マクドナルドの「かざすクーポン」、成功の裏側


 15日、ディーツーコミュニケーションズ(D2C)主催のモバイルマーケティング関連セミナーが開催された。「第8回モバイル広告大賞」の贈賞式も行われ、グランプリに選ばれた日本マクドナルド イーマーケティング本部上席部長でThe JV取締役COO兼務の宇井昭如氏から同社の事例が紹介された。

会員数は1300万に

日本マクドナルド宇井氏
年齢・性別のユーザー利用動向

 全国に約3700店舗を展開するマクドナルドでは、顧客ニーズの多様化や、テレビや新聞などを使ったマスマーケティングが将来的に限界を迎えるとの危機感、あるいはWebを通じたマーケティング手法の発達を受けて、PC・携帯向けの販促活動に取り組んでいる。携帯サイトでは、2002年3月に期間限定のキャンペーンサイトを開設したことを手始めに、1年4カ月後の2003年7月に継続運営するサイトを開設した。しかしなかなか会員数は伸びず、開設から2年2カ月後の2005年9月時点では約19万人。2006年12月に100万人を突破すると、2007年以降は順調に会員が増加し2009年5月時点では1300万人を突破した。

 現在、マクドナルドでは2009年末までに全店舗でのPOSの入れ替えを進めている。旧型のPOSでは非接触IC対応リーダーライターが接続できないためで、新型POSに接続するリーダーライターは12種類の電子マネー/ICクレジットに対応する。これまでに首都圏や近畿での導入が完了しているものの、47都道府県のうち22県ではまだ導入されていない。これが完了すると同社が進める“e-マーケティング”(Webなどを利用する販促活動)の初期段階が終了するという。

 2008年からスタートした「かざすクーポン」は、2009年5月末時点で約300万会員となった。宇井氏は、「22県残した段階で300万人に達した。正確な数値は明らかにできないが、毎月数十万単位で増加している」と語り、おサイフケータイ利用の新たなマーケティング手法が順調に広がっていることを示した。

 アンケート調査結果によって明らかになった、同社の携帯サイトユーザーの年齢層のデータを示した宇井氏は「10代のユーザーは多いが、30代女性ユーザーの34.6%が当社サイトを利用していることが判明した。これが実現したかったことの1つ。マクドナルドでは、ビジネス層とファミリー層の客単価が高めで、ファミリー層にはどんどん利用してもらいたいと考えているが、携帯向けサービスは20代前半が主流層と言われていた。しかしアンケート結果では、30代女性の3人に1人が使っている」と述べ、狙い通りのリーチができているとした。

行動履歴を販促に活用

 またクーポンの配信については、携帯向けに「みせるクーポン」「かざすクーポン」を配信しているが、新聞を使って配布する紙のクーポンが配布1カ月前に内容を決定しなければいけないところ、モバイルでは3日ほど前でも配信できることがメリットとした。またメールマガジンの配信を毎週金曜に行っていることについては、「マーケティングにおいて、企業からユーザーへコンタクトするタイミングが適切でなければならないと思う。マクドナルドでは毎月1回新商品を出したり3週間に一度、ハッピーセットの内容を変えており、毎日の情報配信は不要と判断した。また週末には売り上げが上がるため、金曜に配信することにした。適切な配信タイミングでなければ敬遠されたりする」と述べた。

電子的なマーケティング活動に取り組む背景これまでの流れ

 また、かざすクーポンでは、クーポン番号と会員IDを記録できることから、ユーザーの行動履歴を把握し、そのデータを元にした販促活動が実現できると説明。また話題にはった商品「クォーターパウンダー」は、全国展開を前に2008年2月から熊本県で販売していたため、会員情報で「熊本県」と登録していたユーザーには、以前から携帯サイトで「クォーターパウンダー」の情報を配信するなど、地域にあわせた情報配信も可能になっている。このほか、行動履歴は、新商品開発や店舗開発でも利用されているという。

 宇井氏は「当社だけではなく、より多くの企業がモバイルマーケティングを実施することで活性化する。日本にはマクドナルドを利用する年齢層の方が8000万人存在しており、ある調査ではそのうち99%がマクドナルドを利用したことがあるという。従って1300万会員はまだまだで、社内でも『5000万人はいつなんだ』と言われたりする。特におサイフケータイ利用の手法に参入していただければ、国内市場が盛り上がる」と聴衆に呼びかけていた。

 このほかロッテからもYouTubeと連携したマーケティング手法などが紹介された。

 



(関口 聖)

2009/7/15 20:53