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Windows 10 Mobileスマホ「HP Elite x3」9月5日発売、auは法人向けに

 日本HPは、Windows 10 Mobile搭載のスマートフォン「HP Elite x3」を9月5日に発売する。Continuumに対応し6インチディスプレイを備える機種で、価格は7万7800円(税抜)。直販サイトでは法人だけではなく個人でも購入できる。

 KDDIでは、同日より法人向けのスマートフォンとして「HP Elite x3」を取り扱う。Windows 10 Mobile搭載スマートフォンとして初めてVoLTEによる高音質通話に対応し、キャリアアグリゲーションやWiMAX 2+にも対応する。

 5.96インチ、2560×1400ドットのWQHDアクティブマトリックス型ディスプレイや1600万画素カメラ(フロントは800万画素)を装備する。4GBのメモリ、64GBのストレージを搭載しており、チップセットは、クアルコム製のSnapdragon 820(MSM8996)になる。また防水防塵にも対応する。

有線でのContinuum

 ハイエンドなスペックに仕上げられており、特徴のひとつは有線接続でのContinuum(コンティニュアム)だ。Continuumは、Windows 10で導入された機能で、たとえばスマートフォンに大型ディスプレイとキーボード、マウスを繋げれば、画面表示はパソコンのような形に切り替わって操作しやすくなる。スマートフォン1台でパソコンの役割も果たせることから、Windows 10 Mobileの目玉機能として扱われることも多いが、これまで日本で発売されたWindowsスマートフォンの多くはワイヤレス接続でContinuumを利用する形だった。

ノートドッグ
ノートドッグを手にする米HPのキース・ハーツフィールド氏

 有線での接続が高パフォーマンスをもたらすとのことで、31日の発表会会場で展示された「Elite x3」で有線接続のContinuumで、OneNoteなど一部のアプリを操作してみた。ごく短い時間の体験で、テキストを軽く入力し、Webブラウジングする、と限られたものだが、その際レスポンスの遅れを感じることはなく、ストレスなく利用できる印象を受けた。

 Continuum向けの周辺機器として、12.5インチのFHDディスプレイやキーボードを備え、一見するとノートパソコンのような「ノートドッグ」、有線LANなどのインターフェイスを備え大型モニターとの接続が想定されている「デスクドック」が用意される。

デスクドックに装着したところ
背面に各種インターフェイス

SIMフリー、auネットワークの相互接続性テストをクリア

 「HP Elite x3」は、nanoSIMカードスロットを1つ備え、FD-LTEの対応バンドはB1、3、5、7、8、19、20、26、28、TDDはB38、39、40、41となる。

 SIMロックフリーながらKDDIの法人営業部門でも取り扱われることもあって、auネットワークでの相互接続性テストを実施済。また大きな特徴として、Windows 10 Mobileスマートフォンとして、初めてauのVoLTE(LTEネットワークでの高品質音声通話)をサポート。これは、HPとKDDIのみならず、チップセットを提供するクアルコム、OSを提供するマイクロソフトが協力して開発したことで実現したもの。これまでのWindows 10 Mobileでは、VoLTE向けのユーザーインターフェイスが正式に実装されておらず、たとえばVoLTE通話中のSMS着信など、モデムチップでの挙動をOS側で正しく処理できるようになった。

 TD-LTE対応とあって、TD-LTEと互換性のあるWiMAX 2+を使った高速通信ができることも特徴の1つとなっている。

Windows同等のデバイス管理をアピール

 HP米国本社パーソナルシステムズ モビリティ・プロダクト・マネージメント バイスプレジデントのキース・ハーツフィールド氏や、日本HP執行役員 パーソナルシステムズ事業本部長兼サービス・ソリューション事業本部長の九嶋俊一氏は、「Elite x3」の特徴として、有線でのContinuum対応による生産性向上やコストパフォーマンスのほか、セキュリティ面のメリットを挙げる。

 企業にとって、スタッフが利用するデバイスは利便性の向上だけではなく、その中で扱われる情報が漏洩しないようにする仕組みもまた重要だ。企業のITシステム管理者が気にかけるデバイスは、スマートフォンやノートパソコン、タブレットと多岐にわたるなかで、パソコンライクにも使えることをうたう「Elite x3」であれば、さまざまなデバイスを使うことなく1台に集約でき、管理すべき端末数を削減できる。またWindowsパソコンを導入する企業が多いなかで、社内システムで導入済の端末管理ポリシーもWindows 10 Mobileであれば導入しやすいとアピール。

 コピー&ペーストやスクリーンショット、ローカル印刷などを防ぐ仕組みもあり、生体認証のデファクトスタンダードとされるFIDO規格にWindows 10 Mobileが対応しつつ、Elite x3でも指紋認証センサーを搭載していることから、機密情報や個人情報の安全性を担保できる、と九嶋氏は胸を張る。

KDDIの強み

 「KDDIが法人向けにWindowsを売るのは初めて。前のWindows 7のときにはちょっと失敗したが、法人向けに売っていなかった。ユーザーの反応を見たい」と語るのは、KDDI取締役執行役員常務ソリューション事業本部長の東海林崇氏。

 端末発表会に登壇するのは初めて、それだけKDDIが気合を入れていると思って欲しい、とする東海林氏は、au側としてもネットワーク側もElite x3にあわせて、音声通話、データ通信ともにチューニングを行っており、高い品質を実現していると説明する。

 内線電話などの機能を統合したユニファイドコミュニケーションのソリューションを提供するKDDIとしては、Elite x3とKDDIのソリューションによって、PBXが不要になり、企業内のシステムとの親和性からスタッフに持たせるデバイス数もWindows 10 Mobileでは削減できるとしており、「KDDIのソリューションであるSkype for Businessを導入し、マイラインの契約を止めるなど、大胆に既存の仕組みと全て入れ替えれば(内線電話やスタッフ用携帯電話にかかるコストが)3割削減できるのではないか。PBXなどのシステムを一新するとなれば導入企業としても気合がいるでしょう。でもElite x3であれば(社内の業務アプリ、イントラ、システムなどと)親和性が高く踏ん切りを付けやすいのではないか。そういうソリューションを提供できるのは僕らだけ」と東海林氏は、Windows 10 Mobileへの期待感と、同社の提供するソリューションへの自信を示した。

左から米マイクロソフト プリンシパルグループプログラムマネージャー テレコムエコシステム担当のピート・バーナード氏、日本HP代表取締役 社長執行役員の岡隆史氏、HPのハーツフィールド氏、KDDIの東海林氏