【CEATEC JAPAN 2010】
UQ野坂社長「WiMAXで真のユビキタス社会を実現」


 CEATEC JAPAN 2010で7日、UQコミュニケーションズ代表取締役社長の野坂章雄氏が「WiMAXが切り拓くモバイルブロードバンドの世界」と題した基調講演を行った。講演では、モバイルWiMAXサービス「UQ WiMAX」の現況に加え、会場で動態デモを実施している「WiMAX2」などを紹介した。

9月のモバイルデータ通信機器販売シェアはWiMAXが1位


UQコミュニケーションズ代表取締役社長の野坂章雄氏

 野坂氏は冒頭、2010年9月度の主要家電量販店におけるモバイルデータ通信製品の新規販売数に関して、WiMAX製品がシェア1位を獲得したと説明。これはGfK Japanの、モバイルルーターを含む「データ通信カード」カテゴリーの販売実績データ(WiMAX製品は含まれていない)と、GfKのデータと条件を揃えたUQの自社販売実績を比較し、UQが独自に推計したもので、主要量販店で販売されたWiMAXのデータ通信カード、モバイルルーター、WiMAXモジュール内蔵パソコンの販売数が含まれている。野坂氏は「WiMAXの新規販売シェアは33.1%だった」と語り、「僅差で2位の会社に勝つことができた」とした。

 サービス利用者数に関しては、2010年9月末時点で33万7100件。上期の結果としては想定通りに推移したと捉えており、2010年度(2011年3月)末の目標である80万件の獲得に向けて、引き続き新規利用者の獲得に力を入れていく考えだ。一方、WiMAX対応のデバイス比率に関しては、2010年9月時点ではデータ通信端末がもっとも大きいが、野坂社長は「5月にiPadが発売されて以降、Wi-Fiルーターが非常によく売れている」と比率に変化が生じている点を紹介した。その上で、2011年度末のWi-FiルーターとWiMAXパソコンの比率が伸びていく考えを示した。

 WiMAXに対応したWi-Fiルーターに関しては、UQは「WiMAX Speed Wi-Fi」との名称で展開しているが、CEATEC JAPAN 2010に新規展示した製品を含めて、5メーカー10機種のラインナップに到達する。野坂氏は機種によって一体型や据え置き型、分離型と複数のタイプがあることを紹介し、「デバイスオープンの面白さ、製品の多様さが実現できてきたと感じている」と述べた。


UQ推計値で新規販売シェア1位になったという利用者の推移

WiMAX Speed Wi-Fiのラインナップデバイス比率。今後はWi-FiルーターとPCの比率が伸びるとしている

 WiMAX対応パソコンのラインナップは10メーカー46機種にのぼり、「モバイルで利用するノートPCでWiMAXが入っていないと困ると状況がもうそこまで来ている」と自信を示した。また、10月1日から開始した施策「WiMAX PC バリューセット」では、段階制プランの場合で0円から上限4600円でWiMAXを利用できるとも説明した。KDDIが提供する3GとWiMAXに両対応のデータ通信端末は、ビジネスシーンにおいて都市圏ではWiMAX、地方に出向いた場合には3Gという形でどこでもデータ通信サービスが利用できると紹介した。

 基地局数に関しては、2010年8月に1万局を達成し、2010年度末には1万5000局の設置を目標にしている。全国政令指定都市の人口カバー率に関しては、90%を達成しているという。また、オフィスや公共施設などのエリア整備に向けて分離型レピーターや一体型レピーターの設置やソリューション提供を進めているとした。

 海外事業者との連携施策としては、海外でWiMAXを利用できる「WORLD WiMAX」を紹介。現在、米Clearwireと提携して全米62都市でWiMAXサービスの利用が可能で、対象機器を持つUQのWiMAXユーザーは米国のサービスエリア内で名前とメールアドレスを入力することで手続きが完了するという。2011年3月末までは無料で利用できる。


WiMAX対応PCのラインナップKDDIでは3GとWiMAXに対応した端末・サービスも提供している

オフィスや公共施設といった屋内エリア整備の取り組みも米Clearwireとの提携によって、全米62都市でWiMAXを利用できる

次世代自動販売機やプリントシール機などノンPCへの取り組み


次世代自動販売機。JR品川駅構内に設置されている

 野坂氏は続けて、パソコンからパソコン以外の「ノンPC」への広がりを紹介。CEATEC JAPAN 2010のUQブースでは、JR東日本ウォータービジネスがJR東日本の品川駅に設置しているデジタルサイネージ型の次世代自動販売機をデモ展示しており、WiMAXによる通信機能を内蔵することで、映像をインタラクティブに表示できるとともに、売れ行きや売れ筋商品などのマーケティングデータ収集が逐次可能になるとした。

 また、プリントシール機に関しては通信部分を無線化することで設置の自由度を高められるとしたほか、PHSモジュールを内蔵したモデルと比べて高精細な写真のサーバーへのアップロードも容易になると速度面での優位性もアピールしていた。

 加えて、高画質で映像をリアルタイム配信してパーソナル放送局が実現できる点やWiMAX搭載することで、ロボットからの映像送信や遠隔監視・操作などが可能になる監視カメラを紹介。このほか、ブース展示はしていないものの、撮影した写真を即座にサーバーにアップロードしたり、フォトフレームに転送できるWiMAX搭載のデジタルカメラの研究を進めているとした。


プリントシール機。WiMAXによって通信速度の向上も図れるとしたWiMAX搭載のデジタルカメラも紹介

WiMAX2の動態デモで300Mbps超の速度を計測


WiMAX2によって通信速度の向上や高速移動中の通信向上も

 WiMAXの高速化に関する説明では、UQでは「高速化が当社の大きな差別化要因である」と説明。それに先立って、「一般論」と前向きした上で他社がサービス提供を予定しているDC-HSDPAを利用した下り最大42Mbpsサービスに言及。野坂氏は「UQの40Mbpsという数値は64QAM 5/6とエラー訂正を反映した上での数値」と述べ、「DC-HSDPAの42Mbpsに関しては64QAMの6/6でエラー訂正が無い数値だと推測している」とコメント。

 その上で「仮に同じ符号化率で比較した場合にはWiMAXは48Mbpsになる」と指摘した。野坂氏は「この数値で勝った負けたというつもりはないが、UQではとにかく最速を目指している頑張っている点を理解していたければ」と語った。

 続けて、CEATEC JAPAN 2010で動態デモを実施している理論値で下り最大330Mbpsの通信速度を目指す「WiMAX2」のを紹介。現行のWiMAXは下り最大40Mbps、時速120km以上での通信が可能としているが、WiMAX2では下り最大330Mbpsと高速・大容量化を実現すると共に、時速350km以上とのより高速に移動している場合での利用も目指している。技術仕様に関しては概要を説明するにとどまり、MIMOを現行WiMAXの2×2から4×4に、周波数帯域幅を向上させた通信規格「IEEE 802.16m」を利用していると紹介した。


DC-HSDPAとの比較WiMAXとWiMAX2の技術仕様

 CEATEC JAPAN 2010での動態デモに関しては、電波法の関係もあり、機器間を有線で接続して実施されているが、300Mbpsから320Mbps程度の通信速度を計測できるという。デモでは、ビットレートが20Mbpsの3D映像を1本、15MbpsのHD映像を複数同時伝送している。

 野坂氏はWiMAX2による高速化実現に関して「300Mbps以上の速度は果たして必要なのかという議論もある」と述べた。このため、利用シーンの一例として、KDDIブースで展示しているマルチカメラによる撮影データを合成して自由に視点を選択できるKDDI研究所による自由視点映像の取り組みを紹介し、「高速化によって、すべての映像を一挙に撮影・無線伝送して、サッカーや野球などを自分がみたい視点から映像を見られるようになる」と述べた。


UQブース2階で実施している動態デモ概要WiMAX2利用シーンの一例として自由視点映像を紹介

野坂氏「WiMAXには2年のアドバンテージ」がある


WiMAXは他方式と比較して2年のアドバンテージがあると説明

 通信速度の高速化に関しては、他の事業者もDC-HSDPAやLTEなどの取り組みを進めらている。これに関して野坂氏は、UQがすでに40Mbpsの商用サービスを開始している点に加え、「我々もそうだったが、他社も当面は基地局を徐々に増やしていかれるだろう」とし、すでに1万局を設置し、2010年度末に1.5万局の設置を予定している点で、UQに優位点があると紹介した。

 さらにWiMAX2に関して、2011年3月をめどに無線接続によるフィールド公開実験を、2012年に商用化を予定している点に「非常に大きな意味」があると説明。野坂氏は「今後の国家としての経済成長がワイヤレスによるブロードバンドによるところが大きだろうという考え方がある」とした上で、「いろいろな議論はあるが、現実に存在する技術でWiMAXは最速になっているほか、本当の意味で3Gがアドバンスしていくのは2014年頃になると考えており、2年先行しているWiMAXのアドバンテージは大きいと考えている」と述べた。

 野坂氏はまた、ユビキタス社会に向けてUQが提供する価値として高速大容量で配線不要、常時接続性、モビリティ性といった機能をベースに、「ブロードバンドアクセスを活用した楽しさや臨場感、流通革命、生産性の向上といった“価値”を世の中に提供していきたい」と発言。「今後はPCとノンPCの双方に力を入れて、生活のあらゆるシーンでWiMAXを提供していきたい」と語るとともに、「WiMAXを内蔵していることでグローバルで同じことができる世界を、まずは台湾や韓国といった東アジア、そして東南アジアで広げてきたい」と述べた。

 最後に「WiMAXインフラと各産業の結びつき、そして消費者と提供者の結びつきを如何に効率化させて日本の生産性の向上を我々の使命」と語り、「次世代インターネットの本命として真のユビキタス社会の実現を目指したい」と講演を締めくくった。


WiMAXがもつ機能をベースにさまざまな価値を提供したい考え真のユビキタス社会の実現を目指すという


(村松健至)

2010/10/7/ 20:14