パナソニック夏モデルインタビュー

スマートフォン初号機やLUMIX Phoneなど多彩なラインナップ


 パナソニック モバイルコミュニケーションズ製の2011年夏モデルでは、同社初のAndroidスマートフォン「P-07C」「003P」のほか、2代目LUMIX Phone「P-05C」、防水対応でスワロフスキークリスタルがあしらわれた「P-04C」、12色のカラーバリエーションを揃えた「P-06C」がラインナップに並ぶ。

 スマートフォンの「P-07C」はNTTドコモ、「Sweety 003P」はソフトバンクモバイルの新機種で、ほぼ同等のスペックを備える。その他の機種はいわゆるフィーチャーフォン(従来型の携帯電話)で、それぞれの特徴や工夫について担当者に聞いた。

 

パナソニック初のスマートフォン「P-07C」「003P」

――マイ・ファースト・スマートフォンというコンセプトを掲げた「P-07C」「003P」ですが、開発当初のいきさつから教えてください。

池田大祐氏(商品企画担当)
 企画がスタートしたのは昨年2月頃、ドコモさんのスマートフォンではXperiaが発表されたころです。今でこそ、スマートフォンへの移行が大幅に進んでいますが、当時はフィーチャーフォン(従来型携帯電話)がまだまだ中心で、当時は世間一般におけるAndroidの認知度は低く、iPhoneだけの知名度が高い、といった状況でした。これだけですと、スマートフォンへの流れは見えていないと思えますが、マーケティング調査を行ってみると、iPhoneに対する20代女性の関心が急激に伸びており、その後のスマートフォンへの潮流は明らかでした。現在の状況も予測の範囲内で、だからこそ、女性ユーザーに向けたスマートフォン開発を目指しました。

P-07CSweety 003P

――“女性向け”とは、具体的にどんなことなのでしょう。

左から池田氏、日高氏、辻本氏

池田氏
 性別に関わらず、多くのユーザーが求めるのはディスプレイ、デザイン、バッテリーの3点です。男性ユーザーであれば、CPUクロックやHDMI対応の有無など、スペックにこだわることが多いでしょう。一方で女性ユーザーは、かわいらしい色合い、手で持った時の持ちやすさなど、感性的な価値を重視する傾向があります。これまでのスマートフォンは、四角いボディのものが多かったので、今回は、あえて丸みを持たせて持ちやすさを追求しました。側面も2色のカラーラインがありますが、これまでにないイメージを演出するためです。

――端末の持ちやすさ、といったところでフィーチャーフォンでは幅50mmが最適とされてきました。横幅はディスプレイサイズとも大きく関連するところですが……。

池田氏
 今回は4.3インチディスプレイですが、ディスプレイサイズのほかに画角もいろいろと選択肢があります。今回、このサイズにしたのは、調査の結果、ユーザーニーズで「スマートフォンならパソコン向けサイトを見たい」という点が根強かったためです。パソコンを所有し、自宅にいるときでもパソコンの電源を入れるのは面倒で、スマートフォンを利用したいというニーズが高いのです。しかし、やっぱり片手で操作しやすくする、といったところで、「フィットキー」でキーサイズや位置を変更できるようにして、タッチスピードセレクターも左右どちらの手でも操作できるようにしました。開発中は、コンセプトとして「大画面ワンハンド」を大きく掲げていましたね。

――確かに特徴的なユーザーインターフェイスですが、これはAndroidをカスタマイズしたのでしょうか。

池田氏
 いえ、開発時、一番最初に「Androidをいじってはダメ」という点を守ることにしました。これは今後のバージョンアップへの対応を考えてのことです。今回の工夫は全てアプリで実現したもので、カスタマイズしない分、自由度は下がってしまいます。また、たとえばフィーチャーフォンと比べると電話帳にプライバシーモードがない、といった点があります。しかしAndroidのカスタマイズは、将来のバージョンアップのこと、そして端末コストへの影響も踏まえて、見送りました。

タッチスピードセレクター

日高淳氏(ソフトウェア担当)
 「タッチスピードセレクター」は、片手操作を重視して開発したものです。左右どちらの手でもくるくると操作できるようにして、快適に操作できるよう、回転速度のチューニングにはかなり注力しました。

池田氏
 「タッチスピードセレクター」は、これまでフィーチャーフォンで提供してきた「スピードセレクター」が女性に好評だった、という点も採用の大きなポイントです。ただ、ハードウェアキーで端末の中心に配置されていた従来の「スピードセレクター」をそのままソフトキーにしても快適になるとは限りませんので、今回は円の一部が表示されるようにしました。また、Androidのユーザーインターフェイスは、ホーム画面で左右に移動し、通知バーを引き下ろして確認し、アプリ一覧は縦にスクロールします。「これじゃ(複雑すぎて、ターゲット層の)女性にはわからない」と思い、今回は、より簡潔なユーザーインターフェイスを追求し、タッチスピードセレクターは横スクロールのホームアプリにしました。もちろんアプリ一覧もありますが、これも横スクロールで、さらに「ダウンロード」などのタブも設け、アイコンを長押しすれば、各タブに分類できるようにしました。

――フィットキーも特徴的なインターフェイスです。

池田氏
 これも「大画面ワンハンド」に基づくアプリです。また、女性の「デコりたい(装飾したい)」という欲求に応えたかったので、「フィットキー」「壁紙デコ」で画面内のデコを楽しめるようにしました。リアル感を追求して、キートップの上に重なるよう装飾すると、キートップが見えない形にデコれるようになっています。これも議論したところですが、調査してみると「キートップの文字が見えなくてもいい」という声が強かったのです。

――「FuturePlus」「エコナビ」についても教えてください。

池田氏
 開発途上、Twitterの盛り上がりが話題になっていましたが、その流れのなかで、スマートフォンのユーザーインターフェイスにもさまざまな工夫が出てきました。たとえば、ソニー・エリクソンさんの「Xperia」で採用された「Timescape(タイムスケープ)」はその例の1つでしょう。開発中、「大画面ワンハンド」をコンセプトにしていたと先述しましたが、そのためにはユーザーインターフェイスの工夫が必要で、その1つとして「FuturePlus」を開発したことになります。

 SNSの情報や天気、占いなどの情報を表示する「FuturePlus」ですが、これは女性ユーザーの一日の動向を調査した結果、この形に仕上がりました。起床して出社し、昼休みにSNSをチェックしたり退勤後に行く店を調べたりするといった生活リズムの上で、携帯電話のGPSなどを活用して場所と時間帯を反映した情報を提供できれば、考えたわけです。未来を予測する、といったネーミングのアプリですが、予測というよりも先回りと言うべき機能です。ただ、こうした機能も使っていただかなければ、ということでアバター要素を入れて、デコレーションできるようにして、長く楽しめるようにしました。隠しキャラや隠しデコ素材もあって、たとえば隠しキャラでは「魔法使いのうさぎ」などがいるのです。

位置情報も活用する「FuturePlus」「エコナビ」でアプリの消費電力を確認できる

 一方の「エコナビ」は、“画面が真っ暗でも、電池を消費するアプリがこれだけある”ということが開発中、よくわかりましたので、そこをスマートに見つけて可視化する機能を実現させることにしました。CPU処理への対策となるタスクキラーアプリとは違い、消費電力という観点のアプリです。使ってみると、アプリごとに電力消費レベルがわかるようになっています。このあたりは他社さんもまだ実現できていないと思います。

左から笹尾氏、高野氏(営業担当)、白井氏
「ちきゅおのアプリ」

白井慶太氏(コンテンツ担当)
 コンテンツ関連では、パナソニックユーザー向けのスマートフォンサイト「Psmart(ピースマート)」を開設しました。これまでフィーチャーフォン向けにもメーカーサイトを運営しており、コンテンツ配信も大きな特徴の1つですが、「Psmart」はスマートフォンに初めて触るユーザーに向け、ガイドを掲載するといった工夫を凝らしています。

笹尾美和子氏(アプリ制作のスペースポート社)
 「Psmart」で配信されるアプリ「ちきゅおのアプリ」は、地球を赤ちゃんに見立てて、エコ関連の知識を分かりやすく理解できます。ディレクションは、ゲーム「塊魂」の高橋慶太氏が担当しており、独特の世界観で、環境や気象などについて、学べるようになっています。

辻本賢司氏(プロジェクトサブマネージャー)
 各コンテンツを含め、当社の力を集結した一号機で、女性ユーザーの使い勝手を追求しました。これまでのフィーチャーフォンの開発と比べると、Androidというプラットフォームには制限があり、どこで差別化するか、苦労しました。特に、開発のスピード感は、スマートフォン時代に向けて非常に意識した部分です。

――なるほど。ありがとうございました。

 

2代目LUMIX Phone、防水対応のスワロフスキーケータイ、12色展開

LUMIX Phone P-05C

――フィーチャーフォンのラインナップについても教えてください。「P-05C」はLUMIX Phoneの後継モデルですね。

石原 崇氏(カメラ技術担当)
 最も大きな進化ポイントは、光学手ブレ補正です。揺れを検知してカメラユニットが手ブレを打ち消すように動いて補正するという仕組みです。夜など、暗がりでの撮影は手ブレしやすい場面で、これまでISO感度を上げるといった方策を用意していましたが光学手ブレ補正であれば感度アップによるノイズがありませんので、より高画質に撮影できます。またLEDフラッシュを使った撮影については、色味がより自然になるようにしています。これまでのLEDフラッシュは青色が強く出ていましたが、発色をチューニングしました。

照屋 知一氏(P-05C 3D画像開発担当)
 レンズは1つですが3D撮影にも対応しています。3D写真は、2つの視点から写真を撮影することになり、被写体の距離に応じて「P-05C」を動かす距離も自動的に算定しますが、撮影の手順もわかりやすく表示しています。さらに光学手ブレ補正により、より綺麗な3D写真の撮影が可能になっています。

内藤さおり氏(P-05C 商品企画担当)
 今回は、ミニチュア、ソフトフォーカス、ピンホールといった加工も可能です。撮影すると、加工が施された写真が複数枚、表示され、好みのものを保存するという流れです。セピアでソフトフォーカス撮影すると、作品のような写真が撮れたりします。

光学手ブレ補正に対応作品のような写真も

辻 祐亮氏(P-05C DLNA担当)
 DLNA対応で、パナソニックのテレビ、レコーダーと連携できます。これにより「ピクチャジャンプ」機能を使い、写真一覧から好みの写真を選んでテレビ/レコーダーへ送ると、すぐ表示/保存されます。パナソニック製レコーダーに保存した動画や録画番組を、「P-05C」で再生することもできます。このとき、録画データは携帯用に変換されています。

――カメラ機能を中心に、進化させたわけですね。

内藤氏
 「カメラ女子」という言葉がありますが、そこまで行かないけれど、カメラには興味がある、といったユーザーに向けた機種として仕上げました。

3D写真を撮影するときのガイド。端末を動かす距離は、毎回、自動計算DLNAでテレビと連携

――なるほど。スワロフスキーのクリスタルが印象的な「P-04C」はいかがでしょうか。

山本 紀美子氏(P-04C マーケティング担当)
 感圧式のタッチパネルを採用し、防水性能も備えたモデルで、昨年の「P-06B」の後継モデルです。「P-06B」で好評だった、デコれる日記機能も用意し、今回はスワロフスキーのクリスタルを用いており、光り方にも工夫を重ねました。たとえば、クリスタルの裏面は、外光を効果的に反射できるよう、メッキ処理を施しています。そのため、そのままでは内蔵されるLEDの光を透過できませんが、クリスタルの側面からLEDの光が届くような機構を採用し、暗がりでも美しい光を楽しめるようにしました。

スワロフスキークリスタルが特徴のP-04C

――クリスタル調のものはスワロフスキー以外にも存在すると思いますが、違いはどういったところでしょうか?

山本氏
 一言で言えば品格です。やはり光り方が全く違いますね。ちなみにPink Goldはスペシャルモデルとして、スワロフスキークリスタルが他のカラーより多くなっています。他のカラーでは、クリスタルを4つにして、少し控えめにすることで、性別に関わりなく、より幅広く手に取ってもらえるようにしていますが、Pink Goldはキラキラ感にこだわるユーザーに向けたモデルと位置付けています。

――防水対応のP-06Cは、12色展開ですね。

香本憲志氏(P-06C マーケティング担当)
 パナソニックとしては、過去に多色展開モデルを開発した実績はありますが、「P-06C」は、ドコモ向けモデルとしては初の多色モデルです。しかも、モノトーン系、ピンク系、ゴールド系と、近いカラーを集めて12色にしています。

――なぜ色合いを固めたのでしょうか。

香本氏
 当社で、携帯電話の売れ筋のカラーを調べると、実は、モノトーン、ピンク、ゴールドの3系統が全体の8割を占めているのです。今回はその売れ筋を踏まえ、さらに細かく、ユーザーの好みに対応できるよう12色を揃えました。

―なるほど。

香本氏
 昨秋発売した「P-07B」は、折りたたみ型のシンプルなモデルで、低価格路線のモデルです。実はいまだに人気の機種で、今回の「P-06C」はその路線を踏まえながら、ユーザーからニーズが高い、防水やおサイフケータイに対応したモデルです。機能を積み増せばコストアップになると思われるかもしれませんが、これまで蓄積したノウハウもあって、低価格路線を継承することができました。

12色展開のP-06C今後、大手ソーシャルゲームプラットフォームでもソーシャルゲームを展開する

井口大樹氏(コンテンツ担当)
 これらのフィーチャーフォン向けのサイトでは、従来以上にコンテンツの充実化をはかっています。待受画像やフォントなどを充実させて、メーカーサイトで無料で提供しています。さらに、有料サイトを展開して横長画面のWオープン対応機種やタッチ対応機種にあわせたゲームなど、当社ならではの機種に向けたコンテンツを強化しています。今年3月からは、サービス拡充の一環として、オリジナルのソーシャルゲームを提供していますが、今後は大手ソーシャルゲームプラットフォームでの展開も検討しています。このあたりの詳細はまだ公開できませんが、一ゲームプロバイダーとして展開する考えです。

――なるほど、今日はありがとうございました。

 




(関口 聖)

2011/6/22 06:00