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プライバシー保護や多機能さが魅力のブラウザ「Vivaldi」、創業者らが来日し魅力をアピール

 Vivaldi Technologiesは16日、東京都の駐日アイスランド大使館で同社や同社の製品「Vivaldi」について記者向けに説明会を実施した。あわせて同日、iOS向けVivaldiのプレビュー版がTestFlight経由で公開された。

同日公開されたiOS向けのVivaldi(プレビュー版)

アイスランド大使

 発表の場ではステファン・ホイクル・ヨハネソン駐日アイスランド大使があいさつ。Vivaldiはノルウェーに拠点をおく企業だが、創業者であるヨン・スティーブンソン・フォン・テッツナー氏がアイスランド出身であることから、東京都内の駐日アイスランド大使館で開催された。

駐日アイスランド大使 ステファン氏

 ヨハネソン大使は、アイスランドについて、人や平等性を重視する文化や、近年では観光需要も増えており、日本からの観光客も多いことを紹介。かつては、漁業が主な産業だったところ、近年はハイテク産業に注力しており、たとえば、その涼しい気候を冷却に活かし、省エネなグリーンデータセンターなどでの経済振興を図っているという。さらに、同国内の電力は、すべて地熱発電や水力といった再生エネルギーで賄われていることも解説した。

 「持続可能な文脈は日本の文化にも合致している、今後2国間のパートナーシップがさらに発展することを期待している」と語った。

Vivaldiとは?

 テッツナー氏は、Vivaldiがほかのブラウザと異なり、パワフル、パーソナル、プライベートといった異なった開発思想があると説明。

Vivaldi Technologies テッツナー氏

 Vivaldiは50人ほどの従業を擁し、世界7カ国で25の国籍を持つ社員が働いている。ノルウェー、アイスランド、米国に拠点持っており、完全従業員持株会社の体制を取っている。これは、外部投資家による利益の追求の要求を避けるためという。

 テッツナー氏は、かつて人気を誇ったブラウザ「Opera」を開発したOpera Softwareの共同創業者だった。同社を去ったのち、ブラウザ開発に戻る気はなかったというがOperaの方針などが大きく変わったことやユーザーからの要望があったことでVivaldi Technologiesを立ち上げるに至った。

 Vivaldiの名前は、作曲家のアントニオ・ヴィヴァルディに由来する。「Operaとの類似性も感じていただけるのでは」とテッツナー氏は語り「OperaもVivaldiもソフトな響きがある。大事なのは国際的なことで、どこの国でもヴィヴァルディの音楽を聞いたことがある人は多い」としたほか、テッツナー氏の祖父もクラシック音楽の作曲家であったことからVivaldiという名付けたという。

 “コミュニティ”を重視しているのも特徴だ。テスターや翻訳者、モデレーター、アンバサダーなどさまざまな役割を担うユーザーがボランティアとして参加している。「これは幸運で誇らしい。ボランティアから社員になった人もいて、社員として働いていたメンバーが退社後にボランティアになったことも」というエピソードもテッツナー氏は紹介した。

 Vivaldiブラウザは、パソコン、スマートフォンのみならずポールスターなどAndroid Automotiveを採用する自動車でも動作する。パソコンではWindowsのほか、MacとLinuxに対応。Android版もリリースされており、今回、iOS向けのプレビュー版が公開された。今後、メルセデス・ベンツとフォルクスワーゲン車などでもVivaldiが利用可能になる見込み。

Vivaldiの独自性

 Vivaldi Tehnologies COOの富田龍起氏は、Vivaldiについて説明。タブスタックやワークスペースなどVivaldiが持つ特徴を述べる。ワークスペースのなかでもタブスタックを利用でき、何十個もタブを開き乱雑にならないというメリットがある。

Vivaldi Technologies 富田氏

 複数のWebサイトを隣に合わせて表示することができる「ページタイル」は、自分でウィンドウサイズをあわせなくても、表計算サービスや翻訳サイトを立ち上げながらソース元のサイトを閲覧するといった使い方を実現する。このほか、ユーザーが任意に動作を設定できるジェスチャー機能、キーボード操作でページタイルの表示などを実現するショートカット機能も備えている。

 また、カレンダーやRSSリーダーに加えてWebメールのクライアントとしての利用もできる。

 さらに個人に最適化する機能も重視し、タブやサイドバーアプリの配置は自由に変更できるほかテーマを好みに変えられる機能などをあわせ持つ。広告ブロックやトラッカー認識などプライバシーを重視した設計が大きな特徴となっている。

 Android版もリリースされているが、モバイル向けブラウザとしては珍しいタブ表示を備えるなど、パソコン版での使用感を意識したデザインに仕上げた。

99%伸ばしていける

 富田氏は「ほかのブラウザが機能を削ぎ落としてスリム化していく中、Vivaldiはその逆を行く」と同社の姿勢を示した。誰にでも扱いやすいように機能を厳選しシンプル化していくブラウザが多い中、プライバシー保護などと並び、多機能さを同社の強みのひとつとする。

 プライバシー保護の観点から同社ではユーザーを追跡することはしていない。そのため、正確な市場シェアは不明としつつも1%ほどではないかという。これまでVivaldiにはiOS版が存在しなかった。このためMacでVivaldiを使うユーザーからは、Vivaldiの同期機能を利用したいとiOS版を求める声が多かったという。

 今回リリースされたのはプレビュー版だが今後、iOS版を正式公開することで、これまで他社製を使っていたユーザー層も取り込めるだろうと今後の展望を示す富田氏。加えて、Android Automotiveの普及が進むにつれ、Vivaldiの利用が増える可能性も見込む。

 プライバシー保護について各国で法整備が進み、関心も高まる中強みのひとつでもあるプライバシー機能も積極的にアピールする。グーグルやアップルなど、強豪がひしめくなかだが富田氏は「(現在のシェアである)1%はすごく小さい。逆に言えば99%伸びる余地がある」と今後への熱意を示した。