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ドコモ、2017年3月に500Mbps超を70都市で

iPhone 7は1.5GHz帯対応に

 NTTドコモは、2017年3月より、500Mbpsを超える通信速度を実現したサービスを、東名阪など全国70都市(約1100局)で提供する。新技術として256QAM、4×4 MIMOといった仕組みを採り入れる。

 また9月16日に発売されるiPhone 7/7 Plusはドコモの1.5GHz帯に対応しており、通信速度は従来のiPhoneと変わらないものの、これまでより安定した通信品質で利用できるようになる見込み。

9月に337.5Mbpsエリアが拡大、実効速度もアップ

 NTTドコモでは、LTE-Advanced方式のサービスを「PREMIUM 4G」と呼び、2016年5月からは下り最大375Mbpsのサービスと、同年6月からは下り最大370Mbpsのサービスを提供している。2つの通信速度が存在するのは、異なる周波数が利用するためだが、そこで使う技術は3つの周波数を束ねるキャリアアグリゲーション(3CC)だ。

 PREMIUM 4G対応エリアは2015年第1四半期時点では302都市だったが、その1年後には1203都市にまで拡大。そのうち798都市で、300Mbpsを超える速度を実現している。

 キャリアアグリゲーションによる通信速度の向上は、ドコモの計測によれば、平均して約3倍(東京山手線の場合)にまで拡大。場所によって効果の出方は異なるが、ユーザーにとって実感しやすい結果を残している。

来春に500Mbps超へ

 ドコモが新たに採り入れる「256QAM」とは、一度に運ぶ情報量を増やす技術。道路にたとえると、「トラック1台に積める荷物の量が増えた」(NTTドコモ ネットワーク部長の三木睦丸氏)ようなもの。これまでは64QAMで、一度に6ビットの情報だったが、256QAMでは8ビットに増え、通信速度が1.33倍になる。FDD方式(周波数分割型)のLTEサービスに導入され、これまで375Mbpsだった速度が、最大500Mbpsになる。

 また3.5GHz帯を使ったTDD方式(時分割)とFDD方式を組み合わせるLTEサービスでは、「4×4 MIMO」という技術が採り入れられる。これはデータをやり取りするアンテナの数を増やすことで高速化をはかるもの。これまで370Mbpsだったところ、4×4 MIMOにより512Mbpsになる。

 こちらも道路でたとえた三木氏は「これまでの2×2 MIMOが2階建ての道路だったとすれば、4×4で4階建てになった」と語り、効果が2倍になると説明する。電波環境が良ければ、4つのアンテナで4つのデータを同時に送信して、高速に通信できる。アンテナから離れた端末では、4つのアンテナで1つのデータを合成して送るため、エラーが起きにくく速度はそこそこながら繋がりやすく感じるという効果がある。

 たとえば4Kサイズの動画(5分間、2GB)をダウンロードする場合、下り最大150Mbpsのエリアでは115秒かかるが、512Mbpsのエリアでは34秒で済む。

 256QAM、4×4 MIMOへの切り替えはソフトウェア更新により一斉に行われる。このため、設備投資という側面でも、影響は少ないという。

サービスエリア拡充の鍵は「高度化C-RAN」

 500Mbps超のエリアは、主に都心部の駅前など、通信量(トラフィック)が多いエリアを中心に整備される見込み。当初は全国1100の基地局、70の都市での一斉展開とされているが、そのなかでも東名阪でのエリアが充実することになりそうだ。

 こうした一斉展開、そしてトラフィックが多い場所へスピーディに新方式を導入できる背景には、ドコモがかねてより導入している「高度化C-RAN」の存在が大きい。

 「高度化C-RAN」は、2015年春にドコモがLTE-Advanced方式を導入した際、あわせて組み込まれたネットワークアーキテクチャーのこと。C-RAN(Centralized-Radio Access Network、中央制御型の無線アクセス技術)を発展させた技術だ。広いエリアをカバーする“マクロセル基地局”のエリア内に、ごく狭い範囲のサービスエリアとなる“スモールセル基地局”を設置する。これらの基地局を中央で集中制御して、基地局から発射される電波をキャリアアグリゲーションで束ねて、高速かつ安定した通信品質にする。

 つまり多くのユーザーが集まり、トラフィックが集中するスポット周辺を、ピンポイントで強化しやすい技術と言える。

iPhone 7には、より高品質な通信を

 新型のiPhone 7/7 Plusは500Mbps超には対応せず、下り最大375Mbpsとなる。これまでの2GHz帯、1.7GHz帯、800MHz帯に加え、1.5GHz帯に対応したことで、従来よりも繋がりやすさが向上し、より安定した通信が利用できるようになるという。

 NTTドコモネットワーク部長の三木睦丸氏は、「iPhone 7のスペックを活かせるドコモの通信を楽しんでほしい」とアピール。500Mbpsには対応しないが、1.5GHz帯に対応しており、全国で快適に使えることなどをあらためて伝えたいと意気込む。

対応機種は今後、引き続き1Gbps目指す

 今回発表された256QAM、4×4 MIMOの技術は、それぞれ異なる周波数帯で導入される。もし256QAM、4×4 MIMOを組み合わせて利用できるようになれば600Mbpsを超える通信速度が実現できる見通しだという。さらに今後も技術開発を進めて、2020年になる前に1Gbpsの達成を目指す。

 対応機種は今後登場するとのことで、既存端末では500Mbps超のサービスは利用できない。なお、500Mbpsのサービスに対応する機種がスマートフォンなのかどうか、あるいはいつごろ発売されるのか、といった点については今回明らかにされなかった。

ドコモの三木氏

 ドコモの発表に先立ち、ソフトバンクが数多くのアンテナを使う「Massive MIMO(マッシブマイモ)」技術の導入を宣言している。これに対してドコモの三木氏は「他社のことは申し上げにくい」と、ソフトバンク側の施策への評価を口にすることはなかったが、自社の取り組みについては「弊社内でもさまざまなことを考えているが、LTE-Advancedの標準化されていく技術を高度化していく。容量拡大という面では、(高度化C-RANで展開しやすい)スモールセルが非常に有効」と自信を見せた。