免許・申請不要のトランシーバー

スタパ齋藤
1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコ ンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称 衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。


免許・申請不要のトランシーバー

 今回のネタは特定小電力トランシーバー。え? 今時、トランシーバー!? てな雰囲気はあるが、しかし、侮るなかれ。ときにはケータイより便利&手軽だったりする通信機器なのだ。

特定小電力トランシーバー各種。免許や申請が不要で、購入直後から誰にでも使える無線機だ。通信(通話)できる距離は、市街地で100~200m程度、障害物のない開けた場所なら500m~1kmくらい

 特定小電力トランシーバーは、音声通信(会話など)をするための無線機なんですけど、免許や申請が不要という点が特徴。買ったら即、使っちゃっていいのだ。

 以前はスキー場やビーチなどのレジャーな場所で使っている人が多かったが、最近はケータイが超普及したので、このテのトランシーバーはあまり見かけなくなった。

 特定小電力トランシーバーは、通信できる距離が市街地で100~200m程度、見通しの良い郊外でも500~1kmくらいしか電波が届かない。ケータイのように圏内ならどんなに遠くの人とも通話可能ってわけではないので、より確実性のあるケータイに座を奪われた感じですな。

 しかし、現在でも特定小電力トランシーバーは活用されている。例えば店舗。大きなフードコートなんかで無線にて業務連絡したりしてますな。小規模なイベントなどでも然り。やや密に連絡を取り合う必要がある状況において、免許・申請不要でありかつ通話料のかからない特定小電力トランシーバーは意外に大きな需要があるわけだ。

 もちろんレジャーなど個人で使用しても役立つ。前述の通信距離の限界はあるが、ボタンを押せばすぐ相手に声を伝えられ連絡を取り合える利便は大きい。また、ケータイの場合は基地局がない=通話圏外だとつながらないが、特定小電力トランシーバーの場合は端末と端末が直接電波で通信するため、(通信可能距離内であれば)どこでも連絡を取り合える。

 てなわけで今回は、最近はマイナーな存在になったけれども使えば便利な特定小電力トランシーバーについて、アレコレ書いてみたい。



どんなふうに役立つのか?

 まず、特定小電力トランシーバーが実際どのよーに役立つのか、いくつか例を挙げてみたい。

 例えばキャンプや釣りなんかのアウトドアレジャーですな。各人ややバラバラで行動しがちな状況で、アッと思ったら即、特定小電力トランシーバーで連絡しあえるのが便利。ひとりの声が仲間全員に伝わるという点もひとつの利便だ。

 特定小電力トランシーバーは、PTT(Push To Talk)ボタンを押している間、こちらの声を複数の相手に伝えられる。相手の声を聞くときは、PTTボタンを離す。「こちら○○です、バーベキューの準備ができました、どうぞ」「こちら△△、了解しました、飲み物持って戻ります、どうぞ」みたいに交互に発言するのが基本だ。ちなみに、ケータイのように相手とこちらが同時に話をできる機種もある。

 トランシーバーを持っていれば、同時に複数人数でやりとりできる。トランシーバーのPTTボタンを押して発言すると、その声が各トランシーバーに届く。ので、例えば、ボートに乗ってやや散り散りになっている仲間に「皆さん、そろそろ帰るから桟橋に集合~」と発言すれば、その声が仲間全員に伝わるというわけだ。

特定小電力トランシーバーで通信する場合、双方のチャンネルを合わせる必要がある。同じチャンネルが設定されたトランシーバーどうしで会話ができるというわけだ。また、チャンネルに加え、グループ(トーク)番号を合わせれば、仲間以外のユーザーとの混信を避けられる

 ひとつの利便として、PTTボタンを押すだけで声を送れるということがある。特定小電力トランシーバー使用時は、ふつー電源入れっぱなし。で、上記のようにPTTボタンを押して話せば、即座に仲間へ声が伝わる。ケータイのように、発信先を選んでの発話操作~相手側の受話操作などは不要なのである。この手っ取り早さ手軽さは、やや頻繁に連絡を取り合う際に非常に快適だ。

 ちなみに、現行機種の特定小電力トランシーバーは、まあ機種にもよるし通話する頻度にもよるんですけど、フツーに1日中使っても電池保ちますな。釣りとかで、朝から夕方まで釣って、1時間に数度連絡取り合う程度だったら、2~3回の釣行くらいは保つんではないだろうか。

 それから、前述のように通信可能な距離内であればどこでも連絡を取り合える点。例えばケータイの場合、ビミョーにマイナーな観光地とか行くと、キャリアによって通話圏内/圏外が分かれることがある。場合によっては全キャリア圏外とかも。

 特定小電力トランシーバーなどの無線機なら、場所によって通信機器として使える/使えないという問題は起きない。人里離れた場所でもドコでも使える。もちろん通話料金という概念もナイ。……ただ、通信できる距離(後述)という制限はあるのだが。



どのくらい飛ぶ?

 免許や申請が不要で、ボタン押せばすぐ声を伝えられて、いろいろな場所で使える特定小電力トランシーバー。多くのケースで役立ってくれるが、使いづらさとしては“電波があまり飛ばない”という点がある。

 特定小電力トランシーバーと名が付く無線機全般は、最初から出力が決まってるんですな。送信出力10mW。無線機全般からすれば非常に小出力と言える。

 で、具体的にどのくらい電波が飛ぶか=どのくらい遠くの相手とやりとりできるかだが、ぶっちゃけ、状況に大きく左右される。

 広々としていて建物とか林とかがなくて、しかも相手が見えるような場所なら、1kmくらいの距離なら余裕で通信できたりする。展望台から眼下に見える相手、とかだとさらに遠距離でも大丈夫だったりする。

 逆に、ビルが林立するような市街地だと、100mくらい離れるともうノイズが増える、ってこともある。建物内だと、相手が見えなくなると間もなくノイズだらけで通話不能みたいなことも。

 レピーターと呼ばれる中継器を利用すれば通信可能距離をグッと延ばせるが、どちらかと言えば業務用の装置。ちょいと手を出しにくい。

 経験上、良好に通信できる距離や状況は……基本的には相手の姿が目視できるなら問題は少ない。でも、特異な形状の構造物のなかとかだと、なーんか相手の姿がモロに見えるのにノイズが多いってケースもある。

 それから、やはりダダッ広い場所。湖の上で、こちらも相手もボートの上、しかも双方目視できるって状況だとかなり良好だったりする。距離も要素だが、むしろ周囲に障害物が少ないってのがポイントかもしれない。例えば、双方高いビルの上階にいて、相手の位置が見えるような関係だと、かなり距離があっても通話できたりする。

 逆に、障害物があると途端に通信可能距離が短くなる感じ。渓流みたいなところで使ったことがあるが、デカい岩があったり周囲が森だったり、しかも起伏が多々あったりすると、なかなか厳しい。

 なお、特定小電力トランシーバーの場合、本体にアンテナを外付けしたりするのは法律違反になる。アンテナを適切な長さに伸ばすことができれば、送信・受信ともより良好になるハズだが、それはやっちゃダメ、と。てなわけで、通信可能距離にこだわるなら、本体の送受信性能が良いことはもちろん、アンテナが極端に短い機種などを避けることが大切かもしんない。

通信可能距離や音質の面では、アンテナの長さも重要。ただし、アンテナが長いから劇的に通信可能距離が伸びる、てなことはなさげ。アンテナも大切だが、周囲の障害物など条件の影響が大きいアンテナをこのように折りたためる機種もある。短距離ではアンテナを折り、やや遠距離ではアンテナを立てて使える。携帯時も便利ですな日本国内で使用可能な特定小電力トランシーバーには“技適マーク”が付いている。このマークが付いていないトランシーバーを使うと違法(電波法違反)となる可能性がチョー高い

 ちなみに、オークションとかで売られている“海外製トランシーバー”とかで出力が1Wとか5Wとかそーゆーのは、トランシーバーではあるかもしれないが“特定小電力トランシーバー”ではなかったりする。日本国内で使うことがそもそも法律違反になったり、あるいは免許や申請が必要なものだったりすることもあるので、ご注意を。



どうやって使うの?

 特定小電力トランシーバーの使い方は簡単だが、無線機なので普通一般の機器にはない設定なども若干ある。以降、現在、一般向けの主流として売られている“20ch機”を例に話を進めよう。

拙者が使用中の20ch機、ケンウッドDEMITOSS UBZ-LK20。主流の(他社製)20ch機と通信できるほか、従来の9ch機や11ch機とも通信できる拙者がまだ使用中の11ch機、ケンウッドDEMITOSS UBZ-LG11。9ch機とは通信できない。が、11ch機や20ch機となら通信できる20ch機であれば、従来の9ch機や11ch機とも通信できる。てか、現在買えるのは20ch機が主流ですな

 特定小電力トランシーバーはけっこー昔からあって、以前は業務利用を想定した11ch機と、レジャー利用を想定した9ch機に分かれていた。それぞれ周波数の違う11種類や9種類のチャンネルを持つトランシーバーで、トランシーバーどうしを同じチャンネル(周波数)に合わせると通信できる。11ch機と9ch機では、セットされている周波数が異なるので、相互に通信できない。

 が、現在は上記の11ch機と9ch機の両方の周波数を使える20ch機が主流になっている。20ch機があれば、20ch機側のチャンネル設定で、従来の9ch機とも11ch機とも通信できるので、これから買うなら20ch機ですな。

 さておき、使う段では、双方のトランシーバーを同じチャンネルに合わせる。以降、PTTボタンを押せば話をできる。チャンネルを合わせた特定小電力トランシーバーは、相互に通信できるわけだ。

 チャンネルを合わせれば相互で通信できるという点は、特定小電力トランシーバーのメーカーが異なっても同様。特定小電力トランシーバーの基本的な仕様は統一されているので、別メーカーの特定小電力トランシーバー間でもフツーに通話できるんですな。

 もうひとつ、チャンネルさえ合っていれば通信できるということは、仲間以外のヒトがチャンネル合わせちゃうと、仲間内の会話を聞かれてしまうし、仲間内の会話に割り込まれる可能性もある。ので、特定小電力トランシーバーでヒミツの話をするのは危険。特定小電力トランシーバーはケータイとは違い、FMトランスミッタのよーな“放送局”と考えるべきだ。

 ところで、現行の20ch機でも、要はチャンネルが20個しかない。20を超える集団が特定小電力トランシーバーを使うような状況で混信っていうか混乱しちゃうんでは? そのような場合、いわゆる“グループモード機能”を使えばよい。

 グループは、チャンネルのなかにある副チャンネルのようなイメージ。例えば、上の写真のDEMITOSS UBZ-LK20の場合、チャンネルが20あって、それぞれのチャンネルのなかにさらに38個のグループがある。市内局番と電話番号みたいな関係ですな。1~20が市外局番、1~38が電話番号とすれば、20×38=760通りの通信チャンネルがあるという感じ。

 なので、あらかじめ「チャンネル15でグループ30ね~」的に示し合わせておいて、現場でチャンネル15・グループ30で通信すれば、誰か別の知らないオジサンとかが通話に割り込んでくるとか、別のグループの会話に入り込んじゃうって可能性が下がる。

 ただ、注意しておきたいのは、グループを何番に設定していようが、同じチャンネルに合わせていれば、やり取りされる声は聞こえるということ。チャンネル15・グループ30に設定して仲間内で話をしているつもりでも、誰か別のよくわからないオジサンがたまたまチャンネル15に合わせたら、仲間内の会話が筒抜けとなる。しかし、そのオジサンがグループ30に設定しない限り、オジサンの声が仲間内に聞こえてくることはない。

 グループ番号設定は、仲間内以外の通信を聞こえないようにしているだけで、仲間内だけで話せる/聞けるホットラインを作っているわけではないということですな。また、特定小電力トランシーバーの場合、チャンネルを合わせられてしまえば、声のやり取りはダダ漏れであるということだ。このあたり、場合によっては要注意ですな。

 機種によっては、さらに会話の音声の秘匿性を高めるシクミを持つ。音声を反転させて聞き取りにくくする“秘話モード”や“スクランブルモード”だ。これを使えば、音声が誰かに聞かれてしまっても、その音声がモゴモゴした意味不明サウンドとなるので、大きな問題には発展しにくいだろう。なお、こういったモードについて、メーカーや機種毎の互換性にすいては詳しく知りませんスイマセン。こういったモードは同一メーカーの同一機種どうしで使うのが無難かも。

 また、デジタル式の特定小電力トランシーバーもある。このタイプは会話する音声がデジタル化されるため、第三者に会話が漏れる可能性が非常に少ない。

 なお、特定小電力トランシーバーを使う場合、マナーにも注意したいところ。例えば現地で既に誰かがチャンネルを使っていたら、別のチャンネルを使うとかですな。最近ではユーザーが少ないのでそういったケースは多くないと思うが、ちょっとした気配りでトラブルが避けられると思うので、ゼヒ。



どれを買うかが難しい!?

 今時的な特定小電力トランシーバーは、操作も容易だしポケッタブルだし、電池もよく保つ。「あのときあったら便利だったかも!?」と思い当たる人なら、たぶん、そのうち、役立つと思うので、一組持っていてもいいかもしれない。

 とか言いつつ、ぶっちゃけ、ある意味、選ぶのが難しいですな。使ってみたら操作感がイマイチだった、音が良くない(声が聞き取りにくい)、設定を行いにくいなど、それぞれの機種によって細かな使い勝手がかなり違うからだ。電波の飛びとか受信感度なんかも機種によって微妙に異なるようだ。

 ちなみに拙者が主に使っているのはケンウッドのDEMITOSSシリーズ。他の機種とビシッと比較したわけではないのだが、DEMITOSSシリーズは旧機種も現行機種も音質が良いと感じられるってのがひとつ。聞き取りやすい&伝わりやすいと思う。

 また、DEMITOSS UBZ-LK20は操作性も良好。画面表示要素も多めで、ボタン操作も理解しやすいので、久々に引っ張り出してきたけど……どーやって設定すんだっけ? みたいなことが少ない。

拙者の小電力トランシーバーはケンウッド製が多い。左が現行機種のDEMITOSS UBZ-LK20、右が旧機種のDEMITOSS UBZ-LG11。現行機種のほうが設定など操作性が良いUBZ-LK20の表示パネルやボタン類。扱いやすいインターフェースだオプションのリモコン対応ボリューム付きスピーカーマイクロホンSMC-34。15年くらい前に買ったオプションだが、UBZ-LK20でもUBZ-LG11でも使用できた

 てのが拙者の好みだが、ぶっちゃけた話、最初は激安品を買って試してみるのがいいかもしれない。特定小電力トランシーバーは基本的な仕様・規格が揃っているので、高級機を買ったからと言って初心者における実用性に大きな差がでることはあんまりナイ。ので、チョイと試してみて、欲しい要素などを考え、自分に合った1台を探していくってのが好ましいし楽しいやりかただと思う。

 とか言ってみたが、現在の拙者がコレが欲しい~っ!! カワイイ!! 衝動買いしそう!! だけど、けっこー高級機!! しかしこのくらいスタイリッシュだと、トランシーバーっつーモノのイメージが変わって愉快かも。

2009/8/24 11:04