法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

Leicaクアッドカメラで史上最強モデルを狙う「HUAWEI P30 Pro」

 ファーウェイは3月26日、フランス・パリにおいて、発表イベントを開催し、同社のフラッグシップモデル「HUAWEI P」シリーズの最新モデルとなる「HUAWEI P30 Pro」「HUAWEI P30」を発表した。

ファーウェイ「HUAWEI P30 Pro」(グローバル版)、約158mm(高さ)×73.4mm(幅)×8.41mm(厚さ)、約192g(重量)、Breathing Crystal(写真)、Black、Pearl White、Aurora、Amber Sunriseをラインアップ

 本誌では発表会の様子を速報記事でお伝えしたが、HUAWEI P30 Proのデモ機を試すことができたので、ファーストインプレッションをお伝えしよう。

3月26日にフランス・パリで催されたイベントで発表された「HUAWEI P30」シリーズ。欧州向けの価格はHUAWEI P30が799ユーロ、HUAWEI P30 Proは990ユーロから

激しい競争がくり広げられるスマートフォンのカメラ

 現在、多くのユーザーがスマートフォンでもっとも頻繁に利用する機能と言えば、やはり、カメラだろう。SNSでシェアすることが当たり前となった今、いい写真を撮れることはスマートフォンの実力を表わすうえで、もっとも重要な機能のひとつになったと言っても差し支えないだろう。

 そんなスマートフォンのカメラにおいて、ここ数年、新しいトレンドを生み出し、市場を牽引してきたのがファーウェイだ。同社は2015年に発売された「honor 6 plus」ではじめて2つのイメージセンサーを搭載し、スマートフォンのカメラでありながら、奥行きのある写真でピントを合わせる位置を撮影後に調整できる機能を実現した。

 この機能はファーウェイの「HUAWEI P」シリーズと「HUAWEI Mate」シリーズという2つの主力モデルに受け継がれ、従来の一般的なデジタルカメラでは細かな設定が必要とされていた「ボケ味」の利いた写真を誰でも手軽に撮影できる環境を実現し、進化を遂げていく。

 なかでも同社製スマートフォンのカメラが世界中から注目を集めるようになったのは、2016年4月に発表された「HUAWEI P9」だ。ドイツの老舗光学機器メーカー「Leica」との共同で開発したダブルレンズカメラは、ひとつはカラーセンサー、もうひとつはモノクロセンサーを採用し、モノクロセンサーで得た明暗情報をカラーセンサーで得た情報に組み合わせることで、それまでのスマートフォンでは実現できなかったダイナミックレンジの広い写真を撮影できるようにした。

 このモノクロセンサーとカラーセンサーを組み合わせる手法は、後継モデルとして、2017年2月にMWC 2017に合わせて発表された「HUAWEI P10」「HUAWEI P10 Plus」、2017年10月に初のAI対応を実現した「HUAWEI Mate 10 Pro」、2018年3月発表の「HUAWEI P20 Pro」にも受け継がれ、カメラ業界の専門媒体で構成する団体でアワードを取得するなど、各方面で高い評価を得た。

 こうした状況に対し、ライバルメーカーも手をこまねいているわけではなく、アップルは2016年発表のiPhone 7 Plusで初のデュアルカメラを搭載、サムスンは2017年発表のGalaxy Note8で可変絞り機能を備えたカメラを持つデュアルカメラを搭載するなど、カメラ機能の強化に注力している。シャープやソニーなどの国内勢もデュアルカメラ搭載モデルを相次いで投入する一方、OPPOやASUSなどのSIMフリースマートフォンを展開するメーカーも国内市場向けにデュアルカメラ搭載モデルを次々とリリースするなど、各社のカメラ機能の競争は一段と激しさを増している。GoogleのPixel 3/3 XLはシングルカメラながら、AIによる処理でボケ味の利いた写真を撮影できるようにするなど、独自のアプローチを試みている。

 そんな中、ファーウェイの主力モデルに搭載されるカメラでは、昨年、ひとつ大きな方針転換とも言える動きが見られた。昨年10月にイギリス・ロンドンで発表された「HUAWEI Mate 20 Pro」は、それまでのモノクロイメージセンサーとカラーイメージセンサーの組み合わせによるカメラモジュールの構成をやめ、3つのカラーイメージセンサーを使い、広角/超広角/望遠という焦点距離の異なるカメラで構成するマルチカメラを搭載した。ファーウェイ製端末のLeicaカメラの美しい画質は、モノクロ/カラーイメージセンサーの構成に、Leicaのレンズを組み合わせることで実現されるとしていたが、カラーイメージセンサーのみの構成でも十分に高品質な写真を撮影できるとしていた。

HUAWEI P30 Pro(中央)は従来のHUAWEI P20 Pro(右)に比べ、昨年のHUAWEI Mate 20 Pro(左)に近いデザイン

 そして、2019年モデルとなる「HUAWEI P30」シリーズには、どのようなカメラが搭載されるのかが注目されていたが、速報でもお伝えしたように、「HUAWEI P30 Pro」はLeicaクアッドカメラ、「HUAWEI P30」はLeicaトリプルカメラを搭載している。発表された2機種の内、「HUAWEI P30」のカメラは昨年の「HUAWEI Mate 20 Pro」のカメラとほぼ同等のスペックであるのに対し、「HUAWEI P30 Pro」にはこれまでになかった新開発のイメージセンサーを採用し、従来モデルに比べ、暗いところでも一段とクリアな写真を撮影できる環境を実現している。

 もちろん、チップセットやボディなど、さまざまな部分で機能強化が図られたが、発表時のプレゼンテーションでもカメラの撮影機能に多くの時間が割かれ、ライバル製品との比較も数多く明示されるなど、「これはデジタルカメラの発表会?」と思わせるほどの力の入れようだった。その意気込みは発表イベントの「Rewrite the rule of Photography(写真撮影のルールを書き換える)」というキャッチコピーにも込められており、ファーウェイのカメラ機能に対する強いこだわりを感じさせた。

 発表イベントの終了後、タッチ&トライの時間が設けられ、「HUAWEI P30 Pro」と「HUAWEI P30」の両機種を試すことができ、これに加え、「HUAWEI P30 Pro」のグローバル版のデモ機もお借りすることができた。グローバル版については日本の技術適合認証を受けていないため、ネットワーク接続についてはパリ滞在時のみ、国内ではフライトモードでの利用に限られていたが、ここでは製品の内容を説明しながら、実機の使用感などをお伝えしよう。

 今回、試用したモデルはグローバル版であり、実際の製品と差異があるかもしれないこと、国内版については何もアナウンスされていないことをお断りしておく。同時に、デモ機受け取り後、ソフトウェア更新も公開されているため、内容が今後も含め、変更されるかもしれないことをご理解のうえ、ご覧いただきたい。

左右側面が湾曲したデザインを採用

 ファーウェイが販売するスマートフォンにはさまざまな機種があるが、主力モデルである「HUAWEI Mate」シリーズは大画面ディスプレイと大容量バッテリーを搭載したモデルであるのに対し、「HUAWEI P」シリーズは元々、コンパクトで持ちやすいモデルとして登場している。それが前述のように、Leicaカメラの搭載により、カメラ性能を強調するモデルとして進化を遂げてきたが、ボディはフラットな形状で、オーソドックスなデザインに仕上げられてきた。

背面にはカメラやフラッシュを搭載。カラーのBreathing Crystalは光の反射によって、さまざまな色合いに見える

 ところが、今回のHUAWEI P30 Proでは従来のHUAWEI Pシリーズのデザインを一新し、ディスプレイの両側面を湾曲させた形状に仕上げられている。ちょうどHUAWEI Mate 20 ProやライバルのGalaxy S9+などにも似たデザインと考えれば、わかりやすいだろう。手に持ったときの印象はボディ幅が73.4mmに抑えられているうえ、湾曲した側面が薄いため、スリムで持ちやすい。湾曲部に触れて、誤操作してしまうようなことも少な印象だ。ちなみに、同時発表されたHUAWEI P30は本体前面のディスプレイをフラットに仕上げており、従来のHUAWEI P20 Proに近い仕上がりだった。

左側面はボタン類も何もないすっきりとした仕上がり。前面のディスプレイ側と背面の両方の側面が湾曲した仕上がり
右側面はシーソー式の音量ボタン、電源ボタンを備える。側面はスリムになったが、ボタンの操作感は問題ない

 ディスプレイは6.47インチのフルHD+対応有機ELディスプレイを採用し、DCI-P3準拠のHDRにも対応する。ディスプレイサイズはかなり大きいが、画面の縦横比は19.5:9という縦長になっているため、ボディ幅は73.4mmに抑えられており、前述の側面のスリムさとも相まって、持ちやすい。

上部には周囲の音を拾うためのマイクなどが内蔵される

 ディスプレイの上部には水滴型ノッチがあり、後述するインカメラが内蔵されている。受話口(レシーバー)はディスプレイに内蔵されているため、上部は水滴型ノッチのみで、非常にすっきりと仕上げられている。フレーム(額縁)は上部が3.36mm、側面が2.2mmに抑えられており、iPhone XS Maxの4mm台、iPhone XRの5mm台と比べてもかなり狭い。本来、本体上部にはレシーバー(受話口)が内蔵されているが、HUAWEI P30 Proでは「Magnetic levitation」と呼ばれる技術により、ディスプレイ内にレシーバーを内蔵する。国内でも京セラ製端末にスマートソニックレシーバーが搭載されているが、同様のしくみを採用したと推察される。実際に通話も試してみたが、音が聞こえる部分にアイコンが表示されるなど、視覚的にもわかりやすく作り込まれている。

水滴型ノッチを採用し、32MピクセルのイメージセンサーにF2.0のレンズを組み合わせたインカメラを内蔵する

 また、従来のHUAWEI P20 Proでは本体前面に指紋認証センサーが備えられていたが、これもHUAWEI Mate 20 Proと同様のディスプレイ内指紋センサーに切り替えられている。これにより、本体前面には水滴型ノッチに内蔵されたインカメラのみが備えられる形になり、ほぼすべてをディスプレイが覆い尽くす仕上がりとなっている。

 指紋認証センサーについては従来同様、光学式のものが採用され、ディスプレイの裏側から当てられた光で、指紋を読み取るようにしている。ファーウェイによれば、今回の光学式指紋認証センサーは、認識の反応速度が30%、向上しているという。HUAWEI Mate 20 Proでは指先を軽く画面に押しつけるような操作で十分なレスポンスが得られていたが、HUAWEI P30 Proも同等以上の反応で認証ができる印象だ。ちなみに、顔認証にも対応するが、HUAWEI Mate 20 Proで採用された3D顔認証の記述がなく、一般的な顔認証と推察されるため、顔が似た人でも解除されてしまうリスクがある。よりセキュアに使うのであれば、指紋認証のみの利用がおすすめだ。

 カラーバリエーションはBlack、Pearl White、Aurora、Amber Sunrise、Breathing Crystalの5色展開と発表されたが、今回試用したBreathing Crystalは光の反射によって、大きく印象が変わるカラーで、付属のクリアカバーを付けていても目を引く。ボディはIP68準拠の防水防塵に対応する。

 本体には4200mAhの大容量バッテリーを内蔵し、最大40WのHUAWEI SuperCharge、最大15WのQi対応ワイヤレスチャージに対応する。パッケージにはHUAWEI SuperCharge対応のACアダプタが同梱され、約30分で7割までの充電が可能。最大15Wのワイヤレスチャージはまだ対応製品が多くないが、国内メーカーからも販売が開始されており、今後、普及が期待される。

 バッテリー関連でユニークなのはHUAWEI Mate 20 Proに引き続き、ワイヤレスリバースチャージに対応している点だ。Qi対応の他のスマートフォンやデジタルツールを充電できるほか、発表イベントでは同様のしくみを利用した電動シェーバーや電動歯ブラシなども充電できるとしていた。ただし、電動歯ブラシなどはあくまでも「充電できるものもある」というレベルの話で、現実的にはケースに格納した完全ワイヤレスイヤホンの充電などに有用と考えるべきだろう。同様のワイヤレスリバースチャージはライバルのGalaxy S10シリーズでも採用されており、今後、ワイヤレスイヤホンやウェアラブルデバイスの充電は、このしくみが主流になってくるかもしれない。

 チップセットはHUAWEI Mate 20 Proに引き続き、ファーウェイ傘下のHiSilicon製Kirin980を搭載する。HUAWEI P20 Proなどに搭載されていたKirin970に比べ、NPUがデュアルになるなど、全体的なパフォーマンスが向上している。メモリーとストレージはRAM 6GBとROM 128GBのモデル、RAM 8GBとROM 128/256/512GBのモデルがラインアップされているが、今回試用したモデルはRAM 8GB/ROM 256GBの構成だった。メモリーカードはHUAWEI Mate 20 Proでも採用されたnanoSIMカードと同サイズのNM(Nano Memory)カードが採用されており、デュアルSIMカードスロットの2枚目のnanoSIMカードとの排他利用になる。HUAWEI Mate 20 Proの発売からすでに半年近くが経過しているが、NMカードはあまり流通していないため、デュアルSIMで利用した方が有用かもしれない

ピンで取り出すタイプSIMカードトレイは、下部のUSB Type-C外部接続端子の隣に備えられる。SIMカードトレイの表裏にnanoSIMカードを装着可能なデュアルSIM対応。NMカードも装着できる。

 デュアルSIMについてはデュアルVoLTE対応だが、これまでのDSDS(Dual SIM/Dual VoLTE)の端末と違い、1枚目のSIMカードの回線でVoLTEによる通話中でも2枚目のSIMカードの回線の着信を受けられる。国内版の対応は不明だが、2枚のSIMカードで音声通話を活用したいユーザーには魅力的なポイントと言えそうだ。

 その他の通信関連としては、HUAWEI Mate 20 Proに引き続き、GPSのバンドとして、L1に加え、L5にも対応したことが挙げられる。これにより、ビルなどが多い地域での利用でも位置情報をより正確に捉えることができる。筆者はHUAWEI Mate 20 Proを国内外で利用したが、他機種では正確に表示されにくい場所でもより現在地に近い位置を測位できた経験があり、HUAWEI P30 Proでも同様の効果が期待できる。

月の写真も撮影できるLeicaクアッドカメラ

 今回のHUAWEI P30シリーズは冒頭でも説明したように、「Rewrite the rule of Photography(写真撮影のルールを書き換える)」というキャッチコピーが付けられているように、カメラ機能に注力されたモデルとなっている。

背面には広角/超広角/望遠の3つのカメラ、ToF(Time of Flight)カメラで構成するLeicaクアッドカメラを搭載

 Leicaクアッドカメラと名付けられたメインカメラは、HUAWEI P20 Proと同じように、背面側の左寄りにレイアウトされており、上部側から順に、20MピクセルのイメージセンサーにF2.2のレンズを組み合わせた超広角カメラ(35mm換算16mm相当)、40MピクセルのイメージセンサーにF1.6のレンズを組み合わせた広角カメラ(35mm換算27mm相当)、8MピクセルのイメージセンサーにF3.4のレンズを組み合わせた光学5倍相当の望遠カメラ(35mm換算125mm相当)をレイアウトしている。その内側には、被写体までの距離を測定する「ToF(Time of Flight)カメラ」やLEDフラッシュが並ぶ。

 これらのカメラの内、望遠カメラは潜望鏡のようなペリスコープタイプのデザインを採用しており、ハイブリッドズームと組み合わせて、広角カメラの10倍に相当する270mm(35mm換算)、デジタルズームを利用することで50倍相当の1343mmまで、ズームができる。

 今回のHUAWEI P30 ProのLeicaクアッドカメラで、もっとも注目されるのはメインで使われることが想定される40Mピクセルの広角カメラだろう。1/1.7インチというコンパクトデジタルカメラ並みのサイズもさることながら、センサーのカラー配置を一般的なRGGB配列(Red/Green/Green/Blue)ではなく、RYYB(Red/Yellow/Yellow/Blue)配列のものを新たに開発し、採用している点だ。CMOSイメージセンサーはフォトダイオードの上にカラーフィルターを重ねる構造となっているが、このフィルターをRGGB配列からRYYB配列にすることで、約40%多くの光を取り込めるとしている。

 一般的に、カメラモジュールはメーカー独自のものが開発されることがあるが、こうした構造のセンサーは過去に採用例がなく、一般的なデジタルカメラでも見かけない(筆者が知らないだけかもしれないが……)。ファーウェイは発表会後のセッションで、このセンサーのメーカー(ほぼ確実にソニーと推察される)と共同で開発したとコメントしていたが、業界筋によれば、おそらくファーウェイ向け専用として開発されたもので、当面、他のメーカー向けのカメラに採用されることはなさそうだという。いずれにせよ、カメラモジュールだけでなく、イメージセンサーまでエクスクルーシブなものを開発できてしまうところも現在のファーウェイの強さのひとつと言えそうだ。

 発表会ではくり返しライバル機種との比較が示され、HUAWEI P30 Proのアドバンテージが強調されていたが、発表会後に貸し出されたサンプル機での撮影では「やや色味が薄いのではないか」「ホワイトバランスが少し違うように見える」といった指摘が相次いだ。ただ、筆者が撮影した写真をパソコンに取り込み、複数の環境で再生したところ、それほど色味が薄いという印象はなく、従来のHUAWEI Mate 20 ProやHUAWEI P20 Proと同等以上の高品質な写真が撮影できるという印象を得た。もし、撮影した写真の色味に違和感があるとすれば、ディスプレイとのマッチングが十分ではなかった部分があるのかもしれない。ちなみに、発表会後に貸し出されたデモ機は、その後、数回、バージョンアップがくり返されており、指摘された違和感は解消された可能性も十分に考えられる。

 さて、実際にカメラで撮影した写真については、サンプルをご覧いただきたいが、まず、驚かされるのは望遠で撮影したときの画質で、10倍ハイブリットズームで撮影した写真でも非常にクリアな画質が確保されている。もうひとつ特筆すべきは全体的な写真の明るさで、暗いところでも明るく撮影できるアドバンテージは従来モデル以上に強化されている印象だ。

夜間にパリのオペラ座を広角カメラで撮影。ライトアップされている効果もあるが、明るく撮影できている
オペラ座を超広角カメラで撮影。建物と広場全体を広く撮影できる
同じ位置から5倍望遠で撮影。建物の装飾などもはっきりと撮影できている
10倍望遠で中央部分の像を拡大して撮影。上段の文字のレリーフはかなりクッキリと写っている
オペラ座に向かって、右上の屋上にある像を50倍望遠で撮影。手持ちの撮影ではどうしてもぶれるため、半固定スタイルで撮影

 また、50倍ズームについては環境が整えば、かなり面白い写真が撮影できることがわかった。パリ滞在時にオペラ座の屋上に設置された銅像を50倍ズームで撮影したときは、手持ちではかなり被写体を捉えるのが難しく、広場にあった柵などに端末を当てて、半固定のスタイルで撮影して、何とか撮影することができた。さらに、帰国後に満月を撮影する機会があり、これも半固定スタイルで撮影したところ、スマートフォンで撮ったとは思えないほど、きれいな月の写真を撮ることができた。三脚で固定すれば、よりきれいに撮影できそうだが、それはさすがに『反則』(スマートフォンで撮影するために、三脚は持ち歩かない)なので(笑)、今回は見送ることにした。

日中のアーケードを撮影。上部からの外光を活かし、全体的にも明るく撮影できた
日本に帰国後、いつもの薄暗いバーで撮影。背景のボケ具合、ボトルのクリアさなど、十分な仕上がり
50倍望遠を使い、満月を撮影。手持ちの半固定スタイルで撮影。AIで「ムーン」と認識されると、月に最適化された設定で撮影された
街中のネオンを備えたお店を撮影。色合いもバランス良く撮影できている

 超広角カメラについては、旅行などで建物を撮るときに有効な印象だ。これは昨年のHUAWEI Mate 20 Proと同じだが、人物を捉えつつ、背景の建物や風景なども活かしたいときに便利なカメラだろう。カメラの撮影で、もうひとつ有効なのがマクロ撮影だ。スマートフォンのカメラは接写にあまり強くない印象だったが、HUAWEI P30 Proは2.5mmまで被写体に寄って、撮影することができる。食べ物なども接写で撮影すると、今までとは少し違った『美味しさ』を感じさせる写真が撮影できるだろう。

エッフェル塔を広角カメラで撮影
同じ位置で超広角カメラに切り替えて撮影
5倍望遠で撮影すると、かなり近くまで寄った写真になる
10倍望遠での撮影でも建造物の細かいフレームまで、クッキリと撮影できている
50倍望遠に切り替え、同じ位置からエッフェル塔の展望台付近を撮影

 ファーウェイとLeicaのコラボレーションによるカメラは、世代を追うごとに着実に進化を遂げてきたが、今回のHUAWEI P30 Proに搭載されたLeicaクアッドカメラは、広角/超広角/望遠という3つのカメラにより、2.5cmのマクロ撮影から50倍ズームの月まで、幅広い範囲を美しく撮影することができる。もちろん、HUAWEI P20 ProやHUAWEI Mate 20 Proに搭載され、高い評価を得てきたAIを活かした撮影機能も継承されており、スマートフォンのカメラとして、非常に完成度の高いものに仕上げられている。ライバル機種との競争が激しい中、しっかりと自らの強みを活かし、再び大きなアドバンテージを築いた『最強』のモデルと言えるだろう。

夜のライトアップされたエッフェル塔を撮影

国内版の発売はどうなる?

 3月26日にフランス・パリで発表された「HUAWEI P30 Pro」と「HUAWEI P30」の2機種の内、今回はデモ機として提供された「HUAWEI P30 Pro」の概要とカメラ性能などについて、取り上げた。この他にもユーザーインターフェイスなど、チェックしておきたい点はあるが、今回試用したモデルはあくまでもグローバル版であり、何もアナウンスされていない国内版では内容が変更される可能性がある。

従来のHUAWEI P20 Pro(左)と比べ、HUAWEI P30 Pro(右)はカメラ部などのデザインが異なる。国内向けの展開が気になるところだ

 そうなってくると、国内市場にはどのように展開されるのかが気になるところだ。昨年はHUAWEI P20 ProがNTTドコモ専売という予想外の形で扱われ、HUAWEI P20はSIMフリー端末として、国内市場で販売された。順当に行けば、今回もこの流れを継承することになりそうだが、その際、グローバル版と比較して、どの程度までカスタマイズされるのかが注目される。

 2018年のNTTドコモ版「HUAWEI P20 Pro」はNTTドコモ専売ということもあり、グローバル版にはないおサイフケータイが搭載されたが、その一方でファーウェイ製SIMフリー端末でおなじみのユーザーインターフェイスが削除され、すでにSIMフリー版で慣れ親しんでいるユーザーからはやや不評を買った。最終的にはバージョンアップなどで改善され、SIMフリー版などと変わらないユーザビリティが確保されたが、今回のHUAWEI P30 Proではどのような対応が採られるのかが注目される。

 販売価格は欧州向けが999ユーロからとなっており、国内向けは10万円を超えることが確実視されているが、今夏からは販売方法が変更され、各社向け共、端末購入補助が適用されないと予想されるため、実質価格は高くなる可能性が高い。その場合、消費者がどのような選択をするのかが注目されるが、少なくとも今回試用したデモ機の内容を見る限り、10万円を超える価格に見合う、いや、それ以上の内容を搭載したモデルに仕上げられていると言って差し支えないだろう。国内版の発表を楽しみに待ちたい。

法林 岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話・スマートフォンをはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるゼロからはじめるiPhone XS/XS Max/XR超入門」、「できるゼロからはじめるiPad超入門 Apple Pencil&新iPad/Pro/mini 4対応」、「できるゼロからはじめるAndroidスマートフォン超入門 改訂3版」、「できるポケット docomo HUAWEI P20 Pro基本&活用ワザ 完全ガイド」、「できるゼロからはじめるAndroidタブレット超入門」、「できるWindows 10 改訂4版」(インプレス)など、著書も多数。ホームページはこちらImpress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。