大人の科学マガジンでArduino体験!!

スタパ齋藤
1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコ ンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称 衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。


大人の科学マガジンでArduino体験!!

 唐突なんスけど、今回は世界でも日本でも認知度が上がっているマイコンボードことArduino(アルデゥイーノ)方面のネタをひとつ。ハードルの低さ的に最も取っつきやすいと思われるArduino関連パッケージが発売になったんですな。学研の「大人の科学マガジンVol.27」である。

学研の「大人の科学マガジンVol.27」。この号のふろくはJapanino(ジャパニーノ)と名付けられたArduino互換機で、価格は3360円

 この号のふろくは「テクノ工作セット」。Arduino互換機と光残像キット(POV)が付属するのだ。これを見て、「わりと一般向けのムックとしては、ずいぶんマニアックなテーマですな」……と思う一方で「Arduinoもかなりメジャーになった!?」とか「こういうムックでArduinoが扱われれば裾野がさらに広がって楽しくなるかも!!」など、いろいろ考えたり妄想したり。

 さておき、Arduino好きの拙者としては、とにもかくにも中身をチェック。オモムロにJapaninoを使ってみたりも。もちろんムック本体もいろいろな視点から読んだりして。

 結果、拙者的にとりあえず言えることは、このムック、Arduinoを体験するには最も手っ取り早いパッケージなんじゃないだろうか、と。わりと受け身なスタンスでArduinoの楽しげな部分を一望しつつ体験までしちまうには、たぶんいちばんラク。

 てなわけで以降、「大人の科学マガジンVol.27」の使用感(!?)や読み心地(!?)などについて書いてみたい。

ふろくは、どんなの?

 まず、ふろくですな。具体的にはArduino互換機となるJapaninoと呼ばれるマイコンボードと、これにスコッと接続して即遊べたりする光残像キット(要組み立て)の2大ふろく。

 てゅーか大人の科学マガジンの本体はふろくであり、大人の科学マガジン本体は実はふろくの付属品ッ!! とか思っている俺としては、やはり、オモムロにこれらふろくの写真を見せてゆきたい!!

Japanino本体。低コスト化のため(と思われるが)、部品数を極力省いた構成のようだ。アッサリした見栄えですなArduino Duemilanoveと比べるとこんな感じJapaninoの裏面。日本をイメージさせるシルク印刷が。右下の侍っぽい図案は……ん~むむむ
基板両側にある入出力ピンの配列は、本家Arduinoとほぼ同様。既存のシールドも問題なく接続できるようになっているパソコンのUSBポートにJapaninoを直接挿せるようになっている。USB延長ケーブルを使えば、USBポートとJapaninoを離せる単4形電池×3本が入る電源スイッチ付きの電池ボックスも付属する。もちろんJapaninoに直接接続できる

 赤いレジストのJapaninoには日本国旗らしきシルク印刷があったりして、ちょいとカワイイですな。

 JapaninoのUSBコネクタ部分は、パソコン側のUSBポートに直接挿せるようになっている。一瞬「StickDuino的で便利げ!!」とか思ったが、実際に使っていくとJapaninoのピンにジャンプワイヤがつながりまくることが多いので、やはりUSB延長ケーブルを経由してのUSB接続が実用的。この形状のUSBコネクタにしたのは……やはりコストダウンのためだろうか。

 Japanino両端のピン配列は本家Arduinoとほぼ同様で、既存の各種シールドをそのまま挿せるピン間隔にもなっている。こういうトコロの互換性が保たれているとホッとしますな。

 それからもうひとつのふろく。光残像キット(POV)だが、こういうコトをサクッと行える、非常に楽しい装置である。

ふろくの光残像キット。7個のLEDを搭載し、ハンドルを回すとLED部分が左右に振られる。スピーカー(右下)も内蔵するLEDは赤色。もちろん、どのLEDを光らせるかなどはJapaninoから自由に制御することができる光残像キットから伸びるケーブルは、このよにサクッとJapaninoに(もちろんArduinoにも)つなげられる。あ~マジでお手軽!!

 このPOVっていうか光残像キットはイカシてますよマジで。ArduinoをPOVにして楽しむのは、そーんなには難しいコトではないが、POVとして振り回したり、振り回しても大丈夫な配線/固定などに作り込むのが、作業的にカッタリィといえばそうなのだ。

 が、光残像キットはイキナリ出来合いのPOVであって振り回しても壊れないのであってしかもハンドルを回せば勝手にフリフリ動作をしてくれる!! こういうの作らせたらサスガの学研、とか思っちゃいました。

 ちなみに、この光残像キット、自分で組み立てる必要がある。また、裏面は一部しかカバーされていなくて、基本、内部構造が見えている。出来合いのPOVではあるが、チープ感も少々あるというわけだ。

3360円払うと、何ができるの?

 3360円払って「大人の科学マガジンVol.27」を買うと、何がデキるんスか? ってコトですな、やっぱ単刀直入に知りたいのは。

 基本、Arduino互換機=汎用マイコンボードが手に入るってコトなので、ユーザー次第でヒッジョーに多くのことができたり、LEDチカチカだけで飽きたり、いろいろである。

 でも、「大人の科学マガジンVol.27」というコンテンツ一式を使って、とりあえずデキるであろーコトを書いちゃうと、まずはJapaninoと光残像キットを使ったPOV遊びと音楽(!?)遊びだ。

 Japaninoなどの利用に必要となるソフトウェア類は、Japanino特設サイトから(も)ダウンロードできる。また、同サイトからはPOV遊び用のプログラム(スケッチ)なども得られる。このことはムック本体で解説されている。

Japaninoはパソコンからプログラムする。このとき、専用の開発環境をパソコンにインストールする必要があるが、その方法はムックで解説されているJapanino利用に必要なソフトウェアやプログラム類はJapanino特設サイトからダウンロードできるJapanino特設サイトからダウンロードできるArduino IDE(開発環境)は日本語版。また、マイコンボードの種類でJapaninoを選ぶことができるなど、わかりやすくカスタマイズされている
本誌には光残像キットの使用方法が説明されている。遊び方を説明しつつ、Japaninoの汎用的活用法をさりげなく教えている、という感じだ本誌で説明している光残像キット関連のプログラムは特設サイトからダウンロードできる「こんなふうに遊ぶと楽しいですヨ」的なレクチャーも。そーとー受け身な人であっても、恐らくフツーにArduino互換機でPOV遊びがデキちゃうと思われる

 てな感じで、ふろくのJapaninoと光残像キットを組み合わせてデキる基本~プチ応用あたりまでは、本誌でガッチリと解説されている。また、その実践に必要なプログラムなどは特設サイトから労せず得られる。

 それから、+αの作例。本誌ではさまざまな作者によるユニークなJapanino利用作品例が紹介されている。が、本誌では紹介程度にとどめ、細かな作り方までは説明されていない。

 ただ、これら作例は特設サイトでもフォローされていて、特設サイトを見ればマネて作れるものもある。けど、そうでないものもある。

本誌ではさまざまな作者によるユニークなJapanino作例が紹介されているそれらの作例の作り方やプログラムは特設サイトでも紹介されている作例により紹介の詳しさが異なり、特設サイトを参照すれば誰でも作れるものもあれば、そうでないものもある

 どういうコトかは、実際に特設サイトの作品集の詳細を見ると話が早いが、作者によって解説の深さ/方向が違うんですな。特設サイトでは、部品から回路図からスケッチ(プログラム)までキッチリ紹介している作品もあれば、参照しても「これだけの説明じゃ作れないなぁ」ってのもある。

 作品集ということなので「見ても作れないじゃないか」と文句を言うつもりはナイ。んですけど、特設サイトの作品集部分、作者毎の情報にムラがあるというか、作者の足並みが揃ってないというか、なんかこう読者/Japaninoユーザー的には鬱憤がたまる感じ。ハードウェアや開発環境がオープンソースでも、作例のオープンソース度合いがチグハグだと、せっかくの、ねえ……。このあたり、学研側でしっかりプロデュースして欲しいと思ったりした。

 でも、各作者の作品あたりにトライしようと思う読者なら、それらに近い作例をネット上で見つけられるだろう。このムックでArduino互換機に触れ、さらにいろいろな成果物を作りたいという意欲まで持っちゃったなら、Arduino関連ムックとして大いに意義があったということになりますな。

Arduino初体験には超オススメ!!

 最後にムック本誌についてだが、大人の科学マガジンシリーズだけあって、ネタ集め~取材まで濃くキメてますな。本家Arduino生産現場まで行って取材してる~と思えば、一方でけっこーディープな電子工作の歴史を紐解いたりしていて、なかなかの読み応えであった。

 いわゆる“日本のArduino本”としては「最強に凄まった部数」のムックとなると思われるが、ちょっと残念なのは、Arduino言語についても電子工作についてもあまり触れられていないことだ。Arduino言語については基礎のごく一部のみ軽く説明されていて、電子工作(の実践における基礎知識)についてはほぼスルーな感じ。

 でもまあ、ムックじゃ無理なんでしょうな。とくにマイコンボード(つまりJapaninoなど)の場合、プログラミングも回路作りも平行して考える必要がある。そのふたつの要素を基礎から説明して……いたら分厚い本になっちゃうであろー。

 というわけで、このムックは、本誌を読んでArduinoの存在/使われ方/楽しさのアウトラインを知り、じゃあボクも~てな感じでJapanino+光残像キットでArduino体験して「ワォ!!」と思……うところまでのパッケージと言えよう。その後は、各種書籍やネット上の情報でより詳しくArduinoや電子工作を知ったりなんかして、各自お好きな方向に羽ばたいてネ、みたいなコトですな。ぶっちゃけ、ホントに扉を開いて一歩入ったトコロまでの入門、的な。

 とは言っても、一般向けのムックで、ここまでスムーズにArduinoに触れさせちゃって体験させちゃう(と思われる)のは、大したモンである。ネットでArduinoを調べてる人向けではなくて、「ホラ、あれ、アルディ? マイコン。スペインだっけ?」くらいの人に向けたArduino入門パッケージとしては実に巧く作られている。

 そんな意味まで含めて、Arduinoが何となく気になってる人にとって、現在最もラクなArduino入門パッケージだと思う。また、3360円で互換機+αのハードウェアが手に入ってArduinoの全体像が見えてくるって点で、かなりコストパフォーマンス高いんじゃないだろーか、とも思った。



2010/5/24 09:00