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法人のキャンペーンから個人間の贈り物へ――ギフティが描く「eGift」の未来
2019年6月21日 06:00
近年、多くの企業でスマートフォンを活用したギフトキャンペーンが行われている。具体的なモノとしては、ソフトバンクの「スーパーフライデー」などだ。読者の中にも利用した経験がある方が多いのではないだろうか。
それらは「eGift」と呼ばれることがある。日本における「eGift」の先駆者が東京に本社を置くギフティだ。実は「スーパーフライデー」にもギフティのシステムが使用されている。
20日、ギフティが企業向けのeGiftサービスとその展望についての発表会を開催した。
「eGift」とはなにか?
「eGift」とは、オンラインを介して贈られるギフト券のことを指す。メールやメッセージなどで受け取ったギフトチケットを実際の店舗でスマートフォンの画面に出して見せることにより、商品と引き換えられるというサービスだ。
ギフト券というとかつては紙の券やプラスチックカードが主流だったが、近年この「eGift」が伸びている。2014年には80億円ほどだったeGift市場は2018年には、1167億円となった。図書カードや、LINE GIFTなど企業の参入が市場規模の拡大に貢献したと考えられている。
eGiftでは、ギフトを送る側は商品引換のためのクーポン代わりとなるURLを生成する。これをメールやメッセージで相手へ贈る。贈られた側はユーザー登録など面倒な手続きは必要ない。URLにアクセスし、商品のクーポンを店員へ見せるだけで商品を受け取れる。
失くしてしまいそうな紙のチケットを持ち歩かず、企業側も印刷して配るコストを削減できるメリットがある。
日本において、eGiftの先駆者ともいうべき企業がギフティだ。ギフティは2010年に設立された企業で、当初は主に個人間の少額なギフトサービスの提供を目的に立ち上げられた。現在では、個人向けのみならず、企業に向けたギフトサービスも行っている。
「giftee for Business」――企業の販促に向けたサービス
「giftee for Business」は企業が個人に対してギフトを贈れるサービスだ。来店キャンペーンや集客、販促のために従来の紙のクーポン券を置き換えられる。
店を訪れる受け取り側は、個人間でのギフトと同じく複雑な手続きは必要ない。個人から贈られたときと同じように、URLへアクセスすればよく、ユーザー側がギフトチケットを使ってくれないという可能性は抑えられる。
URLはユニークURLであり、一つひとつが異なった文字列で生成される。店舗側のPOSシステムとgifteeのサーバーが連携しており、ギフトチケットが使用されたら即使用済みと記録される。gifteeではこれを「消し込み」と呼ぶ。
「消し込み」には、いくつかの種類がある。前述のPOS連携の他にも、電子スタンプを使用する方法や、ギフト自体を時限式とするものやコンビニであれば店舗の端末でも可能な場合がある。POSと外部のシステムを接続するのに抵抗感がある場合や、コスト的な問題がある場合はスタンプ式やその他の方法を選ぶことも可能だ。
現在、gifteeでは200種類以上のギフトから選択して贈れる。
TwitterやLINEでのキャンペーンに活用できる「giftee for Platform」
ギフティが企業へ向けて提供するのは、ギフトを贈るためのURLのみではない。顧客が独自のキャンペーンを行うためのプラットフォームの提供も行っている。
最近では、Twitterでリツイートでキャンペーンを行う企業が多い。しかし、これは企画する企業にとっては大きな負担となる。手動でツイートを抽選し、当選のDMをひとり一人へ向けて送信するためだ。この方法では非常にコストが嵩むのがネックだ。
そこで、「Twitterインスタントウィン」が開発された。これはgifteeで提供されているキャンペーン用のプラットフォームのひとつだ。これを使うと従来、事務局を設置して行っていた作業を自動化できる。
キャンペーンの参加条件(アカウントフォロー/リツイートなど)、どのギフトを商材とするのか、抽選確率を何%にするかを決定するとギフティから企業側にURLが送られる。キャンペーン参加者は、企業側が設定した参加条件を満たした状態でこのURLへアクセスすると、抽選への参加が完了する。当選した参加者にはギフトチケットが贈られ、実際に店舗に行くことで商品を受け取れる。
このプラットフォームは、Twitter以外にもLINEに対応しておりそのほか、URLへアクセスしただけでその場で抽選する「抽選eGift」や、来店プレゼントなどに使える「来店認証システム」などがある。
「eGift」がなぜ紙のギフトよりも優れているのか?
企業でのeGiftの利用が増加している原因としては、キャンペーンコストの削減が挙げられる。
従来であれば、粗品を贈る際に配送費や、キャンペーン事務局のコストが大きな負担となっていた。300円の粗品を贈るにしても、配送費、梱包材比、人件費、商品管理費などが大きく、最終的には700円ほどのコストになっていた。ところが、ギフティが提供するようなeGiftであれば、商品代金に加えてURLの発行手数料(商品代金の10%)で済むようになった。
加えて、プレゼントにかかる時間が大幅に削減されたことも大きい。従来のキャンペーン方式では、発送を以て当選通知というような方式が多く、応募者が忘れた頃に粗品が届くことも多かった。しかし、eGiftであれば、配送が不要なため応募から当選までが格段に短い。粗品が応募者に届くまでにかかるコストを削減できる上に、時間短縮も可能なのがeGiftだ。
さらに、コストの削減というポイントを活かして、当選者数を最大化できることもeGiftの魅力のひとつだ。たとえば予算20万円のキャンペーンがあるとしよう。従来であれば、単価を上げて、1万円を20名へプレゼントという施策が多かった。
1万円ならあたると大きいが、応募者からすると「20人にしか当たらないのなら、応募しても無駄かもしれない」と捉えられ、応募意欲が下がってしまっていたのが実情だ。しかし、配送費などが不要なeGiftであれば、少額なギフトを大量に用意できるため、例えば2000名にコーヒーをプレゼント、というように当選者数を飛躍的に増加させ、応募意欲を上げさせることが可能となる。
当選者数を増やし、参加意欲を向上させることで、参加者数も最大化させられるため、販促や集客キャンペーンとしても非常に効果が高い。
企業での普及がコンシューマーの普及につながる
「企業から個人へ」という点において、eGiftは確かに成長を見せている。その一方で「個人から個人へ」という文化の普及はもう少しだけ先の未来になるかもしれない。ギフティ代表取締役社長の太田氏は次のように語る。
「当初、我々は個人間のささやかなギフトのためにという目標でビジネスをしておりました。しかし、実際にやってみて分かったのですが、まずはギフト自体の種類が増えないことには個人のユーザーは増えないんです」
確かに、使えるお店が少ないのではユーザーも躊躇してしまうかもしれない。まずは少しでも多くの企業に活用してもらうことが今後の日本でのeGiftの普及にかかっていると言えそうだ。日本よりもeGiftが普及している韓国では、その要因のひとつとして企業からもらったようなギフトを個人間でも贈れる、という体験の上に成り立っているという例があるという。
太田氏は「個人間でギフトを贈る文化の醸成にはまず、企業に参加してもらうことが一番だと考えたんです。まずは、企業様に向けたビジネスにフォーカスし、それから個人のユーザーについてもシフトしたい」と今後への意気込みを見せた。