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「ドコモのほうがお得だと打ち出したかった」~DAZNラシュトンCEO、ドコモ吉澤社長の囲み取材一問一答
2017年2月8日 20:46
NTTドコモとPerform Groupは、スポーツに特化したストリーミング配信サービス「DAZN for docomo」を2月15日より提供する。説明を行ったNTTドコモの吉澤和弘社長と、DAZNのジェームズ・ラシュトンCEOが会見後、それぞれ個別に囲み取材に応じた。主なやり取りを紹介する。
DAZNラシュトンCEO
――ドコモとの契約は独占的なものか?
ラシュトン氏
ドコモさんとのパートナーシップは、独占的な関係だ。
――それはモバイルオペレーターとしてか?
ラシュトン氏
そうだ。日本での携帯電話事業者としてNTTドコモと独占的な契約になる。それ以外の分野については独占ではない。
――日本は独特なマーケットだと思うが、期待通りに成長する要因は?
ラシュトン氏
ひとつは事前の調査がうまくいったということではないか。我々は投資をしっかり行う。5年~7年かけてビジネスを興すという長期的な視点で取り組んでいる。その中でJリーグとのパートナーシップなどの展開などを予定している。
――日本で配信されるコンテンツは全て日本語に対応しているのか。
ラシュトン氏
年間6000試合以上に配信する予定だが、そのほとんどが日本語に対応する。東京・大門にある我々のオフィスでプロダクションブースを設けて、日本語の実況解説を付けている。ただスポーツによっては、現地の言葉のままのほうがより伝わることもあるので、たとえば米国のスポーツなどはそのまま配信する。
――DAZNが昨年、日本でサービスを開始したあとアプリのレビューを見ると、途中で途切れたといった評価がある。ドコモユーザーが大量に加入した場合でも配信環境は改善されるのか。
ラシュトン氏
我々は全てのビジネスで改善の余地がある。ドコモさんと協力して改善していくものもあるだろう。全ての視聴のうち88%がフルHD。そしていくつかのデバイスで問題があることを確認している。それがデバイス側だったり、我々の開発だったり要因はさまざまだが今後、早急に改善していく。
――980円という値付けは、海外と比べて平均的なものか。
ラシュトン氏
980円が平均的なものかどうかは日本円のパフォーマンスによるところもあるが、それぞれのマーケットにあった料金を提供している。もともとの1750円という値付けも、内容からすると魅力的なものだと思っている。世界的に見ると9.99ドル~15ドル程度が一般的で、980円は安いほうかもしれない。DAZNが展開する、スイスやドイツ、オーストリアでは9.99ユーロ(約1200円)だ。
――2020年には日本で東京オリンピック・パラリンピックがある。日本市場でもスポーツの振興に貢献できるか。
ラシュトン氏
DAZNは、ドイツ、スイス、オーストリア、そして日本で半年前にローンチしたばかり。「ここが貢献できている」と言うのはまだ時期尚早ではないか。ただ、放映権料を支払うことは、Jリーグ各クラブの収益となるし、トップリーグだけではなく、そのスポーツの分野に貢献できていると思う。DAZNとして今後も投資を続ける予定で配信するスポーツの種類を増やしていく。その中には、野球のような人気スポーツもあれば、オリンピックでしか見られないスポーツも含まれる。2020年に向けて、人気スポーツだけではなく他のスポーツも、というところで貢献していきたい。
――ドコモとの協力では、コンテンツ配信など技術的な部分も含まれるのか。
ラシュトン氏
2016年7月に発表した通り、我々はドコモさんだけではなくNTTグループと幅広く共同で事業を行っている。テクニカルな骨組み作りやスタジアムのICT化などが含まれます。ご指摘の部分はドコモさんというよりNTTグループが含まれる形になる。
――「DAZN for docomo」とスタンダードな「DAZN」のプランではそれなりの価格差がある。ドコモ版への乗り換えによる減収は織り込み済なのか、あるいはDAZNのスタンダードプランの価格改定やサービスの改定があるのか。
ラシュトン氏
ドコモさんとの交渉でバランスをとる必要があったのが料金の設定だ。両社にとってプラスであるべき料金設定になった。「DAZN for docomo」とスタンダードな「DAZN」はどちらも今後提供していく。ドコモユーザーが乗り換えることは望んでいることであり、当然生じること。一方、スタンダードな「DAZN」の1750円という価格が魅力的なものだという考えに変わりはない。ドコモ版の登場によってスタンダードプランの価格改定の予定はない。
――ドコモ版の価格(980円)の(スタンダード版の1750円と比べた場合の)値引きの原資はどちらが負担しているのか。
ラシュトン氏
センシティブで具体的には答えられませんが(笑)、数カ月にわたって交渉する中で、両社にとって良いものになるようにしてきた。リスクはあるがベネフィットもあるということでこの料金になった。
――日本の動画配信では、NetflixやHuluなど他社のサービスがうまくいっていないように見える中で、DAZNがうまくいっていると評価できる状況なのはなぜか。
ラシュトン氏
他社のサービスについてはコメントできないが、彼らはスポーツビジネスではないということは言える。我々はJリーグとの10年間の契約を締結したが、これまでCSなどで放送されていたものと同じようなポジションを目指しており、10万単位ではなく100万単位の契約を目指している。ただ、その目標は今日明日の話ではなく、長期的なビジョンとして掲げている。
ドコモ吉澤社長
――(学生時代にサッカーをプレイしていた)吉澤社長もサッカーファンだと思うが、スカパー!からDAZNへJリーグの配信が変わることについて感想は。
吉澤氏
衛星放送から変化といっても、今回もテレビを選択できる。それはスマートテレビやSTB、Chromecastなどで実現しているもの。ショップでそういったものを準備できないか検討を進めている。テレビでの視聴も当然できるように考えている。
――ソフトバンクがさっそく対抗策を発表したようだ。
吉澤氏
機能面が変わってグレードアップするということだと思うが、まだ詳細を見ていないのでわからない。こういったサービスは始まって間もない。980円といった値付けから始まるのはいいのかもしれないが、ちょっと(ソフトバンクの対抗策をあらためて)見てみたい。
――これまでキャリアフリーの「dTV」は、ドコモユーザーでも他社ユーザーでも同じ料金だったが、「DAZN for docomo」はドコモユーザーかどうかで料金が異なる。
吉澤氏
ドコモのネットワークで利用していただきたいということで、これはドコモのほうがお得ですよということを打ち出したかった。
――モバイルでの利用はどの程度になると想定しているのか。
吉澤氏
100万件を早急に目指したいが、それがどれくらいまで行くのかまだ何とも言えない。最大6デバイスまで利用でき、どこでも観られるということで、モバイルは基本として考えたい。
――大容量プランのウルトラパックの利用が増えたりするといった考えか?
吉澤氏
そうなるかどうかシミュレーションしきれているわけではないが、プラン変更する人も増えてくるのかなと思う。
――7日に高市早苗総務大臣が「一定の施策を理解しつつもまだ改善の余地がある」とコメントしている。
吉澤氏
そうは言っても、データそのものをたくさん使っていただくと料金が上がるのは、ロジックとしてそうせざるを得ない。ただ、何でお客さま還元をするのか。料金だけではない。幅広く考えて行きたい。
――サービスが向上する以上、料金が下がる余地はないのは仕方ないということか。
吉澤氏
新しい通信方式などを入れながらパケット単価を下げていくことはやっていかなきゃいけないが、今のLTEですぐにパケット通信量が増加しても料金が上がらない、と言うふうにはならない。
――ソフトバンクは、スポナビライブで通信料を無料にするゼロレーティングをキャンペーンで実施していた。ドコモとしてゼロレーティングを導入する考えは?
吉澤氏
いや、それは今のところそれはないかなと思っている。そうしたキャンペーンなどが必要であれば、ということだろうが、今は考えていない。
――利用料980円をドコモとPerform社でどういった比率で分け合うのか。
吉澤氏
シェアはするが、それはビジネス上の条件であり、お答えできません(苦笑いしつつ)。
――DAZNとの交渉は、DAZNの日本でのサービス開始前から始めていたのか。
吉澤氏
最初からドコモがパートナーに決まっていたわけではありません。
ドコモ担当者
我々のほうに「一緒に何かできないか」と打診を受けたのは1年ほど前。
――ドコモからDAZNに対して、配信コンテンツのリクエストなどはできるのか。今の段階で何か追加したいものはあるか。
吉澤氏
相談することはできます。スポーツの種類は網羅されていると思っていて、今の段階で申し上げられるものはない。
――「DAZN for docomo」と「DAZN」の価格差は、ドコモが全て負担するということか。
吉澤氏
私どものサービスですので、料金面では我々が負担すると考えていただいていい。
――それはDAZNの1750円と、ドコモ版の980円の差額(770円)をドコモがDAZNに支払っているという意味か?
吉澤氏
そうではない。1750円はDAZNさんのサービスの値付け。ドコモの回線なしでもその料金になる。
――「DAZN for docomo」1契約あたり、DAZN側には1750円の収入になるのか、980円になるのか。ドコモ側が負担してDAZN側は損しないというロジックなのか。
吉澤氏
DAZNはDAZNのサービス、「DAZN for docomo」は私どもが提供する。あくまで980円をレベニューシェアをするということ。差額に対して何かするというわけではない。
――dマガジンなどはMVNOが販売するケースもあるが「DAZN for docomo」はどうか。
吉澤氏
今の段階ではない。先方からの要望などもあるだろう。
――「dマガジン」「dTV」のように“d”が付くサービスとの位置づけの違いは?
吉澤氏
「DAZN」というブランドがスポーツ業界においてポジションが高く、そのブランドを使おうと、両社協議の結果、決めた。
――dTVを超えるほどのポテンシャルがあると考えているのか。
吉澤氏
dTVは450万契約程度だが、NetflixやHuluなどのサービスもあり、ある程度のところで落ち着くと思っている。今回、スポーツのライブ中継というサービスはドコモとしてまったくやっていなかった。そこに関心を持っていただいて手軽に使えるということで、100万件はぜひ達成したい。どこまでいくかわからないができるだけ近づけたい。