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「圏外でもPayPayつかえる」、そのしくみと開発された理由とは

 キャッシュレス決済サービス「PayPay」で、通信できない状態でも支払えるようにする新機能「オフライン支払いモード」の提供が始まった。利用できるユーザーは徐々に拡大される予定だ。果たしてどういった背景で新機能が開発されることになったのか。

「通信できないと使えない」

 同社Payment Product本部シニアプロダクトマネージャーのタンネルー・ドルヴァ(Tanneru Dhruva)氏は、ユーザーからの声に応えるため開発に携わったと語る。

ドルヴァ氏

 コード決済は、スマートフォン側で一時的に使えるコード(QRコード、二次元コード)を表示したり、店頭にあるコードを読み取ったりして支払いの手続きを進める。この際、ネットが使えない状態ではコード決済も使えない、というのが基本的なしくみだ。

 そのため、通信障害が発生すると、たちまちコード決済は行き詰まる。通信会社の障害だけではなく、コンサート会場のように1カ所へ多くの人が集まると、そのエリアの通信容量があふれ、通信しづらい状況になることもあり、そうした環境でもコード決済が使いづらくなる可能性はある。はたまた、電波が届きにくい地下の飲食店などでも、そうした場面に遭遇することはさほど珍しくない。

 また、「PayPay」は、スマホユーザーの約1.6人に1人まで利用されるようになった。2018年10月のサービス開始以降、コード決済全体での決済回数のうち、直近ではPayPayが67%を占めるほど、多くのユーザーに利用されている。だからこそ、圏外かどうかを問わず、ユーザーにシームレスな体験を提供することがPayPayにとって必要不可欠であり、社会インフラとしての地位確立につながることだとドルヴァ氏は語る。

2つのフレームワーク

 新機能では、通信障害やネット回線が利用できないといった状況でもPayPayで支払える。「ユーザーがネットに繋がっていない」状態でも支払えるようにする機能は、ドルヴァ氏によれば2つのフレームワークで構成されているという。

 ひとつは、店舗側のもの。いわばキャッシャー(レジ)であり、ユーザーのスマホに表示されたコードをスキャンする側の仕組みだ。

 そしてもうひとつは、店舗側の機器がネットに接続しているということ。

 どちらも特許出願中とのことで、詳細は明らかにされていないが、ほかには支払い上限額を設定すること(1回5000円、あるいはPayPay残高の残り)、そして利用回数を制限(1日2回まで、オフライン状態は最長14日間)することもまた、新機能の実現を支える考え方にもなっている。

 ちなみに、スマホ側に表示されるコードは、オンライン状態であれば5分に一度更新されるが、オフラインであれば1分に一度の更新で、より短時間でリフレッシュされている。

 PayPay残高が上限額になっているとのことで、もし4000円という上限であれば、オフラインで支払いに使えるのは4000円まで。もし、そこで1000円分支払うと、その決済した情報は店舗からPayPay側に送信される。

 そして、1日2回のうち、1回目を上記のとおり1000円使ったとした場合、オフラインで使える決済上限額は4000円から1000円引いた、3000円ということになる。

 そして、端末がオンラインに復帰すれば端末側のアプリ側と同期される。

ユーザー側で店舗のコードをスキャンする方法は?

 PayPayで今回、「圏外でも支払い」ができるようになったのは、スマートフォン側にQRなどのコードを表示して店舗側で読み取る「ストアスキャン方式」のみ。

 一方で、店舗にあるQRコードをスマートフォンで読み取って支払額を入力する「ユーザースキャン方式」については利用できないが、ドルヴァ氏は今後、検討する考えを示す。

 ドルヴァ氏は、PayPayアプリでのユーザースキャンではスマホからデータベースにアクセスする必要があると説明。ストアスキャンでは店舗がオンラインであれば、データベースにあたることができ、ユーザー側(PayPayアプリ側)がオフラインでも利用できるようにしたが、PayPayアプリ側がオフラインのときに、ユーザースキャンをどう実現するかが課題になる。ただ、詳細は語られなかったが、その解決策のアイデアもあるといい、今後の展開に期待をもたせた。