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ベーシックな5Gスマホ「arrows We」で日本のデジタル化を後押し、FCNTが新製品発表会

 FCNTは、Androidスマートフォン「arrows We」(アローズ ウィー)を発表した。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社から今冬発売される予定。

 発表の場には、FCNT シニアプロフェッショナル(マーケティング戦略担当) 営業本部 デジタルマーケティング企画開発統括部 プロダクト戦略グループの荒井厚介氏が登壇。

 荒井氏は、arrows We提供の背景について、現在がデジタル化や5Gの普及期にあることから、すべての人に「使いやすく」「手に取りやすい」スマートフォンの必要性があったと語る。

初めてのスマホ向けの1台

 arrowsシリーズで新たなネーミングとなる「We」に込められた意味は「生活者」「通信事業者」「事業パートナー」「FCNTの従業員」4つと説明。「誰から見ても『We』(私たち)の商品であると愛着を持ち、その先の価値創造につなげていきたい」という。

 ターゲット層としては、フィーチャーフォンからの乗り換えやスマートフォンへ苦手意識があるユーザー、スマホデビューの若年層を狙う。

 3キャリア合わせてのカラーバリエーションは全7種。ドコモ版ではオンラインショップ限定で朱色に着想を得た鮮やかながら渋みをあわせ持つ「レッド」を用意。au版では女性向けに「かわいい」の定番というローズゴールドをラインアップ。ソフトバンク版では、「arrows U」の人気カラーであるブルーをリファインしたターコイズを用意。米GMの高級スポーツカー「シボレー・コルベット」のボディカラー「エバーブルー」にも通じる色としており、若年層とシニア層の両方にアピールする。

 au版では純正手帳型ケースと純正卓上ホルダーが用意されるほか、ソフトバンク版ではeSIMに対応し、物理SIMと合わせてデュアルSIMに対応する。

快適な操作、割れにくさも継承

 荒井氏は、arrows Weの特長について「快適な動作」「大容量バッテリー」「素早いキャッシュレス決済操作」の3つにポイントをおいて説明。

 ディスプレイサイズは5.7インチ。チップセットにはクアルコムの「Snapdragon 480 5G」を搭載。メモリーは4GB。64GBのストレージを備え、microSDXCにも対応する。エントリーモデルとは言っても、快適性を犠牲にはしていないと荒井氏。

 同社によれば、一般的なスマートフォンの買い替えサイクルは4~5年。今回発表のarrows Weと2017年発売の「arrows NX F-01K」(Snapdragon 660搭載)をベンチマークで比較するとCPUとGPUでそれぞれおよそ1.5倍と1.3倍ほどarrows Weがリードする。

 カメラについては、広角レンズとマクロレンズのデュアルレンズ構成。アドビの「Photoshop Expressモード」に対応する。

4000mAhのバッテリーを搭載

 arrows Weが想定するターゲットの一角であるフィーチャーフォンユーザーがスマートフォンに抱く不安は、バッテリーライフの短さ。

 arrows Weでは、arrowsシリーズで最大級となる4000mAhのバッテリーを搭載。朝から夜まで使っても安心とする大容量に加えてバッテリーの劣化を防ぐ「長持ち充電」機能により、フィーチャーフォンユーザーのみならず、古いスマートフォンからの買い替えでもメリットを感じられるとしている。

キャッシュレス決済も使いやすく

 arrows Weオリジナルの機能としては「Smart Fast」機能を備える。新型コロナウイルスの影響により、キャッシュレス決済が生活に浸透する一方で多数の決済サービスを並行して利用するケースも少なくない。

 アプリの立ち上げで「レジの前であたふたした経験があるのでは」という荒井氏は、「FAST ウォレット」と「FASTフィンガーランチャー」の2種を紹介。

 FASTフィンガーランチャーは指紋認証と組み合わせることで瞬時にアプリを起動でき、FAST ウォレットと組み合わせることで決済アプリやポイントアプリなどを素早く切り替えられるという。

マスク通話モードや丸洗いも

 さらに、arrows Weではマスクをつけての生活が当たり前になった昨今の情勢を踏まえて「マスク通話モード」を搭載。相手の声も自分の声もクリアに届けられるとしている。

 加えてアルコール除菌やハンドソープでの丸洗いに対応。もちろん、arrowsシリーズの特長のひとつである落下時の画面の割れにくさも継承している。

 「スマートフォンはちょっと気後れする」や「使いづらい」というユーザーのためにシンプルモードを用意。文字やアイコンが大きく、操作が簡単で任意の番号を登録できる短縮ダイアルやシンプルで見やすい電話帳を利用できる。

 これらのほか、利用シーンに応じて通知や特定のアプリの表示をオフにできる「プライバシーモード」、フィッシング詐欺などの警告機能や防犯ブザー機能、ゲーム専用モードの「ゲームゾーン」、利用範囲などを制限できる「ジュニアモード」などを備える。

携帯電話事業30年、arrows設立から10周年

 FCNT 執行役員(プロダクト・サプライチェーン戦略担当) プロダクト事業本部長の櫛笥直英氏は、FCNTの歩みについて説明。

 同社は2021年4月に「富士通コネクテッドテクノロジーズ」からFCNTと社名を新たにした。櫛笥氏は「Creating "New Connects"」をミッションとして、いまだかつてない「つながり」を創造、これまでにない価値を提供していくと、決意を示す。

 同社が携帯電話を開発して2021年で30年。これまでに送り出した機種数は累計168機種。出荷台数は7700万台を数える。2011年のarrowsブランドスタートからは10年を迎えた。

 「30年の歴史の中で、初の生体認証などユニークな技術を提供してきた」と櫛笥氏。同社では、2020年に国内メーカーとして初の5Gミリ波対応モデル「arrows 5G」をリリース。さらにそのノウハウを活かした普及機「arrows NX9」を提供してきた。

 櫛笥氏は「本来であれば、後継機を投入すべきだが、5Gが本格的に普及し多くの生活者が求めることは何か」と問いかける。

 新型コロナウイルスのワクチン接種予約などでもデジタルが身近になり、将来的には役所の手続きなどでもデジタル一般的になることが予想される一方、フィーチャーフォンユーザーもいまだ多く残る。

 そうした中、使いやすく手に取りやすい商品を提供していく必要があるとarrows We提供の意義を説明。約60%の消費者が3万円以下でスマートフォン購入していることを紹介。料金プランの低廉化が進む一方、日本メーカーにおいてはそうした低価格な5Gスマートフォンはまだ存在しないと指摘。

 櫛笥氏はarrows Weについて「ただのローエンドモデルではなく、arrowsのDNAを受け継ぎつつ価格は抑え5G対応するという大きなチャレンジを行った」として、日本の市場のために何をすべきかに徹底的に向き合った上で「戦略的な機種を投入する」経営判断をしたと語る。

withコロナ時代に向けて新サービス検討

 FCNT マネージャー兼シニアプロフェッショナル(パートナーシップ戦略担当)営業本部兼経営戦略室の外谷一磨氏は、デジタル化社会への取り組みを紹介。

 外谷氏は、リアル中心でデジタルに接点があったがコロナ禍以降は、デジタルに絶えず接しながらたまに人に会ったり買い物をしたりという生活に変化したと現状について説明する。

 一方でコロナ禍ではEC利用者を狙う詐欺が増加。偽サイトで個人情報を狙うフィッシング詐欺は2019年比で2020年は4倍になったという。FCNTでは、独自の技術で偽サイトを検知し警告する機能をarrows Weを含めて、同社製品すべてに搭載していく。

 また、シニア層のデジタルデバイド解消も促進。同社が運営するシニア向けコミュニティ「らくらくコミュニティ」は会員数240万を突破した。同社では「スマートフォンの利便性を感じられない」や「使い方が難しい」といった課題を抱えるユーザーに対して、「らくらくまめ得」や「らくらくコンシェルジュ」といったソリューションを用意している。

 さらに、それぞれのプロダクトとサービスのシナジーがもたらす価値ででパーソナライズされた体験を提案するとしている。同社が提供するサービスを集約し、新たな会員制ポータルサービスを現在検討中と明かした。

 新たなサービスでは、外部企業との共創を強化。「プロダクトとサービスの融合によりバリュージャーニー型価値提供を目指す」と語った。

 その一環としてアドビとセガXDと連携。モバイルやコンシューマー領域におけるFCNTの知見とアドビの製品の掛け合わせで「人を幸せにする、優しいデジタル」を実現するという。加えてセガのコンテンツなどとFCNTのヘルスケアプロダクトでシニアのウェルビーイングに取り組むとした。

 それぞれの取組の詳細については、あらためて告知される。

 2021年で10周年を迎えたarrowsブランド。外谷氏はこれまでの感謝を述べつつ「次の10周年で何を残せるか。デジタル化社会の変革期において求められるのは変化できる力。FCNTはarrowsとともに変化する力を一人ひとりに届けていきたい」と語った。