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ドコモ2018年度上期の決算は増収増益、通年の業績予想も上方修正

回線から「会員」に舵を切る中期経営戦略も解説

 NTTドコモは、2018年度上期(4~9月)の決算を発表した。増収増益で、通年の業績予想も上方修正した。今後複数年では、災害対策で追加投資を行うほか、5G関連投資も積み増す。株主還元施策として保有する全ての自己株式を消却する方針も明らかにした。

NTTドコモ 代表取締役社長の吉澤和弘氏

 NTTドコモの2018年度上期の営業収益は、前年同期比4.1%増の2兆3895億円、営業利益は9.0%増の6105億円、株主に帰属する四半期利益は3.8%増の4071億円だった。フリーキャッシュフローは4.2%減の3747億円。EBITDAは4.5%増の8548億円、設備投資は4.5%減の2554億円で、EBITDAから設備投資を引いた営業フリーキャッシュフローは8.9%増の5994億円になった。

 dポイントクラブ会員数は前年同期比7%増の6763万会員になった。

 セグメント別の「通信事業」「スマートライフ領域」でも、いずれも増収増益だった。通信事業では、携帯電話契約数は微増、解約率は微減を続けている。ドコモ光の契約数は大きく伸びており、28%増の533万契約になった。金融・決済などを含む「スマートライフ領域」でも各事業は順調に伸び、他企業と“協創”していく「+d」パートナー数も拡大した。

追加投資

 5Gについては、2019年のプレサービス開始に向けて取り組みを加速しており、100億円の追加投資を2018年度に予定する。

 また災害対策では、台風21号や北海道胆振東部地震での対応状況を振り返った上で、今後2年間で200億円規模の災害対策を追加実施することを明らかにした。

 この災害対策の追加実施では、ドコモショップに蓄電池や太陽光発電システムを設置して、停電時でも無料で充電サービスを提供できるようにしたり、可搬衛星設備など非常用基地局を増配備したりする対策が含まれる。

 通年の業績予想については、営業収益で700億円増、設備投資で200億円増(営業フリーキャッシュフローの減少)を見込むことから、500億円増収の上方修正を行っている。

回線から「会員」を軸に、中期経営戦略

 決算の説明の後には、今後の中期経営戦略についても解説された。

 中期経営戦略の基本方針は「会員を軸とした事業運営への変革」「5Gの導入とビジネス創出」の2つを掲げる。

 dポイントクラブなどで拡大する「会員」の基盤は、2021年度に7800万会員が目標で、将来的には1億会員を目指す。また「+d」などで推進するパートナー企業は現在の1800社から2021年度に5000社が目標。

 こうした多数の会員基盤と、ショップやAI、サービスといったドコモの資産、パートナーを組み合わせてビジネスモデルを発展させていく方針で、デジタルマーケティングなどデータを活用するビジネスを拡大していく。

 金融・決済事業も注力し、決済・ポイント利用可能箇所は、現在の約90万カ所から2021年度目標で200万カ所へと拡大させる。金融・決済取扱高は現在の約3.2兆円から2021年度目標で6兆円にまで拡大を見込む。

 5Gについては、インフラ構築などで2019~2023年度の累計で1兆円の投資を行う方針。必要とされる場所に着実にエリアを構築するとし、すでにアナウンスされているように2019年9月以降にプレサービスを、2020年春に商用サービスを開始する予定。

 なお、5Gサービスの開始に関連して、3Gサービスを2020年代の半ばに終了する方針であることも明らかにされた(別記事にて掲載)。

 またユーザー還元策についても、2019年度第1四半期に、「2~4割程度値下げする」という新たな料金プランを発表・提供開始する方針で、この結果として4000億円程度の還元になることを明らかにしている(別記事にて掲載)。

 ユーザー向けの施策ではまた、ドコモショップの待ち時間や応対時間の短縮を図っていく施策についても具体策を明らかにした。待ち時間と、説明・手続きなどの時間を短縮し、初期設定・データ移行については希望者のみサポートする形で、現在は平均で2時間超になっている時間を、2019年度中に、半分にまで短縮を図る。

 具体的には、来店予約の拡大、説明方法の見直し、初期設定・データ移行の専門スタッフの配置、スマホ教室の開催などの取り組みを実施・拡大していく。

 料金の値下げを含むユーザー還元策の拡大は減益の要因だが、金融・決済といったスマートライフ領域や法人ビジネス、5Gの成長により、2023年度には、2017年度水準である営業利益9900億円に回復させることを見込む。

 吉澤社長は、通信料収入が中心の事業運営から、dポイントなどの会員基盤を軸とした事業運営に舵を切ると、改めて表明している。