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ソニー「wena wrist pro」でスマートウォッチ!

ソニー「wena wrist pro」でスマートウォッチ!

 去年、2017年3月にソニーのスマートウォッチ「wena wrist」(公式ページ)のレビューをしました。異色のスマートウォッチ……というかスマート腕時計バンドですね。時計本体(ヘッド)部分はごく普通の腕時計で、時計バンドにスマートウォッチの機能を内蔵しているという製品です。

ソニー「wena wrist」(Three Hands モデル)。ヘッド部分は普通の腕時計で、時計バンド部分にスマートウォッチ機能を内蔵。LEDランプやバイブレーションで電話やメールやアプリなどの通知が行われるほか、電子マネー機能も搭載しています。
「wena wrist」は、スマートウォッチとしては時計バンド部分のみで機能し、バンド部分は工具無しで容易に外せます。ですので、バンド幅(ラグ幅)などが合えば、wenaシリーズ以外の一般的な腕時計のヘッドを装着することが可能。フツーの腕時計を手軽にスマートウォッチ化できるというわけです。

 試用してみて「うわ~コレはイイ!」と思ったんですが、当時の「wena wrist」はバンドだけでは購入できず、ヘッド込みで販売されていましたので、購入を躊躇。その後2017年7月にはバンド単体で販売されるようになり、楽天Edy機能のみ搭載された「wena wrist leather」も発売されました。

 じゃあそろそろ買おうかナ、と思っていたら2017年末から現在にかけて新機種が続々登場。「wena wrist」の機能強化版である「wena wrist pro」、ランニングなどスポーツ向けの「wena wrist active」、それからヘッドとしてソーラー発電対応モデルや機械式モデルも発売されました。

左写真は「wena wrist pro」(左2本)と「wena wrist active」(右)。通知表示としてLED点灯やバイブレーションに加えて、有機ELによる文字表示が加わりました。左写真は新たに加わったヘッドで、上段が機械式、下段がソーラー発電対応モデルです。

 バンドもヘッドも、けっこー前のめりな感じで新型発売ですね~。とりわけ、バンドに加わった有機ELはちょっと便利そう。そう思い、去年末に「wena wrist pro」(バンド部単体)を購入し、現在まで約2ヵ月使っています。てコトで以降、「wena wrist pro」の機能や使用感についてレポートしてみたいと思います。

どう使える? 何ができる?

 購入したのは「wena wrist pro」(公式ページ)のシルバー(WB-11A/S)。ネット通販で税込3万7670円でした。バンド単体で、ラグ幅(ベルト幅)が22mmの腕時計ヘッドを取り付けて使えます。

wena wrist proはバンド単体で販売されています。対応ラグ幅は22mmで取り付け時には工具不要なので、すぐに手持ちのラグ幅22mmヘッドを取り付けることができます。別売のエンドピースを使えば、ラグ幅18mmや20mmのヘッドも取り付けられます。右写真はTISSOT(ティソ)の「T-COMPLICATION SQUELETTE(T-コンプリカシオン スケレッテ)」(公式ページ)という機械式時計ヘッドをwena wrist proに装着した様子。イイ感じです♪ ちなみに、メーカーに確認してみたところ、wena wrist proの電子回路や磁力などが機械式腕時計に悪影響を与えることはないそうです。

 使い方ですが、基本的にはスマートフォンとBluetoothでペアリングさせて使います。wena wrist proの設定などは専用アプリから。スマートフォンに着信があった場合などに、設定に応じてwena wrist proへ通知が行われます。通知は、LED点灯やバイブレーションや有機EL上での文字表示などで行われます。

 ほか、バンド部分にFeliCaを搭載しており、楽天EdyやiDなどをはじめとする電子マネーを利用できます。活動ログ機能も備えており、一日の歩数や消費カロリーや睡眠状態などを専用アプリから確認できるほか、iOS端末なら活動ログをAppleヘルスケアアプリへ自動登録することも可能です。

アプリでの設定に応じて、wena wrist proに通知が表示されます。もちろん通知時にバイブレーションも動作。ほか、簡単なボタン操作でバッテリー残量や電子マネー残高を表示させることができます。
専用アプリ「wena」(iOS版)を使っている様子。wena wrist proの設定や各種ログ確認などができます。活動や通知のログは、その詳細を表示することも可能。活動ログの一部をAppleヘルスケアアプリへ自動登録することもできます。
ほぼ全ての設定を「wena」アプリから行えます。表示LED色やバイブレーションパターンを確認しながら設定可能。「特定の人物からの電話着信があった場合にLED色を変える」といった設定も可能です。

 こんな感じで、Apple WatchやAndroid Wearと比べると、できることは多くないどころか「かなり少ない」です。筆者の場合は、電話の着信を受け損ねないことや、メールなどの新着も知りたいこと、あとはたまにEdyが使えればいいかなというくらい。なので、wena wrist proの機能性は十分といった印象です。十分不十分はユーザーにより違うと思いますが、筆者の場合は「さらにやるなら直接スマートフォンをいじればいいじゃん」と考えちゃいますので、wena wrist proがちょうどいいかな、と。

 それ以上というかそれ以前に、「好みのヘッドと組み合わせられる」「好みのヘッドをスマートウォッチ化できる」というのがwena wrist proの魅力。世の中にはカッコイイと感じられる腕時計ヘッドが無数にありますので、「そういうアイテムを装着する場所」を占拠せずにスマートウォッチの利便をもたらしてくれるwenaシリーズはヒッジョーに嬉しい存在だと感じています。

使い心地、着け心地

 最新型wenaとなるwena wrist proは、従来のwenaから機能が増強されました。具体的には、有機ELディスプレイの搭載、薄型化・小型化、防水性の向上といったあたりです。

 実際に使っていて「これはイイな」と思えるのは、まず有機ELディスプレイ。小さいながらも2行の日本語テキストを表示でき、視認性もまずまず。たとえばwena wrist proのバイブレーションで通知を知り、有機ELに目をやると、何の通知なのか、内容は何か、などがだいたいわかります。メールなら、送信元とタイトルといったあたりがわかる感じ。「なんだスパムか」「あっこれは今すぐ対応しなくちゃ」といった判断ができます。従来機種はLED点灯だけの表示でしたので、たとえば「メールの中身が気になってついスマートフォンをいじっちゃう」ということがアリガチでしたが、有機ELが使えるとそんな小さなストレスもなくなってイイ感じです♪

有機ELは1行表示と2行表示をアプリから切り替えられます。表示から知り得る内容は、1行でも2行でもだいたい同じ。見やすさや視力で、1行/2行を設定する感じでしょうか。

 ほか、体積比で約25%の小型化がなされたとのことですが、使ってみると「なるほど」という感じ。初代のwena wristを試用したときは「僅かにゴツめのバンド」という感触でしたが、wena wrist proは「普通の時計バンド」という印象。もう少し薄くてもイイな、とは思いますが、「なかに回路が入っているからこのゴツさはしょうがない」といった微妙にネガティブな要素も解消されたと思います。

 ちなみに、実際に使っていてのバッテリー持続時間ですが、満充電から7日間でバッテリー残量が20%くらいになっていることが多いです。Bluetooth接続設定を電池消耗が大きいほう(iPhoneを探し続ける)にしていて、そんな感じ。どうもバッテリー残量が20%になると特殊なパターンのバイブレーションが動作するようで、そのバイブレーションで満充電からの経過日数を思い返すといつも7日目だったりします。ともあれ、フツーに1週間はバッテリーが保つ製品だと思います。

 あと、相変わらずイイ感じなのが、バンド両端にあるレバーピン。腕時計ヘッドにバンドを装着するとき、普通はバネ棒という部品を専用工具で外す必要がありますが、wenaシリーズは「レバーピン」と呼ばれる部分を指でつまんで装着できます。工具不要で手軽♪

レバーピンをつまんでホールドしたまま腕時計ヘッドに挿し、レバーピンを離して少し動かせば、ピンがヘッドにカチンと固定されます。外す時はレバーピンをつまんでホールドし、そのままバンドを引き抜くだけ。一部の腕時計では従来からある方式だそうですが、「時計バンドは全部この方式にしてほしい!」と思うほど便利です。

 筆者はwena wrist proに5種類くらいのヘッドを付け替えていますが、このレバーピンにより、ヘッドを外して別のヘッドを付けるまでにかかる時間は1分かからない程度。出掛ける前の慌ただしい状況でも「あ、今日はこのヘッドじゃなくて、こっちのヘッドを使おう」ということができまくりで、非常に愉快です。

こんなところが残念かも……

 最後に、wena wrist proを使っていて「ちょっと残念」と思える点をいくつか。機能を抑えた製品なので、欲を言えば言うほど残念点が増えがちだったりしますが、絞り込んで。

 まずは、電子マネーとして交通系ICカードに非対応なところ。これは「ちょっと」どころか「大いに残念」です。wena wrist proが対応する電子マネーは「楽天Edy」「iD」「ANA」「QUICPay」「d POINT」「ヨドバシゴールドポイント」ですが、このうち筆者が「wena wrist proで使いたい」と思うものはありません。楽天Edyは「wena wrist proでときどき買い物くらいしたい」と思うので渋々使っていますが、それよりSuicaなど交通系の電子マネーに対応して欲しいというのが正直なところ。

 まあ、でも、FeliCaはソニーの技術だとは言っても、ここまで国内で普及してしまっている電子マネーのインフラとも言える存在。「wenaにSuica載せよう」と本家ソニーが思っても、FeliCaを取り囲む世界の契約とかしがらみとかそーゆーのが、そうは簡単にwenaへのSuica搭載なんて許さないんでしょうね~。

 たぶん似たような理由だと思いますが、「wena wrist proで電子マネー機能を使う初期設定にiOS端末が必須」というヘンな仕様も、残念点のひとつです。上記Suica対応も含め、対応や改善を気長に待ちたいと思いますが、すぐ対応してくれたらwena wrist proもう1本買いますのでゼヒ!

 それから、電子マネーを使う場合の「かざしにくさ」。FeliCa内蔵位置は有機EL端ですので、その部分をレジ横などのセンサーにタッチします。これがやっぱり、やりにくいですね。

ヘッドを手首の内側にしても外側にしても、「そもそも手首周辺でセンサーにタッチするというのがやりにくい」という感じです。胸あたりの高さにセンサーがあればいいんですが、電子マネーのセンサーはだいたい腰高あたり。筆者はいつもヘンな姿勢を強いられています。こういう使いにくさはApple Watchなんかも同じですネ。

 それから、エンドピースのサイズ。腕時計バンドパーツのうち、前述の「レバーピン」を備えたバンド両端のパーツです。このエンドパーツのピン周辺のサイズが「より小さめ薄めだったらなあ~」と何度も思います。というのは、エンドパーツのピン周辺が微妙に大きいがゆえ「ギリギリwena wrist proを装着できない腕時計ヘッド」が案外多いから。「あと0.5mm、いや0.3mm、エンドパーツ端が薄ければ入るのに~!」みたいなヘッドがけっこうあります。これが改良されれば、「より多くの普通の腕時計ヘッドのスマートウォッチ化が可能」になりますので、ぜひゼヒ改良を!

 ついでに、ラグ幅が18mmでも20mmでも22mmでも、ひとつで対応できちゃうエンドパーツなんかも、可能なら開発&発売して欲しいです。エンドパーツ交換は手軽ではないので、たとえば「wena wrist proを使うのは22mmラグ幅のヘッド」などと組み合わせるヘッドが限定されてしまいます。「あーこのヘッドは20mmだから、とりあえずはwena wrist proでは使えない(要エンドパーツ交換)」みたいな残念な実使用感がある。これを巧く解消して欲しいです。

 あ、できるなら18~24mmとか、ひとつのエンドパーツで幅広いラグ幅に対応しつつ、エンドパーツ端(レバーピン周辺)が薄め小さめならもっとイイですね~。「どんな腕時計ヘッドともだいたいサクッと合体可能なwena wrist pro!」が欲しいと思うわけです。それをエンドパーツの改良でぜひ実現して欲しいです!

 といったところが、wena wrist proに感じた残念感です。でもまあ、どうしても手首をかざして電車に乗りたいわけではないですし、端っこのパーツが改良されなくても現状でかなり便利なので、おおむねwena wrist proに満足している筆者なんでした。お気に入りの腕時計ヘッドをスマートウォッチ化できる唯一無二の製品なので、興味のある方はぜひチェックしてみてください♪

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。