本日の一品
シニアにピッタリ? 折らないカッター「ORANTE」
2018年3月26日 06:00
昭和生まれの筆者は、カッターといえば1956年に第1号が登場した「OLFAカッター」が頭にこびりついた世代だ。折る刃から命名されたこのカッターに親しんできたので、カッターというものあ「刃を折って刃先を新しくして、オンデマンドで必要な都度、切れ味最高の状態を保ち使う」のが当たり前だと思っていた。
しかし先日、“折らない”カッターが発売され、人気を博しているという。これは自らテストしなければいけないアイテムだと思い、さっそく手に入れた。
「ORANTE」(オランテ)というネーミング戦略のノリからして、きっとオルファ社と同様に関西系の会社の商品なのだろうと想像したが、調べてみるとメーカーはプラス(PLUS)社で、由緒正しい関東の会社だ。情報共有展開のスピードアップによる吉本興行が全国区に拡大したのと同じように、“オヤジネーミング”も今や日本標準になったようだ。
速攻で届いたORANTEは、本体カラーはもちろんのこと、本体を“にぎにぎ”したときの手触りも、武骨で事務的、味気なかった今までのカッターとは異なる。手のひらに柔らかく、子どもや女子が喜びそうなユニバーサルデザイン文具に仕上がっている。
刃を折らないだけなく、フッ素コートのステンレスが使われており、刃が長持ちするのが自慢らしい。そして、刃先が不用意に出ないようにチャイルドロック機構も備えている。また、力を入れてORANTEを使うときには、指先の滑り止めや手でホールドする能力を落とすことが無いよう、窪みや指かけリングを最適な場所に用意されている。
刃を折ることなく長持ちだということだったので、安心していたが、切れ味が鈍くなってくると、実はORANTEの刃は交換するという。そんなこととは知らなかったので、1日遅れで替え刃も注文した。
替え刃も「安全」がキーワードのようで、刃が露出せず、専用のプラスティックホルダーに入ったカッターみたいな状態で提供され、交換時にも廃棄時にも刃に触れることがない。安全が二重に確保されているようだ。
実際に刃の交換を行ってみたが、確かに刃に触れる危険性は皆無だったが、交換には予想より遥かに力が必要、かつ面倒な作業で、交換作業は大人が行うのが大前提になるだろう。小さな子供やお年寄りには、まず厳しいのではないかと感じた。
ORANTEのユーザーの感想をネット上で一通り眺めてみたが、皆さん一様に、「お子さんの指先のセーフティ」を考えられているのが印象的だった。ORANTEの商品企画がこのような親御さんの意見の集積をトリガーにされたのか、企業内でのデマンド・ディスカッションが先行して発売した結果なのかは筆者には分からないが、ユーザーさんの求めているものと商品で提供された価値が一致しているのは確かだ。
世代が異なるので感じ方が異なるのだろうが、普通のカッターの古くなった刃をただ折ることは、それほど危険なことなのだろうか?
今では、小さな子供を持たない筆者には理解しづらいことだが、筆者が子供の頃は、家でも学校でもカッターの古くなった刃をペキッと折って使える程度の手先の器用さは備えていた。
昨今は、廃棄の問題もあり、カッターの刃を安全確実に折って廃棄まで確実にできる製品が、各社からいろいろ発売されている。しかし、筆者の個人的な意見ではあるが、「普通に折れるカッターの刃を、安全な道具を使って折ること」に慣れさせる方が、子供にとっても良いと思う。
不思議なのは、カッターの刃ですら注意して安全に折れない子供に、カッターを道具としてキチンと使えるとは思えないことだ。子供の安全は子育ての上で最重要な項目の1つではあるが、同時に、将来何が待ち構えているかわからない地球上で、確実に生き延びていくには、手先の器用さやセーフティを身をもって理解、判断できる脳とセンスを養ってあげることも同じくらい重要だ。
折れるのが当たり前になったカッターの世界で、「ORANTE」はきわめて興味深い商品だが、最適セグメントは子供ではなく、頭と気持ちはついて行くが、手先の器用さとそれをチェックする眼、スピードがついていかないシニア層以上の世代ではないだろうか。「可愛い子供には旅をさせよ」という格言は、テクノロジーが進化した現代世界でも変わっていないはずだ。
製品名 | 販売元 | 購入価格 |
---|---|---|
ORANTE | PLUS | 600円前後 |