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JR東とグーグル、改札タッチで情報配信する「タッチトリガー」の裏側を公開

 JR東日本が展開する、Suicaの改札タッチを起点にスマホへ情報を配信するサービス「タッチトリガー」について、Google Cloudの技術を活用したシステム基盤の導入事例が公開された。同サービスは「Spanner」や「Cloud Run」を採用し、膨大なトラフィック処理と柔軟なデータ活用を実現している。

膨大なトラフィックを支える技術基盤

 改札を通過する際に発生するデータは、山手線内の駅だけでも1日あたり数百万回にのぼり、ラッシュ時には平常時の10倍に急増する。「タッチトリガー」では無数の改札から送られてくるデータを瞬時に記録し、ユーザーの属性や利用駅、時間帯と掛け合わせてパーソナライズされた情報を配信する。

 このトラフィック処理とデータ記録の課題を解決するため、Google CloudのSpannerとCloud Runが採用された。一般的なリレーショナルデータベースでは処理能力の上限により要件を満たせなかったが、Spannerを活用することで、データを自動で振り分けながら高い整合性を維持している。

 これにCloud Runを組み合わせ、乗客の増減に応じてほぼタイムラグなくオートスケールするシステムを構築した。システム実装の現場では、「Data Boost」機能を利用した分析クエリの実行において、リソース競合を回避する手法も取り入れられている。

改札タッチを起点とした多様なサービス展開

 同サービスは2024年に山手線内の全駅に実装され、現在は新幹線の停車駅や大井町駅などにも拡大している。2024年のイベント「山手線謎めぐり」では、Suicaをタッチすると駅に応じたコンテンツが配信される仕組みを取り入れたほか、2025年にはスマホゲーム「みんなのトレインタウン」のアイテム獲得条件に「改札タッチ」を組み込む施策も行われた。

 2025年にオープンした「TAKANAWA GATEWAY CITY」では、アプリとSuicaを連携したユーザーを対象に、改札を出たタイミングで施設内で利用できるクーポンを配信する実証実験を実施した。また、2026年3月には大井町駅において、コンビニエンスストア「NewDays」と連携したおすすめ情報やクーポンの配信施策も開始されている。

 新幹線の利用においても取り組みが進められている。2025年には群馬県の交通連携サービス「GunMaaS」と連携し、新幹線で高崎駅に降りる乗客に向けてタクシーを手配する試みが始まった。乗車中にコンテンツを案内し、現地到着にあわせて交通手段を提供するなど、個別のニーズに応じた情報配信が行われている。

 現在、同社はJRE IDの一本化に取り組んでおり、2028年に新たな「Suicaアプリ(仮称)」がリリースされれば、ユーザー一人ひとりに向けた本格的なコミュニケーションが可能になる見込みとなっている。

コロナ禍を契機とした開発の背景

 「タッチトリガー」開発の背景には、コロナ禍による鉄道利用者の大幅な減少があった。人の移動という前提が揺らぐなかで、単なる移動インフラの提供にとどまらず、乗客の生活に寄り添う新しい価値の提案が求められていた。

 従来、0.2秒という超高速処理が求められる改札データはオンプレミスの社内システムで処理されていた。しかし、グループ各社が展開する駅周辺の事業などでデータを横断的に活用するため、全社的なSuicaシステムのクラウド化と足並みをそろえる形で、運用基盤の刷新が行われた。