インタビュー

進んだ機能を自然に使いこなせる「らくらくスマートフォン4 F-04J」の秘密

カメラ、インターネット、アプリを活用できる新しい機能の中身とは

 主にシニア層向けに、“使いやすさ”にフォーカスして開発されたドコモの「らくらくスマートフォン4 F-04J」。すでにシリーズとしては4代目、「らくらくスマートフォン プレミアム」を含めると5つ目のロングセラー製品となる。

「らくらくスマートフォン4 F-04J」

 「らくらくスマートフォン」シリーズは、スマートフォンとはいえ、よく使う機能へのアクセスを容易にしたタイル状のホームアプリや、画面を押し込むようにしてタッチする操作性、あえて機能を絞ることで迷いにくくした仕様など、最新のスマートフォンとは一線を画したシリーズとなっている。

 それだけに、同じくシニア向けの携帯電話「らくらくホン F-02J」と同様に、このらくらくスマートフォンシリーズも軸となる部分には“変わらない”ことが求められてきた。だが、今回の4代目は従来から大きく変わったところがあるという。一体何が大きく変わったのか、開発に携わった富士通の4名の担当者に話を伺った。

自然な体験からの使いこなしを実現するカメラとブラウザ

商品企画を担当する富士通コネクテッドテクノロジーズの原 渓太氏

――さっそくですが、「らくらくスマートフォン4 F-04J」は従来から何が変わったのでしょうか。

原氏
 前モデルのF-06Fから、かなりジャンプアップしています。どういうことかというと、今回の新しいらくらくスマートフォン4では「体験」というところにフォーカスして、スマートフォンの象徴的なカメラとブラウザ、Google Play、この3つを柱に、機能をアップさせています。ハードウェア的な進化もあります。

 携帯電話の「らくらくホン」のお客様は「変わらない安心」「今までと同じように使える」というニーズが強いのですが、らくらくスマートフォンをお買い上げいただくお客様は、今まで使っていたフィーチャーフォンからスマートフォンに変える、という方が多く、その分いろんなことに期待して買っていただいています。

 もちろん今まで通りの“使いやすさ”についてはブレずに、しかし、その期待に応えられるよう今回新たなエッセンスとして加えているのが“自然な体験からの使いこなし”です。難しい操作をしなくても今まで通りの使い方をしているだけで、新しい機能をいつのまにか使えている、というものです。これをテーマにカメラ、ブラウザといった機能を検討しました。

――具体的にはどういった機能を追加したのでしょうか。

原氏
 まず1つ目は、カメラの「スマイルムービー」機能というものです。挑戦的な気持ちが強いユーザーの方が多いわけですが、そういう方はカメラ機能で写真を一杯撮っていらっしゃるんですね。その一方で動画は全然撮っていないんですよ。しかし、若い人は特にそうですが、市場が全体的に動画にシフトしてきている。「スマイルムービー」機能は、動画に興味はありつつも、まだまだ使えていない方たちに対して、富士通として1つの解を提案したというものになります。

顔を検出して写真撮影時に動画も自動で撮る「スマイルムービー」の設定画面

 調査をすると、動画撮影したい人は多いのに、なんとなく使えていないという声が非常に多いのです。写真の場合、食べ物を撮ったりするのはなじみがあるのですが、動画となると、いつ、どうやって撮影していいのかがわからない。「動きがあるシーンなら動画」と、我々ならすぐに結び付けられるのですが、お客様の中にはそこに至れていない方がいらっしゃるようです。

 そこで、写真を撮っているだけで、いつの間にか動画も撮れている「スマイルムービー」機能を用意しました。その動画も、“素敵な動画として保存されている”のが肝になります。

 「スマイルムービー」は、人にカメラを向けて、顔を検知したときに自動で動画も撮るという仕組みです。なぜ顔検知のタイミングかというと、そこに動きがあるからですね。孫がピースするまでの仕草が撮れていたりとか、「ハイチーズ」と声をかけて友だち同士で写真撮影する間の様子が撮れていたりなど、そこに動きがあることに気付くのがすごく楽しいんじゃないかと考えました。

――もう1つのブラウザの機能についてはどういうものでしょうか。

原氏
 ブラウザに追加したのは、「らくらくワンタッチ検索」という機能です。「インターネットって難しそう」という声が今も圧倒的に多いんですね。グルメ情報を調べたり、言葉の意味を調べたり、というのも、まだできていない。やってみたいという声が非常に多くあるけれど、すごく難しそうだし、そもそも何を調べればいいのかわからない、と。

カテゴリー別ボタンが並ぶ「らくらくワンタッチ検索」機能と「画像」検索結果

 「らくらくワンタッチ検索」では、「インターネット」を選んで検索ボタンを押すと、カテゴリー別のボタンが並ぶ画面になります。いわば「楽しいコンテンツへの窓口」になっているんですね。例えば、気になる言葉を入力して「画像」ボタンを押すと、それに関連する画像がすぐに表示され、「言葉の意味」を押すと、そのWikipediaにジャンプして調べることができる。より実コンテンツに近い位置付けの画面になっているわけです。

 インターネットで何を調べていいのかわからないお客様に対して、今後「こうすれば楽しいんだ」とか「インターネットってこういう使い方があるんだ」ということに気付いていただける。そういった足がかり的な機能になればいいなと思っています。

――カメラについては、撮影したものをスマートフォンの画面だけでなく、テレビなど大きな画面に映し出して楽しむような使い方は、シニア層にはニーズとしてあるのでしょうか。

原氏
 挑戦的な気持ちを持っている方々なので、そういった機能を載せると使っていただけるとは思うのですが、まだまだ声としては小さいです。まずは動画撮影することの価値に気付いていただく、というのが「らくらくスマートフォン4」で、今後の機種に向けてはそういった声を拾い続けて、MHLとかにも対応していきたいとは思っています。

――3つ目の柱として、Goolge Playにも対応しました。使いやすさや安全性のことを考えると、Google Play対応は議論の分かれるところだったのではないか、と思いますが。

原氏
 スマートフォンに変える以上、アプリを使ってみたいという声はすごく多かったです。世の中的にも、アプリをどんどんアップデートして最新のものを使う、という流れがあるので、Google Playに対応することにしました。

 ただ、安心・安全に加えて、以前と同じように使いやすいままにしておきたい、という想いもあります。そこで、らくらくスマートフォン4では従来からある独自のホームアプリ「らくらくホーム」を載せつつ、新しく「アプリ追加用ホーム」というGoogle Playのアイコンを備えるホームアプリの2種類を用意しました。これで、今まで通りの使い方も、新しい使い方もできます。

検索やGoogle Play、Google関連アプリのボタンが設けられたホーム画面「アプリ追加用ホーム」

――らくらくスマートフォン特有のホーム画面に、一般アプリのアイコンが入るわけですよね。統一感のあるインターフェースが崩れたりはしませんか。

原氏
 ホーム画面のモノトーンの世界感に一般のアプリのアイコンが入ることについては、たしかに社内でも議論はありました。でも逆に、外に開けたGoogle Playのカラフルな世界感を1箇所にまとめて、ここから新しい機能が使えるんだよ、というのをデザインできました。1箇所にまとめることで極力ノイズを少なくでき、明らかに“外”に出る、というのを明示することによる分かりやすさにもつながったかと思います。

ユーザーが新しい世界を歩み出す、気持ちの“アガる”華やかなピンク

――前モデルと見た目はそっくりですが、他に大きく変わっている部分はあるでしょうか。

原氏
 従来通りの使いやすさの中にも、進化ポイントがいくつかあります。まずは「聞きやすさ」。VoLTE HD+に対応し、当社独自の「はっきりボイス」などの機能と掛け合わせると、「らくらくスマートフォン市場最高の聞きやすさ」がらくらくスマートフォン4に詰まっていると言えます。

 また、いろいろ挑戦したいというお客様は多いものの、メールや電話はまだまだ基本機能として使っていきたいというお客様もたくさんいらっしゃいます。なので、メールもより見やすくなるよう、文字サイズの調整機能も追加しました。

――デザイン面でこだわった部分、変わっているところはありますか。

「らくらく」シリーズのデザインを担当する富士通デザインの鎌田正一氏

鎌田氏
 デザインも進化していますね。らくらくスマートフォン4とらくらくフォンは、「持ち心地よく」「安心・安全に使える」という考え方のベースは共通していると思います。そのうえで、デザインのポイントとしては3つあります。

 1つはラウンドフォルム。ラウンドフォルム=ちゃんと握れる、ということでもあります。指の第1関節でちゃんと握れることを意識しました。四つ角の大きなアールも、握った時にちゃんと手のひらに心地よくフィットすることを考えたものです。このへんの心地よさ、持ちやすさというのが、らくらくスマートフォンの価値だと思っています。

角のなだらかなRで、心地のよさと持ちやすさに配慮した

 2つ目はシンプルなデザイン。“ノイズ”を減らしてデザイン的に整理整頓することで、使いやすさ、わかりやすさが明確になったと思います。

 そして3つ目は、外装とUIのカラーバランスを取っている統一感のあるデザインです。店頭で他社のスマートフォンが並んでいる時には、このラウンドフォルム+カラーバランスの3つがあいまって、らくらくスマートフォンの1つのアイデンティティ、ブランド価値にもなっているのではないでしょうか。

原氏
 今回、そういったシニア層の嗜好に対して、色で表現しているようなところもあります。3色あるボディカラーのうちピンクはビビッドで、らくらくスマートフォンのイメージにはなじみがないかと思いますが、近年のお客様の嗜好としては、ビビッドな、気持ちが華やぐような色を求められているようです。

 「スマートフォンを使う」という挑戦心、そういったところを表現する色でもありますね。我々としてもチャレンジングな色だと思っています。このような、気持ちが“アガる”色はユーザー調査でも高評価で、ピンク、ブラック、ホワイトというカラーバリエーションを採用しました。

ビビッドなピンクのボディカラー

鎌田氏
 今回Google Play対応ということで、「お客様が新しい世界を歩み出す」イメージもありました。より気持ちが華やいでわくわくするような、ということで、ピンクを提案したという理由もあります。

――Google Playに対応したことで、今後のバージョンアップはGoogleのペースに合わせなければならないところも出てくるかと思いますが。

原氏
 単にそれに追従するだけではなくて、きちんとお客様がメリットに感じるものはどんどん取り入れたいと思っています。ですので、それに合わせてらくらくスマートフォンも進化していくものだと考えています。ただし、使い勝手が難しくなるのは避けるべきでしょうから、そこは機能を1つ1つ慎重に検討していきたいですね。

電池カバー取り外しできるタイプとして初のMIL規格準拠

――変化している風には見えないのに、実は進化した、というような部分はありますか。

「らくらく」シリーズの開発を担当する富士通コネクテッドテクノロジーズの佐藤賢利氏
「らくらく」シリーズの開発を担当する富士通コネクテッドテクノロジーズの池田和彦氏

佐藤氏
 ハードウェア面では、アウトカメラの画素数を1300万画素にアップして、インカメラも高画素化しました。広角にして、構図を細かく気にしなくても広く撮れるようにもしています。他のAndroidスマートフォンも進化している部分ですから、比較した時に物足りなさを感じないようにと。電池持ちも改善していますね。

池田氏
 CPUが変わって高速化しましたので、Google Playからダウンロードしたアプリも含め、サクサク使っていただけると思います。

佐藤氏
 長く使っていただく端末ですから、耐久性にも配慮しました。MIL規格にも準拠して、長く使っていただけることをアピールできるようにしています。

原氏
 ただ、MIL規格準拠がメリットとして伝わりにくい層のユーザーがターゲットです。そのため、お客様からの見え方としては「長く使える端末です」ということにして、ガーデニングをしていても、登山をしていても使えるよ、といったことなどをメリットとして打ち出しています。MIL規格準拠であることは、その論拠として軽く紹介する感じにしました。

 ちなみに電池の取り外しが可能なタイプとしていますが、それでもきちんとMIL規格に対応しているのは、このらくらくスマートフォン4とらくらくフォンの2機種が初めてということになります。

 それと、読み上げ機能で新しく追加したのが「読み上げ単語登録」です。特定の単語の読み方を指定できる機能で、例えば人の名前や、普通だと正しく読み上げられない言葉も、きちんと読み上げてくれるようになります。

――今回は動画対応を強化しましたが、らくらくコミュニティのファミリーページも今後動画に対応することになりそうでしょうか。

池田氏
 基本的な価値としての動画撮影の楽しさに気付いていただく、ところまで進めたのがらくらくスマートフォン4でした。今後の進化の方向性として、「それをどう使うか」まで踏み込んでいきたいと思っていますので、その時はらくらくコミュニティのサービス全体で機能アップすることになると思っています。

――らくらくスマートフォン4は、商品サイクルとしては通常のスマートフォンより長いかと思われます。今後の新色追加や機能追加、OSアップデートの計画は?

原氏
 市場の動向を見つつ、この機能はお客様に使っていただきたい、というものが見えた時には、新しい型番として出したいとは思っています。OSアップデートは必要に応じて、という形になるかと思います。

らくらくスマートフォン、らくらくホン開発チーム

――本日はありがとうございました。