石野純也の「スマホとお金」
月990円のプランでも、ソフトバンクの「アメリカ放題」が使える!? ハワイで人柱になってきました
2022年8月18日 00:00
新型コロナウイルスの水際対策が徐々に緩和され、海外への渡航者が徐々に増えています。筆者も、2月に「MWC Barcelona」をスペイン・バルセロナで取材したほか、今現在、夏休みを取って米ハワイ州に来ています。帰国時PCR検査という“関門”は残っているものの、帰国後の隔離がなくなり、年初までと比べれば、かなり海外渡航がしやすくなったのも事実。実際、エイチ・アイ・エスが6月に公開した調査では、7月21日~8月31日の海外旅行者予約者数は、21年比で約22倍と爆増しています。
慣れない土地ではスマホが必須アイテム。マップや翻訳アプリなどが活躍する機会も、普段より大幅に増えます。コロナ禍では出入国時に必要な書類も増えるため、よりスマホや通信の重要度が上がったと言えるでしょう。このようなときにもっとも手軽なのが、国際ローミングです。かつては1日最大で2980円かかっていたデータローミング代も、KDDIが24時間定額を始めたのを皮切りに、各社とも価格を引き下げています。
そんな国際ローミングの中で、ぶっち切りにお得なのがソフトバンクの「アメリカ放題」です。
このサービスは、米キャリアのSprint(現・T-Mobile US)を傘下に収めていた際に、“シナジー効果”として導入されたもの。アメリカ限定ではありますが、関連会社の回線を使うため、通話料やデータ通信料が無料になるのが売りでした。その後、紆余曲折を経てサービス内容がブラッシュアップされ、使い勝手はさらによくなりました。
ここでは、そんなアメリカ放題をお得に使う方法を紹介していきます。
20年にその内容を大きくリニューアルしたアメリカ放題
元々はSprint回線限定だったアメリカ放題ですが、ご存じのとおり、ソフトバンクは同社をすでに手放し、連結対象からは外れています。Sprintは、20年4月にドイツテレコム傘下のT-Mobile USに吸収合併され、そのネットワークや周波数は現在、T-Mobileが利用しています。グループシナジーを発揮してユーザーに還元するという当初目的は、すでに形骸化していると言えるでしょう。
一方で、ユーザーから好評だったこともあり、Sprint売却後もアメリカ放題は継続しています。
ただし、Sprint自体がすでになくなってしまっているため、サービス内容の一部は変更になっています。
大きなところでは、接続できる回線が1社限定ではなくなりました。今ではSprintを吸収したT-Mobileはもちろん、米国第2位のキャリアであるAT&Tや、一部地域でサービスを展開しているUnion Wirelessなどのネットワークにローミングできます。これが20年3月のことです。米国第1位のVerizonは利用できませんが、AT&TとT-Mobileの両方に接続できれば、かなりエリアが広がります。Sprintだけだったときより、使い勝手が大きく向上したと言えるでしょう。
同時に、元々980円だったサービス利用料も無料になりました。と言っても、アメリカ放題はサービス開始当初からキャンペーンとして無料で利用できたため、ユーザーから見ると、実質的な料金は変わっていません。とは言え、キャンペーンだった割引とは違い、正式なサービスの料金として無料になったため、「いつやめるか分からない」という不安がなくなったところは大きな違いです。サービス自体を改定しない保証がないのは、何とも言えないところですが……。
ネットワークの仕組みも変わったようで、改定前のアメリカ放題では、特に設定をする必要なくSprintにつながっていましたが、改定後は、データ通信を利用する際に「データローミング」をオンにしなければなりません。一般的な国際ローミングと同じ手順になったというわけです。
ただし、料金は音声通話もデータ通信も無料のまま。国内での料金より割高になりがちな国際ローミングサービスとしては、異例のお得さはそのままです。
広い対象プラン、データ通信専用3GBプランでも利用可能に
他キャリアの国際ローミングでは、データ容量の上限が契約している料金プランによって異なるのが一般的です。データ容量が無制限の場合、20GBなり30GBなりといった制限が設けられています。
1、2週間程度の短期渡航であればこれで十分ではありますが、普段契約している料金プランが「ギガライト」(ドコモ)だったり、「ピタットプラン」(au)だったりすると、すぐに上限に達してしまうおそれもあります。慣れない土地だと、普段よりスマホの出番が増えるからです。
ところが、ことアメリカ放題に関しては、データ容量の制限が設けられていません。料金プラン名そのままに、データ通信し放題というわけです。
適用条件は、国際ローミングサービスである「世界対応ケータイ」を有効にしていることだけ。元々データ容量が無制限の「メリハリ無制限」はもちろんのこと、3GB上限の「ミニフィットプラン+」でも、データ通信が使い放題になります。
ソフトバンクのスマホ向け料金プランは、主にこの2つと、フィーチャーフォンからの乗り換えを対象にした「スマホデビュープラン」の3つですが、実は世界対応ケータイに対応できる料金プランは、ほかにもあります。6月23日に本連載で紹介した「データ通信専用3GBプラン」が、それです。この料金プラン、月額わずか990円でソフトバンク回線につく各種特典を利用できるのが最大の特徴ですが、世界対応ケータイもオプションにつけることができます。
ソフトバンクの広報部によると、データ通信専用3GBプランもアメリカ放題の対象になるといいます。国内では3GBですが、アメリカでは使い放題。データ通信専用のため、音声通話はできませんが、IP電話アプリやLINEなどで代替すればいいでしょう。筆者の場合、普段使っている電話番号をIP電話に転送して着信を受けるようにしています。ソフトバンクプレミアムが適用されるだけでも十分お得でしたが、アメリカ放題も対象だったのは“予想外”。お得さがバグっているような印象すら受けます。
990円であれば、他社だとローミング24時間ぶんの料金とほぼ変わらない金額。アメリカでプリペイドのSIMカードを買うよりも圧倒的に料金は安く、データ通信を制限なく使えるのもうれしいポイントです。
たとえば、アメリカではT-Mobileが旅行者向けにプリペイドのeSIMのサービスを展開していますが、こちらは料金が10GBで40ドル(約5400円)。使い放題になると50ドル(約6750円)と、高額になってきます。データ通信専用3GBプランであれば、わずか990円。年2回ほどアメリカで使えば、それだけで元が取れてしまう驚異のコスパです。
データ通信専用3GBプランのアメリカ放題をハワイで使った
とは言え、うまい話には裏があると思ってしまうのが人間の心理。ソフトバンク広報から、アメリカ放題の対象と聞いた筆者も、半信半疑だったのは事実。聞き間違えていないか、何度も確認してしまったほどです。読者の中にも、同様の印象を持たれた方はいるかもしれません。
そんな方のために、筆者がアメリカでデータ通信専用3GBプランを(人柱として)実際に使ってみました。
まず、ハワイの空港に着き、データ通信専用3GBプランのSIMカードが入った端末のフライトモードを解除すると、AT&Tのネットワークにつながり、ソフトバンクからSMSが届きました。ここには、きちんとアメリカ放題の対象と記載されています。そのままデータローミングをオンにしたところ、通常の国際ローミングと同じように通信することができました。
空港近辺での回線速度は以下のとおり。3回ほど測定しましたが、4Gで7~8Mbps程度出ていたこともあり、各種サイトも特にストレスなく表示できました。Lyft(アメリカの配車サービスでUberの競合)での配車依頼もスピーディ。Googleマップでホテルの周辺情報を検索しながら車に揺られ、無事にホテルに到着しました。空港到着とほぼ同時に、データ通信が使えるのはやはり便利。My SoftBankを確認しましたが、追加の料金は本当にかかっていません。
あくまでアメリカ限定ですが、これによって、データ通信専用3GBプランの価値がさらに高まったような気がしています。出張や旅行でアメリカに行くことが多く、かつソフトバンク以外のキャリアをメイン回線にしているユーザーは、契約必須と言っても過言ではありません。ドコモやKDDIのユーザーなら国際ローミング料を節約できますし、海外利用に2GBまでの制限がある楽天モバイルと組み合わせて使ってもいいでしょう。データローミングができないほとんどのMVNOとも、相性は抜群です。
注意点としては、データ容量を国内で使い切ってしまわないことが挙げられます。国内で速度制限がかかった状態だと、国際ローミングもそのまま低速になってしまいます。データ通信専用3GBプランの場合、元々のデータ容量が3GBと少なめなため、アメリカ渡航を控えている月は、慎重に利用することをお勧めします。渡航が月末の場合は、特に注意が必要です。国内でしっかり使うようなときには、「時間制ギガ無制限オプション」を申し込めば、データ容量を余らせておくことが可能。こうしたオプションがあるのも、このプランの魅力と言えそうです。