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仙台市とKDDIが協定、人材育成で地元企業発展目指す
2020年8月28日 16:08
仙台市とKDDIは28日、人材育成に向けた連携協定を締結した。仙台市、あるいは東北地域でのスタートアップ企業の成長を促す“人財”作りに取り組む。
協定では、「スタートアップの支援」「次世代の起業家育成」「ICT人財の育成」という3点が柱になる。
郡市長「長期的な取り組み」
仙台市は、これまでに東北全域を対象とした集中支援プログラム「東北グロースアクセラレーター」と「東北ソーシャル・イノベーションアクセラレーター」を実施中。また政府が選定したスタートアップ・エコシステム拠点都市にも選ばれている。
郡和子 仙台市長は、「KDDIのノウハウが注入されることになるのは大きな力」と期待感を示し、産学官金での連携を進めると説明。
具体的なスケジュールについては「いくつもの企業を創出、育成するための連携。どこまでやるのか、こだわりはない」と述べ、現時点で具体的な目標は定めず、環境を整えて、長期的に取り組む姿勢を見せた。
KDDI松野氏「鍵は地元企業」
全国各地の自治体と連携を進め、IoTなどの実証実験も手掛けてきたKDDI。
KDDI理事 経営戦略本部副本部長の松野茂樹氏は、いわゆる地方創生に向けて、ネットや通信技術を用いて、さまざまな自治体で実証実験を進めてきたと解説。
ただ、一時的な実証実験では国の補助金が得られやすいものの、実装して本格的に導入・運用しようとすると補助金が得られにくい現実を指摘。
そうなると地元の資金で費用をまかなうことになるが、東京に拠点を置く企業からソリューションを調達するだけでは、コストが高すぎたり、支払う余力があっても地域外へお金が流れ出すことになる。
そうした課題を解決するためには「地元でICTを支える企業が必要」と松野氏は説明。ただし、現在はそのための人材、企業が不足していると課題を指摘する。
そこでKDDIでは、地方に根ざす企業の育成・支援に取り組む。これまで、同社ではスタートアップを支援する「KDDI∞Labo」を進めたり、新興企業へ投資するKDDI Open Innovation Fund(KOIF)といったファンドを手掛けたりしており、これらのノウハウを、今度は仙台市を拠点にする企業・人財の育成につぎ込むという考えだ。
たとえば人材育成のためのセミナーなど、教育コンテンツの不足を補う。その際には、たとえば5Gを活用し、講師は東京、聴衆は仙台といった形も視野に入れる。仙台市の資産を基地局に活用するといった取り組みは今回の協定には含まれていないが、郡市長は「重要な課題だと思っている。さらに研究したい」と述べた。
松野氏は「鍵は、地元が主役になること。KDDIからビジネスノウハウやITソリューション、起業をどうするか、地元と連携しながら、学生、若い層に伝えたい」と意気込みを見せる。
5Gのこれからの普及において、政府は地方創生にも注力する。KDDIのみならず、携帯各社が地方との連携を進めるなかで、KDDI∞Laboや、ファンドの運営などこれまでの取り組みがKDDIの独自性になると松野氏。地方からの人材・企業育成に向けたソリューションは、将来的に他の地域からの引き合いも期待され、地域への貢献という面だけではなく、ウィズコロナ時代における5Gの活用例としても注目されそうだ。