スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」

AirPods Proは買いか? ソニーのWF-1000XM3よりイイ?

大評判のAirPods Pro、買って使って、どうなった?

 アップルから2019年10月31日に発売された「AirPods Pro」(公式ページ)。完全ワイヤレスイヤフォン「AirPods」シリーズの最新機種で、アップル初のノイズキャンセリング機構搭載イヤフォンという点で話題沸騰中です。

アップルの「AirPods Pro」。完全ワイヤレス型のBluetoothイヤフォンで、強力なノイズキャンセリング機能(アクティブノイズキャンセリング)を搭載しています。iPhoneやiPadやMacと接続できるほか、もちろんBluetooth対応のスマートフォンや各種音源とも接続可能。従来のAirPodsシリーズと比べるとマイク部分(白い棒状の突き出し)が短くなり、耳の穴にやや押し込んで使うカナル型になりました。同梱のケースにより充電でき、ケースはUSB充電にもQi充電にも対応しています。イヤフォンのコーデックは未公開ですがSBCとAACに対応していると思われます。アップルストア税別価格は2万7800円。

 iPhoneやiPadをスゲく多用する筆者なので、AirPodsシリーズが欲しかったんですけど、これまで買いませんでした。というのは、従来のAirPodsのイヤーピース形状が自分に合わなかったから。あと、白い棒状部分が長すぎて……外見的に違和感があったからです。

 しかし最新型のAirPods Proは、白い棒状部分も短くなりつつカナル型になったので、AirPodsシリーズに対する筆者的懸案は解消。また発売と同時に大きな話題となっているので、迷わず購入しました。結果、かなりイイ感じ♪

 筆者はソニーの激売れ完全ワイヤレスイヤフォン「WF-1000XM3」(レビュー記事)を愛用中ですが、AirPods Proを使ってみたら、正直言って「強力なライバル登場」という印象を受けました。AirPods Proが圧勝する箇所があったり、WF-1000XM3の方がずっと秀逸という部分もあったり。てなわけで以降、WF-1000XM3(ソニーストア税別価格2万5880円)ともちょいちょい比べつつ、AirPods Proをレビューしてみたいと思います。

小さい~、Qi対応は超便利~♪

 前述のとおり、AirPods Proは完全ワイヤレス型のBluetoothイヤフォン。左右分離型で完全コードレスの無線イヤフォンですね。イヤフォンタイプとしてはカナル型で、耳の穴に軽く押し込むようにして使います。AirPods Proを写真と説明文で見ていきましょう。

AirPods Proは完全ワイヤレス型のカナル型イヤフォン。突き出た棒状の部分の長さは2cm弱で、従来のAirPodsシリーズのように「耳から長く白い棒が出ている」というイメージにはなりません。「耳に白いイヤフォンしてるのかな」くらいな印象。パッケージにはAirPods Pro本体と専用のバッテリー内蔵ケース、イヤーピース(3サイズ)、Lightning-USB-Cケーブル(ケース充電用)が付属しています。
AirPods Pro本体は満充電から最大4.5時間連続再生が可能。ノイズキャンセリングや外部音取り込みなどの機能をオフにすれば最大5時間使えます。専用ケースはバッテリーを内蔵していて、AirPods Proを収めればイヤフォンが自動的に充電されます。本体と専用ケースのバッテリーをトータルすると24時間使用可能。電池の保ちは十分といった印象。またこのケース、Qi充電に対応しています。置くだけ充電やっぱり便利!
シリコーン素材のイヤーチップは交換可能で、S/M/Lの3種類が同梱されています。それぞれのサイズで使い比べてみましたが、筆者の場合はどのサイズでもフィットし、どのサイズでも音漏れはありませんでした(iOSのBluetooth項目からAirPods Proの設定や音漏れテストを行えます)。結局、最小のSサイズにして使用中。AirPods Pro本体片側の質量は5.4gで耳への負担も軽いという印象ですが、使うイヤーチップが小さいほどAirPods Pro独自の軽快な装着感が高まるように感じます。ちなみにソニーのWF-1000XM3は片側約8.5gで、AirPods Proと比べると少々重め強めの装着感(耳穴がやや圧迫される感触)があります。
それぞれ、左がAirPods Proで右がソニーWF-1000XM3。イヤフォン本体も充電用ケースも、AirPods Proの方がかなりコンパクトです。

 AirPods ProとソニーのWF-1000XM3を比べると、ケースまで含めたバッテリー持続時間は24時間で互角です。が、イヤフォン本体が小さくて装着感がよりライトなことや、ケースも小さくてQi充電にも対応(←スゲぇ便利)しているあたり、なるほど後発アップル製品の方がイイな、と。小型軽量軽快を重視するならAirPods Proですネ。

 また、iPhoneやApple Watchとの連携も良好。セットアップから活用までのハードルが低いのもイイ感じです。

購入後のセットアップは非常に簡単です。iPhoneなどアップル製スマートデバイスにAirPods Pro(ケースに本体を入れてケースの蓋を開いた状態)を近づける程度。直後に基本的な使い方まで教えてくれます。さすがアップル純正品というスムーズな使い勝手です。
左は、iPhoneの設定→Bluetooth→AirPods ProからAirPods Proの各種設定を行っている様子。中央と右は、Apple Watchのミュージックアプリ左下のAirPlayアイコンをタップして、AirPods Proの現在のノイズコントロールモードの確認や切り替えを行っている様子。この他、AirPods Proへ話しかけてSiriを使うこともできます。AirPods Proを装着した状態で「Hey Siri」の後に指示を言えば、音楽の再生や音量調節や曲の贈り戻し等々を始めとするSiriの各種機能を利用できるわけですが、iPhoneなど端末をいちいち出したり操作せずに済むのは快適です。

 iPhoneの設定項目や基本的なアプリに、AirPods Proの設定項目が追加されるような感じで使えるようになります。新たにアプリを導入して使い慣れるような必要もナシ。小型軽量軽快を重視しつつ、iPhoneなどとの高い連携性を求めるなら、ますますAirPods Proですネ~。

いきなりハイレベルなノイズキャンセリング性能!

 肝心のノイズキャンセリング性能ですが、使った途端に「すげっ!」と声を出しちゃいました。完成度が非常に高い。大雑把な言い方をすれば、AirPods Proのノイズキャンセリング性能は、完全ワイヤレス型イヤフォンとして最強のノイズキャンセリング性能があると評判のソニーWF-1000XM3に肉薄しています。

 例えば、窓を開け放った室内でAirPods Proを装着し、ノイズキャンセリングをオンにすると。ほとんど無音状態になります。ハードディスクアレイのノイズも、PCのファンの音も、さっきまで聞こえていたクルマの排気音やロードノイズも、全部消える。話しかけられた声も聞こえないレベル。ただ全て消えるわけではなく、鳥の甲高い鳴き声や高い金属音などは少々聞こえてきます。メカニカルキーボードをタイプするときの、やや高いノイズも聞こえてきます。

 筆者が体験した中で、完全ワイヤレス型イヤフォンにおいて、AirPods Proのノイズキャンセリング性能は最高クラス。AirPods Proはアップル初のノイズキャンセリングイヤフォンですが、一発目でここまで高い性能を出してくるとは驚きです。凄い!

 AirPods Proのノイズキャンセリング機能は、本体外側のマイクでキャッチした雑音に対し、その逆位相の音波を混ぜ、雑音と逆位相音波で互いに打ち消し合わせるというシクミ。基本的には他のノイズキャンセリングヘッドホンと同様のシクミですね。

 AirPods Proのノイズキャンセリングは3つのモードを切り替えられて、それぞれ「ノイズキャンセリング」「外部音取り込み」「オフ」(初期設定ではオフにできない)です。これらは、本体の筒状の張り出しを長押しするようにつまむか、Bluetooth設定を使うか、Apple Watchから変更することができます。

AirPods Pro本体外側にノイズを取り込む黒いマイクがあります。棒状の部分の窪みは感圧式のスイッチになっており、そこを長くつまむことでノイズキャンセリングのモード変更を行えます。また、iPhoneなどのBluetooth設定やApple Watchからもモード変更可能。Siriを使ってもノイズキャンセリングのモードを変更できました。

 凄いノイズキャンセリング性能を引っ提げて登場したAirPods Proというわけですが、しかし、ソニーのWF-1000XM3にも同等かそれ以上に強力なノイズキャンセリング性能があります。また細かいことを言えば、WF-1000XM3はノイズキャンセリングや外部音取り込みをシチュエーション別に自動切り替えしてくれたり、好みや必要性に応じて効果の度合いを細かく設定できます。なので、総合的なノイズキャンセリング性能・機能性としてはWF-1000XM3の方が秀逸だと思います。

 ただ、これまでノイズキャンセリングイヤフォンなどに触れて来なかった人が、AirPods Proで初めてノイズキャンセリング体験をする、というケースがかなり多いと思います。そしてAirPods Proのノイズキャンセリング性能は、完全ワイヤレス型イヤフォンとしては現在最高クラスと言えます。「えっ騒音ってこんなに消せるの!」と仰天する人が多出。市場に強いインパクトを与えるのはAirPods Proでしょう。

 ついでに、AirPods Proの品薄が示すように、やっぱり売れてるわけで、完全ワイヤレス型のノイズキャンセリングイヤフォンが急激に普及している状況。恐らく数の力でAirPods Proがノイズキャンセリングイヤフォンのスタンダードになることでしょう。そのスタンダードには最強レベルのノイズキャンセリング性能がある。ノイズキャンセリングというもののハードルが一気に上がっちゃいますね、「AirPods Proくらい騒音が消えないとね~」みたいな。そんなこんなで、ノイズキャンセリングヘッドホン界隈がいい意味でも悪い意味でもいろいろ変わるような気がしますので、今後もじっくり見ていきたいところ。

 とか話が逸れましたが、AirPods ProもWF-1000XM3もどちらも「凄い」と言えるレベルのノイズキャンセリング性能を持っています。ので、ノイズキャンセリング性能を重視するという場合、まあどちらを選んでも満足感が高いとは思います。

 ただし、AirPods Proはより軽快な装着感とともに強力なノイズキャンセリング性能を享受できます。なので、より違和感の少ないつけ心地で最高レベルの騒音除去をしたいなら、AirPods Proのほうがちょっと魅力的と言えそうです。

音質は好みだけど、筆者的にはWF-1000XM3の圧勝

 ノイズキャンセリング性能と同様に非常に重要な性能である音質ですが、筆者的にはWF-1000XM3の方が優れていると感じられました。AirPods ProとWF-1000XM3を聴き比べるほど、明らかかつ圧倒的にWF-1000XM3の方がイイ音だな、と。

 AirPods Proの場合、高音にキレやエッジ感が物足りませんし、ボーカル域での声の質感もやや平坦で、低音の厚みや立体感もいまひとつ。でも音が悪いってわけではなく、音楽を楽しめるレベルではあると思います。ただ集中して鑑賞したり音を精査したりすると「ん? ここのサウンドがモヤッとしてるなあ」みたいな不満が残りがち。一方で、疲れず長時間聴ける音質という印象もあります。

 WF-1000XM3は、完全ワイヤレス型のイヤフォンとして音質が非常に秀逸。このカテゴリーでは文句なしにサイコーの音質だと思います。そういう逸品と比べちゃっているので、「AirPods Proの音質は平凡」と言わざるを得ません。

 ノイズキャンセリングは「屋外でも周囲のノイズを最小限に抑えつつ高音質で音楽を堪能できる」ということにもつながる技術ですが、高音質での音楽鑑賞を重視して選ぶなら、ノイズキャンセリング性能も音質も最高レベルのソニーWF-1000XM3が良いように思います。

 まあでも、音質はユーザーの好み次第。何を求めるかによって評価が変わりますし、聞く曲なんかによってもけっこう変わってきます。ので、最高レベルのノイズキャンセリング性能を持つ2機種、AirPods ProとWF-1000XM3の聴き比べをし、ご自身で判断するのが最良の策です。

AirPods Proは買いなのか?

 果たしてAirPods Proは買いなのか? とか問われた場合、物欲野郎の筆者としては「買わず使わず体験せずはツマンナイから買ったほうがいいヨ! 最強レベルのノイズキャンセリング性能だし!」とか軽率に言っちゃうわけですが、率直なところ、ノイズキャンセリングイヤフォン未所有で「騒音がバッチリ消えるやつ欲しいナ」と思っているなら、買い度が非常に高いです、AirPods Pro。

 まず完全ワイヤレス型イヤフォンとして最強レベルのノイズキャンセリング性能があるから。そして、そういう騒音カット体験にきっと驚けますし喜べます。生活が変わる可能性も小さくありません。

 それから、軽快な装着感と十分な音質と、充電や携帯の利便についても、AirPods Proはハイレベル。耳穴周辺にあまりストレスがかかりませんし、音質も悪くはありませんし、Qi対応充電のバッテリー内蔵ケースは小さくて携帯性もイイ。

 あとiPhoneなどとの連携性も良好。まあアップルが作ってるわけですから、iOSやiPadOSとの相性が悪いわけがありません。

 他、筆者がAirPods Proを使っていて感じたことをご参考までに挙げてみますと……例えば耐汗耐水性能(IPX4)という点に安心感がありますね。IPX4は「あらゆる方向からの飛まつによる有害な影響がない(防まつ形)」ですが、これなら汗をかくスポーツ中に使っても大丈夫。

 あと、テキトーに使ってもOKな感じがけっこうある。電源のオンオフを気にせず使えますし、左右片方でも使えますし、ケースに入れれば充電してくれます。全体的に「ユーザーがやりそうなことを予測して混乱なく使えるよう設計してある」という印象で、ラクに使える製品です。

 音の遅延も非常に少ない感じ。トーク番組やアニメや映画などの動画は違和感なく鑑賞できますし、タイミングにシビアでないゲームならフツーに違和感なく遊べます。音楽系アプリはさすがに遅延が感じられがちですが、ナゼかGarageBandだと違和感がありません。

 ハンズフリー通話は数度実験した程度ですが、完全ワイヤレス型イヤフォンとしては「こちらの声が明瞭に伝わりやすい」という気がします。Siriに対する指示も伝わりやすいので、ユーザーの声をしっかり拾ってくれているようです。

 それから、残念な点も書いておきましょう。ひとつはAirPods Proの質感。表面がツルツルなので、ケースに対する出し入れがしにくかったり、やや注意しないと指が滑って落としそうになったり。

 あと、本体に対する操作で「できることが限られる」ということ。棒状の突き出し部分をつまむ操作ですが、曲の再生と一時停止、送り戻し、ノイズキャンセリングのモード変更やSiri利用くらいしかできません。まあそのくらいできれば十分実用的ではありますが、ソニーのWF-1000XM3あたりはもっとイロイロできつつ、ユーザーによるカスタマイズもわりと柔軟に行えるので、比べちゃうとやや残念なAirPods Proかな、と。

 再三登場するソニーWF-1000XM3ですが、これとAirPods Proでは、製品としてのあり方が全然違うんでしょうね。WF-1000XM3の方は、ユーザー毎に違う嗜好に対応すべく柔軟にカスタマイズできるという感じで、ユーザー本位の製品を作っているというスタンス。AirPods Proはアップルが信じる利便と品質をイージーでスマートな使用感にまとめ、ユーザーに提供するというスタンス。そもそも競合しないのかもしれませんね、ユーザー層において。いや全然違うかもしれませんけど。

 でもまあ、わりと万人受け感がするAirPods Pro。完全ワイヤレス型イヤフォンにおいて最強クラスのノイズキャンセリング性能は確かですので、ぜひどこかで体験してビックリなさってください!

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。