
Krishnamurti氏は、将来的には、端末上に構築した環境をバックアップしたり、リストアすることも可能という。また、子供向けのセキュリティポリシーを適用した環境を構築するといった利用も、OSに依存することなく可能であるとした。
さまざまなアプリも小さなOS(JeOS)とセットにすることで利用できる | 仮想化技術の基本となるMVPハイパーバイザーの概要 |
2009/7/21 18:15