スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」

久々の高満足度iOS端末「iPhone X」

久々の高満足度iOS端末「iPhone X」

 2017年11月3日に発売されたアップルの「iPhone X」。エックスかと思ったらテンで、ナインはないんですかとかつい思ってしまいました。さておき、なーんか最近発売されるiOS端末って、今ひとつ刺激が足りないっていうかインパクトがないっていうか、そんなふうに感じていた筆者です。「iPhone X」もきっとそうなんだろうな~と思い、急がずにアップルストアで注文し、11月27日に入手・使用開始しました。お値段は税込14万184円。高っ!

アップルの「iPhone X」。従来のiPhoneシリーズから設計が一新されました。全面がスクリーンとなったあたりは特徴的。画面は5.8インチ(2436×1125ドット)の有機EL(OLED)です。高度な顔認証カメラなども搭載されました。購入したのは256GBのモデルで、Appleストアでの税別価格は12万9800円。

 初めて起動したときは「あら、なんか画面上部のヘンな黒い出っ張りがカッコ悪い~」と思いつつ、本体周囲のシルバーの部分もあまり好みではありませんでした。ですが、違和感があったのはその程度。その後は使うほどに気に入り、非常に高い満足感を得ております。

 率直なところ、iPhone 6 Plus購入時(2014年)は「iOSファブレット便利~♪」といった満足感がありました。その後も「大きい方のiPhone」を使い継ぎ、Suicaが使えるようになって便利とか、ワイヤレス充電ができて快適とか、いろいろ便利化しつつ処理性能も高まってナイスではあったんですが、一方で「期待したほどでもなかった」みたいなモヤッとした印象もありました。

 ですが、「iPhone X」はインパクト大。「コレはイイな~!」と思える要素が多く、最初は「高っ!」と思っていた「税込14万184円」という値段も……いやまあもうちょっと低く抑えて欲しいとは思いますが、「こういう良さがあるなら、まあまあどうにか、納得できる値段かな」的なポジティブな捉え方に。

 ハッキリ言ってかなりイイです「iPhone X」。たとえばちょっと前に買った「iPhone 8 Plus」の使用頻度が急降下。うあ~っ10万円オーバー端末なのにモッタイナイ! でも「iPhone X」のほうが便利だし楽しい♪ みたいな感じなのでした。

 ともあれ以降、「iPhone X」の使用感などを少々。まだ使い始めて半月ほどですが、筆者が大きめの満足感を得た要素を中心に書いてみたいと思います。

ちょうどいいサイズ感、十分な情報量

 筆者は好んでiPhoneの5.5インチモデル(Plusが付くモデル)を使ってきました。「画面が大きくて見やすい!」「一度に表示される情報量も多い!」というのがその理由です。4.7インチの標準サイズiPhone(iPhone 7やiPhone 8などPlusが付かないモデル)は小さくて携帯性が良いのが魅力的ですが、やっぱり見やすさなどから5.5インチモデルを選んでしまいます。ただ、5.5インチモデルは常時携帯端末としてはちょ~っと大きいですネ。

 何を言いたいのかもうおわかりだと思いますが、「iPhone X」は4.7インチと5.5インチの「オイシイところ」を両取りしています。たとえばiPhone 8シリーズで言えば、iPhone 8 Plusの画面の見やすさ・情報量と、iPhone 8のコンパクトさの、その両方があるのが「iPhone X」。この2つの要素を同時に持ち得ているのは、筆者的にとって小躍り級の嬉しさです。

iPhone 8 Plus、iPhone X、iPhone 8の画面やサイズ感の違い。コンパクトなボディに大きなディスプレイを搭載した「iPhone X」は、携帯しやすさと情報の見やすさを両立しています。※画像はアップル「iPhoneのモデルを比較する」ページより抜粋。
こちらは表示される情報量の比較。左がiPhone 8 Plus、右がiPhone Xによる表示です。アプリは標準ウェブブラウザの「Safari」。おおよそ同程度の情報量を表示しています。
こちらは横表示。iPhone Xでの表示(右)は左右に空白が。まだ最適化されていないのかもしれません。ちなみに、現段階でiPhone Xのディスプレイに最適化されていないアプリは多く、その場合はiPhone Xのディスプレイを十分使い切っていない「情報量的に少しもったいない表示」になっています。今後の最適化を期待。

 単純明快に、常時携帯する道具において、小ささは正義。情報端末において、表示できる情報量の多さは正義。画面サイズが大きいと、ソフトウェアユーザーインターフェースにも余裕が出るので、これも正義ですネ。「iPhone X」はそういう好ましい要素をガッツリと持っていて、とても使いやすい。そんなわけでコレばっかり使っちゃいます。……あ~っ買ったばっかりのiPhone 8 Plus全然使ってない~モッタイナイ!

ホームボタンがない!

 これまでのiOS端末には物理的なボタンである「ホームボタン」がありましたが、「iPhone X」にはありません。筆者の場合、「iPhone X」を買うにあたって最も心配だったのが「ホームボタンがないこと」でした。

 ホームボタンの撤去は、歴代iOS端末を使ってきたユーザーにとって、けっこー衝撃的。直感的にホーム画面に戻れるボタンでしたし、指紋認証センサーとしても使えたり、新しめのモデルでは物理的な故障が起きにくい機構にもなって、順当に進歩してきた感じの頼りになるボタンです。なのに、無くしちゃって大丈夫なの? 的な。

iOS端末にはホームボタンがあるのが当たり前でしたが、「iPhone X」にはありません。従来の「ホームボタンを押す」という操作は、画面下側を上にスワイプです。

 ホームボタンが無いことの使用感的な結論を言いますと、筆者としては「ホームボタンって要らなかったんだなあ」という感じ。「ホームボタン左右の空間はムダだったんだなあ」とも。iPhoneの歴史的慣習(?)で画面下部にホームボタンという物理ボタンがあったわけですが、画面下部から上にスワイプするという操作がホームボタンに成り代わり、これでもとくに問題ないという印象です。

 むしろ、画面下部から物理ボタンがなくなったことで、物理ボタンとその左右のスペースが画面になりました。ホームボタンと、その左右にあったデッドスペースが、画面表示の領域として使われるようになったのは、より高い実用性につながっていると思います。たとえば各種アプリの表示領域が増えたり、あるいはソフトウェアキーボードにちょっと余裕ができたり。

左がiPhone 8 Plusのホームボタンとソフトウェアキーボードで、右がiPhone Xのもの。けっこー使い勝手が異なり、このタイプのソフトウェアキーボードではiPhone Xのものが扱いやすく感じられます。

 ホームボタンが仮想化されて画面のスワイプなどの操作になったわけですが、従来のホームボタン絡みの操作もちょっと変わりました。使い始めは「iPhone Xだけの新しい操作方法」として少し慣れる必要があります。

 たとえば、アプリケーションの画面切り替え(マルチタスク機能)は、画面下部からのスワイプを画面中央あたりで止めるという操作。この状態でアプリ表示を上にスワイプするとホームに戻ってしまいます(アプリの強制終了にはならない)。

 アプリの強制終了は、まずマルチタスク機能でアプリが横並びに表示させます。次いで画面を長押しすると、赤丸のなかに「-」の削除マークが出ますので、これをタップするか、「-」マークが出た状態で上にスワイプすればOK。

 ちなみに画面上部のスワイプ操作は、左側を下にスワイプすると通知表示で、右側を下にスワイプするとコントロールセンターの表示になります。iPhone 8などは、下から上へのスワイプがコントロールセンター表示でしたので、戸惑う操作感も少々あります。それと「iPhone X」では本体右側のボタンの長押しで「Siri」が起動します(「Hey Siri」と話しかけてもOK)。従来はホームボタン長押しだったので、これもちょっと戸惑う操作感です。

 ただ、少し慣れると「iPhone X」のほうが操作しやすく感じます。従来のiOS端末と比べると「iPhone X」はヘンな操作感ですが、「iPhone X」の操作に慣れると従来のiOS端末のほうがスムーズさに欠ける操作感と感じれたりします。

 実際、ホームボタンを押し込むという操作がなくなったのは、手間がかなり減った感じがします。従来は「ホームボタンの位置に指を置いて押す」だったのですが、「iPhone X」では「画面下から上にスッとスワイプ」するだけ。操作の許容範囲が広がり、ちょっとテキトーに操作してもよくなって、なんかラク、みたいな印象です。

「True Depthカメラシステム」すげー!

 ホームボタンがない「iPhone X」ですが、指紋認証ログオンとかどうなるの? Touch ID(指紋認証)はなくなり、かわりにFace ID(顔認証)でログオンできるようになりました。ユーザーの顔を立体的に登録し、画面上部の「True Depthカメラシステム」によりユーザー本人かどうかを一瞬で認証します。

 使ってみると、凄いですコレ。筆者の印象では、Touch IDより失敗が少ない感じ。暗い場所でもOKですし、メガネやサングラス着用でも大丈夫です。思いっ切りヘン顔をするとか、マスクや手で顔の半分近く隠しているとかでない限り、一瞬で顔を認識してくれます。

 で、顔を認識した瞬間ロックが解除されますので、そうしたら前述のホームボタン操作(画面下部を上にスワイプ)すればホーム画面に。とてもスムーズです。

スリープ状態から右ボタンを押すか本体をこちらに向けて起こすと、左の画面に。まだロックされています。ユーザーの顔が認証されるとロックが外れます(中央)。この間、一瞬。そして画面下から上にスワイプするとホーム画面に。

 実際は、スリープ中の「iPhone X」を持って画面をこちらに向けると、スリープ解除とともに顔認識が完了し、それと同時にスワイプするとホーム画面表示。感覚としては、手に持ってスワイプすれば使い始められるというイメージ。このスピード感が凄いです。顔認識は画面上部にある3つのデバイスとプロセッサなどで行われていて、「True Depthカメラシステム」と言うそうですが、未来を感じさせるスピード感と実用性に驚かされます。

画面上部中央には、下に出っぱる黒いエリアが。カッコ悪い気がしますが、ここには凄いデバイスが収められていました。

 ちなみに、Face IDが機能する条件に「画面を注視」があります。どうやら目をチェックしているようで、目が横を見ていると顔認識してくれませんし、目をつむっていてもダメ。「他人がユーザーの寝顔を認識させてロック解除」といったことはできないようになっているようです。

 この「True Depthカメラシステム」に関連して、インカメラ(フロントカメラ/TrueDepthカメラ)もスゴいコトになってます。画面側のカメラですね。画素数などはiPhone 8などと変わりませんが、ポートレートモードやポートレートライティングモード(ベータ版)が使えるほか、アニ文字という新たな機能も使えます。

 詳細は「iPhone X」の製品紹介ページを見ていただければと思いますが、たとえばインカメラでのポートレートモード撮影。ポートレートモードは、iPhone 7 PlusやiPhone 8 Plusのデュアルレンズのアウトカメラで使える「背景をボカして被写体を際立たせることができる撮影モード」。ポートレートモードで撮った写真は、撮影後にライティングの効果を追加・変更でき、これがポートレートライティングモードです。

 これらのモードはiPhone 7 PlusやiPhone 8 Plusのアウトカメラで使えましたが、「iPhone X」ではインカメラでもアウトカメラでも使えます。インカメラでもこれらモードが使えるのは、「True Depthカメラシステム」による顔認識機能があるからだそう。ともあれ、インカメラで自分撮りをして背景をぼかしたり、あるいは顔を明るくすることができますので、「iPhone X」では自撮りがかな~り捗ると思います。

左は通常の写真モードで撮影している様子。中央はポートレートモードで撮影している様子で、背景がボケて被写体が際立っていることがわかります。ポートレートモードで撮った写真は、後からライティングを変更できます(ポートレートライティング)。右はスタジオ照明として顔を明るく鮮明にした様子。
ポートレートライティングにより、輪郭を強調したり背景を暗く落としたり、あるいは背景を暗く落としつつモノクロにしたりできます。手軽に「自然に盛った顔写真」が撮れますので、SNSのプロフィール写真作成なども捗りますネ♪

 それと「アニ文字」ですが、ユーザーの顔の表情に同調してキャラクター(パンダ/ブタ/ロボットなど)の顔がアニメーションで動くというものです。顔の動きに加えて音(声など)も録音され、いわば「自分の顔の動きと声でキャラクターの顔アニメーションがつくれる」という機能。

「アニ文字」の表示例。ユーザーの顔の動きにピッタリ合わせて、キャラクターの表情や顔の向きや口や目の動きがリアルタイムで変わります。顔限定のモーションキャプチャーといった感じ。中央右の赤いボタンを押せば顔の動きと話し声などが録画され、キャラクターがリアルな動きで話す「アニメーションメッセージ」として利用できます。

 そうしてつくった顔アニメーションは、iOS標準の「メッセージ」アプリで送ることができます。3Dアニメのキャラクターにユーザーの動きと声を演じさせるという感じで、とても自然に動いてくれますし、話してくれます。これもまた、「True Depthカメラシステム」の成せる技ですね。

表示もキレイ、充電も便利

 複数の端末と「iPhone X」を使い比べると気付くんですが、「iPhone X」のディスプレイは発色が良好で映像のメリハリもしっかりしていて好印象。とくに締まった黒と色彩の鮮やかさがイイ感じです。本体前面のほぼ全体がディスプレイとなっている狭額縁スタイルと相まって、非常に快適に見ることができる表示です。

 それと、iPhone 8やiPhone 8 Plusと同様に、「iPhone X」はワイヤレス充電に対応しています。Qi規格準拠のワイヤレス充電器に乗せるだけで充電できてラク。LightningケーブルをつなぐかQi充電台に乗せるかの違いですが、乗せるだけの充電は「ちょっと使ってちょっと充電」を手間なく繰り返せるのでやはり便利ですネ♪

 ただ、当然ではありますが、やや厚めのケースに入れた状態ではワイヤレス充電できません。筆者が好きな「背面にカードポケットがあるiPhoneケース」はたいていワイヤレス充電不可能。また、ワイヤレス充電器に対して画面を伏せるようにしてiPhoneを置いても充電されません。

 ちなみに、ワイヤレス充電対応のiPhoneをiOS最新バージョン「iOS 11.2」にアップデートすると、高速ワイヤレス充電が可能になります。ただし高速ワイヤレス充電対応の充電器が必須。現在のところベルキンの「BOOST↑UP ワイヤレス充電パッド」(公式ページ)が高速ワイヤレス充電対応です。

 使っていて少し残念に感じるのは、まず少々前述した画面上部の下方に出っぱった黒枠。ここには「True Depthカメラシステム」の要となるセンサーが入っているので仕方がないと思いますが、正直なところ表示の邪魔ですし、見栄えもよくありません。

 もうひとつ、背面のカメラ。背面からやや出っぱっていて、iPhone 8 Plusなどと比べるとカメラのエッジ部分が背面と直角になる状態で出っぱっているので「出っ張りがより目立つ」という感じです。

画面上部にある下方への黒い出っ張り(額縁形状)と、背面のデュアルカメラの出っ張り。「True Depthカメラシステム」や高画質のカメラ機能などを実現するためには仕方のない出っ張りだと思いますが、やはり違和感があります。

 とても美しいデザインの「iPhone X」ですが、これら2つの「妙な出っ張り」により、その秀逸なデザインがけっこー損なわれていると思います。残念。

 ただ、残念と感じられるのはその程度で、ほかはヒッジョーによくできたスマートフォンです。次世代iPhoneとしていきなりこのデキ。驚かされました。キてる端末だと思いますので、ぜひ実機に触れてみてください♪

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。

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