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年間数十億件の削除も――悪質な広告からユーザーを守るグーグルの取り組みとは

 グーグルは、悪質な広告からユーザーを守るための同社の取り組みについて説明した。

 同社では、ポリシー違反の広告を最小限に抑え、悪意のある広告出稿者を阻止し広告品質を維持することは、重要な業務と位置づけていると説明。グーグル Vice President of Product Management, Ads Privacy and Safetyのスコット・スペンサー氏がその詳細を語った。

数十億件の広告を削除

 スペンサー氏の所属するチームは、グーグルが持つ膨大な数の広告ポリシーについて取り扱っている。同氏はグーグルの広告ビジネスについて、3つの領域があると説明。

グーグル スコット・スペンサー氏

 ひとつは、自社の検索から得られる収益。コンテンツ製作者と連携するYouTubeの広告。最後にグーグルの製品がサポートするサードパーティのエコシステム。グーグルは、ウェブサイトに広告を掲載する協力をしているが、その広告とサイトのコンテンツががグーグルのポリシーに違反していないかどうかを確認しているという。両方がグーグルの基準を満たさなければ、広告を掲載することができない。

 「グーグルの方針として、オンラインエコシステムを長期的に健全な状態に保ちたいという視点がありました」とスペンサー氏。故に質の高いコンテンツ、質の高い広告に焦点を当てて、広告出稿者などの間でマッチングを図りたいと語る。

 インターネットなどのエコシステムがオープンであり、繁栄を続けることに価値があり、長期的な利益を得るために短期的利益を見送ることも必要とスペンサー氏は強調する。ただし、繁栄を続けるプラットフォームには、必ず悪意を持ってそれを利用する者が現れることもまた確かである。たとえば、悪意のあるサイトへの誘導や、サイト利用者のパソコンを利用してビットコインのような仮想通貨のマイニングをさせようとするものなどだ。

 そのために利用者を守る手段が必要とスペンサー氏。グーグルでは数千人の社員が、協力しそうした悪意ある広告の排除にあたっている。AIの技術なども組み合わせ、グーグルのコンプライアンスに準拠していないと判定されたものを特定するツールを構築しているいる。この結果、2019年には約27億件の悪質な広告を排除したという。

アカウント停止などの措置も

 広告を取り下げることに加えて、アカウントの停止措置なども行われている。1つのコンテンツや広告がポリシーに違反している場合は、広告を削除するが、コンテンツの評価のためにグーグルのシステムから回避するような行動が見られると、アカウント削除になることがあるという。

 2019年の例で言うと、国内外合わせて120万の広告出稿者のアカウントを停止し、広告を削除したページは2100万に上るとした。グーグルでは、起こり続ける問題に対応するため、そうした対策やポリシーは常に進化を続けているのだとした。実際、2019年度には31の新しいポリシーが導入されている。

 「これらはグーグルの取り組みのほんの一部だ」とスペンサー氏。サイトの利用者や広告主などの間で校正で透明性の高いエコシステムを実現するための同社の行いの一端だ。優れたコンテンツ製作者がコンテンツを制作し、それを無料で世界に提供し、広告で収益化するというオープンな選択を持てるようにすることが、目標だという。そのために、広告のクリックが本当に悪意のないユーザーからのものなのかどうかを確認するために数多く技術投資を行っていると紹介した。

透明性の確保が重要

 グーグルの広告には「この広告をミュート」や「この広告について」のようなボタンがある。ユーザーが「広告主が誰か」を理解できるように、消費者の環境における透明性をできるだけ多く提供したいとスペンサー氏は語る。

 欧州で提供している選挙広告などについて、透明性を提供する取り組みを発表しており、広告主がユーザーにより多くの情報を提供、選挙広告と選挙レポートの透明性を提供してきた。スペンサー氏は「透明性というポリシーは、民主主義を可能にし、ネットの情報を自由に流すための最良の方法だ」と語る。

 ユーザーが広告を自分自身で、そのバックグラウンドにいるのは誰なのか、どういう役割を果たしているのかを理解するというのがグーグルが重視してきたことだという。可能な限りの透明性を確保するために、さまざまな取り組みを推進しており、これからも常に可能な限り透明で公正なものにしていきたいとスペンサー氏は語った。