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横浜では2年ぶり、「Pokémon GO」リアルイベントその内容と携帯各社の対応は

 日本発の人気作品を題材に、拡張現実(AR)と位置情報の組み合わせで世界屈指のスマートフォン向けゲーム「Pokémon GO」のリアルイベントが8月6日~12日、横浜市のみなとみらい地区で開催された。

 横浜市とポケモン社が主催するイベント「ピカチュウ大量発生チュウ!」も同時期の夜間に開催されており、夏休みの横浜中心部がポケモンで埋め尽くされた格好。しかし2年前に同エリアで開催された同様のイベントと比べ、参加者数が絞り込まれたこともあってか、大きな混乱や事故もなく、つつがなく閉幕を迎えたようだ。

 最終日に現地を訪れた筆者が、「Pokémon GO」開発元のナイアンティックに聞いたイベントへの姿勢、対策や、携帯各社の対策を中心にレポートする。

Pokémon GOのリアルイベント、これまでは

 現実世界を舞台にする「Pokémon GO」では、これまでに世界各地でいくつかのリアルイベントが開催されてきた。

 2017年夏、米国シカゴで初めて開催された公式イベントは「Pokémon GO Fest」と名付けられたもので、有料チケットを手にした参加者だけがQRコードを読み取って参加する形。クローズドな公園内にいくつかゲーム内のスポット(ポケストップ)が表示され、さまざまなポケモンが登場した。しかし、当日は携帯電話がほぼ繋がらない状況となり、まったくプレイできない状況になってしまった。

 同じく2017年夏に横浜で開催された「Pokémon GO PARK」は、誰でも参加できるオープンなイベントだった。しかしこちらも人があまりに多すぎたためか、携帯各社が特別な対策を行ったみなとみらい地区などを除き、横浜中心部のかなりの場所で携帯電話が繋がりにくくなった。さらには日夜を問わず交通量や路上駐車が増えたという声も多く挙がった。

 2018年夏、日本で公式イベントとして横須賀市で開催された「Pokémon GO Safari Zone in YOKOSUKA」は、抽選での参加、そして会場も分散が図られた。当時、筆者は取材できなかったが、大きな混乱は伝えられておらず、前年のフィードバックを活かした形だ。

 そうした経緯を経て、日本での公式イベント3回目となったのが今回の「Pokémon GO Fest Yokohama」だった。

ゲーム画面の様子
期間中だけの特別なポケストップも
プレイ中、熱中症予防の通知が何度となく送られてきた。そしてイベント終了後にはゴミを残さないよう案内する通知

 ちなみにPokémon GOのリアルイベントには、「Fest」や「Safari Zone」などがあるが、ナイアンティックによればFestのほうがより大規模。Festでは、限られたイベント会場とはいえ、特定の場所に「こおり」、別の場所では「みず」と、種類の異なるポケモンが出現するようになっていた。

海外でも開催、でも日本は無料

 Pokémon GOのリアル公式イベントとして「Fest」として開催された2019年夏の横浜。同じく2019年夏には、米国シカゴや、独ドルトムントでも「Fest」が開催されたが、海外は有料チケット、日本では無料イベントという大きな違いがあった。

こおりポケモンは出るエリアなどを案内

 料金面で無料化を決めたのは、主催者である横浜市とポケモン社とのこと。運営費全体の規模感も、具体的な金額は明らかにされていないが、日本のほうは、熱中症対策もあって、より多額の運営費になったようだ。

リアルポケストップ

イベントでのゲーム内容

 3回目となる日本での公式イベント「Pokémon GO Fest Yokohama 2019」は、抽選での参加、そして会場も3つの公園に分散と、前年の横須賀と同様の対策が採用された。これは、人が集まりすぎることを避け、公園外でのプレイを抑制するといった効果を狙ったものだ。

 参加者は、応募後の抽選、そして当選後の手続き(親友以上のフレンドを招待し、参加したい日を決める)を経て、当日、現地を訪れるだけという形。当日は、ゲームアプリを起動する以外、特別な手続きは必要なく、現地を訪れるだけでイベントへ参加できた。

数多くの写真スポット

 つまり「Pokémon GO Fest Yokohama 2019」の参加にあたっては、これまでのPokémon GOのリアルイベントで用いられたようなQRコードの読み取りはなし。これは今年のシカゴ、ドルトムントでも同様だという。

 出現するポケモンも、イベント参加者だけに表示され、通常は南半球だけに出現する「ペラップ」というポケモンも登場した。その出現する場所も会場となる公園だけになるよう設定されていたという。

 トレードも、参加者同士であれば公園内で操作できるようになっていたが、参加者と非参加者は、公園の外でしかトレードできないという形だった。

 会場では、参加者だけに「スペシャルリサーチ」(ゲーム内のタスク)が表示され、ノルマをクリアすることで、特別なポケモン(ジラーチ)を入手できるようになっていた。

園内をぐるりと歩く形になるスペシャルリサーチ
こちらはAR写真を楽しむためのリサーチ
最後にはジラーチ

 今回のイベントは、「臨港パーク」「赤レンガパーク」「山下公園」の3カ所で実施されたが、ゲーム内容はどの公園でも同じで、渡り歩く必要はなかった。ひとりで現地を訪れた筆者も、会場のひとつである臨港パークでプレイしたが、スペシャルリサーチを進めて「ジラーチ」を入手できるまで、およそ2時間かかった。友人や家族で訪れていると、コミュニケーションしながらプレイするだろう。もう少し時間がかかった人が多かったかもしれない。

イベント用に出現していたピカチュウは頭に花の飾り
ペラップの姿も
アプリ起動時のイラストを描いたパネル

携帯各社の対策

 今回のイベント開催にあたり、Pokémon GOのスポンサーとなっているソフトバンクが現地での電波環境対策を行うと事前に発表。過去のイベントでの経験をもとに通信量のシミュレーションを済ませた上で実際に、3カ所の公園(「臨港パーク」「赤レンガパーク」「山下公園」)で1台ずつ移動基地局車を出動させた。周辺の基地局はMassive MIMOでネットワークの増強を進めていた。

 またソフトバンクWi-Fiスポットを臨港パークに5カ所、赤レンガパークに3カ所、山下公園に3カ所設置していた。

ソフトバンクの基地局車
公園入口のブースではPayPayをアピール
モバイルバッテリーなどを販売

 こうした対策はソフトバンクのみならず、NTTドコモ、auも実施した。

 NTTドコモは、臨港パークと赤レンガパークに移動基地局車(P-BTS)を各2台出動させたほか、移動基地局車の上に設置する形でWi-Fiアクセスポイントを設置。さらに公園内に別途、Wi-Fiアクセスポイントも4カ所用意した。山下公園には、移動基地局車はなかったものの、車両に乗せたWi-Fiアクセスポイントを4カ所用意した。さらに、イベント開催にあわせて、新規の基地局でのサービスをスタート。事前に現地調査を行った上で、周辺の基地局のエリアチューニングを行って、「万全な体制を整えた。おおむねプレイに問題はない環境だったと想定している」とドコモ広報。

 auは、臨港パークと赤煉瓦パークにトラックタイプの移動基地局車を各1台、山下公園には、現地で組み立てるタイプの可搬基地局1台を設置。設置スペースの都合から、可搬型となったが機能としては移動基地局車と同等。臨時の基地局を設置した後、現地で品質調査を行い品質の最適化のための調整を実施した。Wi-Fiアクセスポイントも3会場で計6カ所用意した。いずれも開催期間中、現地での品質状況のチェックは継続していた。

 参加者の声を全て確認することはできないが、ネット上で筆者が見る限り、通信環境において大きな混乱はなかったよう。参加者数がある程度絞られていたとはいえ、限られたスペースにかなりの人数が入る環境を考えると、各社の手厚い対策が功を奏したことは間違いないだろう。

参加者は15万人 課題は熱中症対策

 ナイアンティックによれば、運営サイドでは、Slackで連絡体制を構築。日々、さまざまな情報を共有していた。数人、体調を崩し、救急テントを訪れたとのことだが、そうした状況ひとつひとつが運営メンバー全員へ報告されていた。

臨港パーク入口周辺

 熱中症対策は、イベント運営で最も力が入れられた内容とのことで、日々、運営側が改善を図った部分。たとえば、ミストを発する機材(扇風機型であわせて霧状の水を噴射する機材)も、足りないと思われる場所へ増やしていった。同じく、飲料販売が少ないエリアにも、販売スペースを増やした。

ミスト装置

 臨港パークでは当初、みなとみらい駅に近く、パシフィコ横浜に隣接する広場に、大きなピカチュウ像を設置してユーザーを出迎える形にしていた。しかしイベント開始後、熱中症のリスクを減らすため、ピカチュウ像を撤去してテントを設置。日陰をより多く作るようにした。こうした甲斐もあってか、熱中症を含め、深刻な問題にいたったユーザーはいなかったと見られている。

 ナイアンティックによれば、正式なイベント参加者数は明らかにしていないとのことだが、取材時には、1公園あたり、平均で1日数千人程度の参加数だったと伝えられた。これが最大9999人だと仮定すれば、1日あたり約3万人、1週間で20万人程度が訪れることになるが、その後、15万人参加したと発表されている。200万人程度が訪れたとされる2年前の「ピカチュウ大量発生チュウ!」と比べても、かなり参加者数が絞られたことは明らか。

 ゲームに熱中する人にとっては、「Pokémon GO Fest Yokohama 2019」は、参加したくても参加できないという寂しさがある一方で、当選すれば当日、スムーズにプレイできるというメリットとデメリットの両方がある。交通もスムーズで、大きな混乱がなかったのは、今後、同様のイベントがあれば参加したくなるポイントと言える。

 あえて指摘すれば、真夏の炎天下での屋外というのはどうしても熱中症のリスクがつきまとう。同時開催のイベントとの兼ね合いや、クリアまでの所要時間とゲームバランスなどもついつい考えてしまうところだが、春の大型連休など、別の季節での展開があればユーザーとしては歓迎したい。スマートフォンとゲームで、人を外へいざなうナイアンティックの取り組みが、今度、どういった形でレベルアップしていくのか引き続き注目していきたい。