本日の一品

Bluetooth接続でスマホから操作可能な、小型DAP「HIDIZS AP80SS」

 筆者は、外出時などに気軽に音楽を楽しむときに、スマートフォンではなく、デジタルオーディオプレイヤー(以下、DAP)を利用している。イヤホンを直接挿せて、持ち歩きたい曲を多く保存でき、その中にはハイレゾ音源も含まれているといった理由でスマートフォンでなく、DAPを利用している。

起動直後の本体画面。ここから各機能を選択する。出荷時から液晶保護フィルムが貼られている

 最近、画面サイズが3インチ未満の比較的小型のDAPが増えてきている。これまでも同程度のサイズでDAPが存在していたが、画面にテキスト情報しか表示できなかったり、音質や操作性も優れないものが多かった。しかし、最近の小型DAPには、手帳サイズのDAPと比べても音質や機能で妥協することがなく、魅力的な製品が登場してきている。

 今回、筆者が紹介するのは小型DAPのHIDIZS AP80SSだ。本体サイズは49×58×厚13mmとなっている。筆者がこの製品を選んだ理由の一つは、極端に小さすぎないということだ。画面が小さいと、表示できる情報が少なくなり、タッチパネルでの操作がやりにくくなる。また、小さすぎるがゆえに、バッテリー容量が少なく連続動作時間が短くなることを避けるためだ。実際、小型DAPに触れる機会があったが、操作性が極端に悪く、しばらく使って見たものの、すぐに使わなくなり手放したこともあった。

AP80SSの背面。技術基準適合認定表示はメニュー内で表示される。背面にも保護フィルムが貼られている
下面に3.5mmステレオコネクタとUSB Type-C USBコネクターが配置されている
左側面にボリュームノブ、曲送り、再生/停止、曲戻しのスイッチが並ぶ。ボリュームノブを押し込んで電源のオン・オフ操作を行う
標準添付のシリコンカバーを付けた状態。シリコンケースの仕上げは良いとは言えないが、本体を傷から守るようととしては十分なものだ

 また、AP80SSはステンレススチールが採用されているところにも魅力を感じた。AP80という同じ大きさでケース素材違いの機種もあったが、視聴して好みの音質だと感じたAP80SSを選択した。AP80の重さが70gでAP80SSの重さが97gと結構な重量差だったり、AP80SSの実売価格が約1.6倍高価ではあったが、音質が好みだった点や素材がステンレスであるといったところに魅力を感じたため購入した。

 その他にも、DACチップにESS ES9218Pが使用されている点や、操作性を左右するOSにHiBy3.0 OSが採用されている点、Bluetooth搭載やHiBy Linkが実装されている点も、AP80SSを選択した理由である。

 AP80SSは、保存した音声データを気持ち良く聴かせてくれるDAPにとどまらずに、スマートフォンの音をBluetoothでAP80SSに送り、再生するBluetoothレシーバーとしても利用できる。イヤホンジャックがないスマートフォンなどでも音楽が楽しめる便利な機能だ。ただ、この場合には、音源とAP80SSの間にBluetooth接続が介在するので、音質の変化や低下にもつながる欠点もある。これらの音楽再生以外にもFMラジオや歩数計といったユニークな機能も搭載している。

 AP80SSがDAPとして最も重要となる音楽再生機能については、高音質DAPとして十分なレベルの品質だ。低域から高域まで破綻することはなく、ノイズの少なく、好感のもてる音質だ。細かな音もはっきりと聞き取れる見通しの良いもので、若干余韻がある広がりを持った再生音である。本体サイズが小さいため、効率の悪いBAを複数搭載した多ドライバイヤホンや、ダイナミックタイプのイヤホンで、ちゃんと再生されるか不安があったが、イヤホンのドライブ性能について不満を感じることはない。

 筆者はあまり使う機会はないが、音質を細かく調整する機能が充実している。10バンドのパラメトリックイコライザーだけでなくMage Sound 8-Ball Tuning(MSEB)機能、Soundfeildやアンチエイリアスフィールドといった項目があり、周波数帯だけでなくDACの設定なども好みに指定できる。

曲順のリスト表示。ピンイン順のため、アルファベットと漢字が混じって並んでいる
マニアックな設定項目もあり、音質の変化を楽しむことができる

 画面サイズが小さいため、大きくスクロールする操作などで使い難い部分がなわけではないが慣性スクロールが採用されていたり、操作をしていてストレスはそれほど感じない。ただ、アーティストや曲名などピンイン順の表示については改善を望みたい。

 本体側面に音量調節ボリュームと再生/停止、曲送り、曲戻しの3つのボタンがあり、画面を見なくても基本的な操作であれば可能になっている。

 このAP80SSは、本体の操作をBluetoothでペアリングしたスマートフォンで操作できるHiby Link機能をもつ。この場合、AP80SSに直接挿したイヤホンで再生されるので音質低下はないし、人混みで電波状態が悪くて音が途切れることもない。無線で接続したスマートフォンの大きな画面で自由な姿勢で操作できるメリットがある。

 HibyMusicアプリをApple StoreやGoogle Playからダウンロードして、簡単な設定をするだけで、スマートフォンからの主な操作が可能になる。これは非常に便利で、国内のDAPメーカーでも、ぜひ採用してもらいたい機能だ。

Androidで動作するHibyMusicアプリ。曲のタイトル、アルバム、アーティスト順でリスト表示ができる。ここでもピンイン順の並びとなる。アプリからは本体やイコライザー設定などはできず、曲の再生に特化されている。ボリューム操作も可能になっている
曲データに保存されたジャケット画像が表示された画面。表示されるときと、表示されないときがあり、どのような条件で、表示・非表示が決まるのか不明のままだ
曲データにジャケット画像が保存されているが、表示されない場合もよくある。このように

 筆者の利用環境では、スマートフォン側の画面にジャケット画像が表示されたりされなかったりする点、ピンイン順に曲などが並ぶ点など、気になるところがなくはないが、気に入って使っている。今後、DAPを購入する際には、この手の機能の有無が重要なポイントとなりそうだ。

 小型なので、必然的に外出時に利用することが多く、出かける際に胸ポケットに入れて、コードが短めのイヤホンを耳にかけ、操作は手元のスマートフォンで行うといった使い方が気に入っている。外出先では手にはスマートフォンがあり、それをいちいちDAPに持ち替えて操作して、再度スマートフォンに持ち替えるといったことがなくなり、とても快適だ。

 また、外出先でイヤホンジャックがないスマートフォンで動画再生したいと思ったときも、AP80SSをBluetoothレシーバーとして使い迫力のある音声で楽しむことができるのも便利だったりする。LDACにも対応している。

 AP80SSを使った感想としては、小型サイズからは想像もできない、イメージを裏切る音の良さが際立っている。音質だけであれば2万前後の価格帯のDAPでは上位に位置するだろう。

 ピンイン順のリストやアルバムアーティストのタグ情報に対応していないなど改善の余地があるものの、操作性についても悪くなく、機能満載でお買い得感のある製品ではないだろうか。実際のところ、この価格帯のDAPを何台か所有しているが、AP80SS以外のDAPの出番はほとんどなくなったほど、気に入って使っている。

製品名発売元実売価格
AP80SSHIDIZS3万900円