Global Mobile Internet Conference 2014

Facebookが考える“次なる50億人”を獲得する手段とは?

Vaughan Smith氏が中国の企業、開発者に向け熱弁

Facebook Vice PresidentのVaughan Smith氏

 北京で開催されている「Global Mobile Internet Conference(GMIC) 2014」で、2日目の5月6日、FacebookのVaughan Smith氏が、世界でいまだネットワークにつながっていない“次なる50億人”に向けた取り組みについて語った。特定の国ではFacebookの利用時に通信費が無料になる施策を行っているといった独自の活動について紹介したほか、13億のユーザーがいるFacebookのプラットフォームを活用した広告活動の有効性もアピールした。

通信費削減を狙い、通信事業者とコラボ

GMICの主催者であるGWCのCMO、Barrett Parkman氏

 「Can Facebook Connect the World?」と題された講演は、主催者であるGWCのBarrett Parkman氏が、FacebookのVaughan Smith氏と対話する形式で進められた。

 Facebookのユーザー数はすでに13億に達しているが、全世界にはまだ50億人のインターネットを利用できていないユーザーがいるとされている。この“次なる50億人”という言葉はGMICのサブテーマにも含まれているが、50億人をどのようにしてインターネットに取り込もうと考えているのか。Parkman氏がたずねると、Smith氏は2013年にボツワナを旅行した時のことを振り返り、3分の2ほどの人がまだインターネットにつながっていないことを実感したという経験を語った。

 途上国でインターネットが利用されにくい理由の1つとしては、通信費がまだ高いことが挙げられる。このためSmith氏は、「コミュニケーション(するための)コストを下げること」と「人々にインターネットの価値を理解してもらうこと」に注力すべきだと考えている。

 コストを下げるにはデータ通信量を減らすことが重要になる。たとえばFacebookにおいては、昨年2013年に、Android用アプリにおいてデータ転送量を50%削減することに成功した。Facebookのプラットフォームを活用したアプリやサービスについては、利用者の裾野を広げるきっかけにもなることから、その開発者へのフォローも欠かせない。Smith氏はFacebookが13億ユーザーにまで成長した実績あるエコシステムであることをアピールしつつ、最近になって開発者向けサービスをフリーで試せるようにしたことも紹介。一度試せばそのベネフィットに気づけるだろうと述べた。

 まだインターネットが十分に普及していない途上国における活動は、Facebookにとって中長期の目標でもある。「途上国の人々がネットを使えるようになると、1億4千万人の雇用を創出できると見込まれている」とし、「どうやって途上国をサポートするかが我々の大きなテーマ」だとSmith氏はいう。しかしながら、途上国におけるインターネットの利用拡大は、やはり通信費をいかに抑えるかが一番の課題だ。

 Facebookではこの点について短期的な目標をもっている。それは、ユーザーがFacebookを利用することにより、キャリアの運営するサービスの利用も増えるということを、キャリアに納得させるというものだ。一例として、フィリピンでは現地の通信事業者と手を組み、ユーザーがFacebookを使う時はその通信費が無料になるという施策を行っていることを紹介。Facebookの利用者数はもちろんのこと、キャリアのサービス利用者数も実際に向上しているという。

Oculus Riftは次の10年におけるイノベーション

 中国ではネットワークの規制により、国内からFacebookに直接アクセスすることができないため、中国のユーザーがFacebookを本格的に利用するのは難しい。逆にFacebookにとっても、モバイルインターネット業界で最大のマーケットと目される中国市場に関わりにくいのではないかと思われる。しかし、中国のゲーム開発会社FUNPLUSがFacebookゲームで成功していたり、中国の輸出大手企業とコラボレーションしてFacebookで宣伝し、大きな効果を得たこともあるという。つまり、「13億のユーザーと、数千人のデベロッパーがいる」とSmith氏が胸を張るFacebookのプラットフォームは、中国では、海外に対してアクションしようとした際に有効に活用できるというわけだ。

 次にParkman氏からは、最近Facebookが買収提案をしたと発表のあったメッセージングアプリ「WhatsApp」についても質問があった。Smith氏によれば、「WhatsAppのCEOとは“次なる50億”をどう狙っていこうかと話し合っているところ」であり、以前からかなり緊密に連携を取り合っていることをうかがわせつつ、多数のユーザーを抱える双方の力を合わせれば“次なる50億”を獲得できると信じている、とも述べた。

 また、ヘッドマウントディスプレイでゲーム映像を体感できる仮想現実デバイス「Oculus Rift」の買収がFacebookにとってどういう意味があるのかも問われ、「たしか2年ほど前、メディアとアナリストにFacebookのモバイルへの移行が遅れていると批判された」とSmith氏。その時の反省もあってか、「我々はそれとは別の、次の10年間に人々を引きつけそうな変遷を探している」と語り、次のイノベーションの1つがOculus Riftのような仮想現実を実現するハードウェアにあると考えているようだ。

 なお、4月末にFacebookの2014年第1四半期の売上が25億ドルになったという発表があった。広告による売上は22億7000万ドルであり、その59%がモバイル広告となっている。モバイルで一時遅れを取ったと言われながらも、現在はモバイルへの移行が順調に進んでいると見られ、新サービスをモバイル向けから先に提供する「モバイルファースト」を心がけているというSmith氏の言葉が結果に反映されている格好だ。

 10年後にどういったものがユーザーのニーズにマッチするか、という問いには、「現在はどちらかというと天然ガスや鉱物のような資源に重きをおいているが、10年後は人間の考え方、思想にこそ価値をおくようになると思う」と推測。最後に中国から海外展開したい人へのアドバイスを求められると、「Facebookのユーザーと関係を築く必要がある」ことを強調し、多くの会員を抱えているFacebookのプラットフォームを活用してほしいと訴えた。

日沼諭史