法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

2万円台で大画面&デュアルカメラを実現した「nova lite 2」

 昨年来、スマートフォンの新しいトレンドとして、各社のハイエンドモデルを中心に、サポートされ始めたワイドディスプレイとデュアルカメラ。この新しいトレンドをリーズナブルな価格帯で実現した「nova lite 2」がファーウェイから発表された。ひと足早く実機を試すことができたので、レポートをお送りしよう。

ファーウェイ「nova lite 2」、約150.1mm(高さ)×72.05mm(幅)×7.45mm(厚さ)、約143g(重量)、ブラック(写真)、ブルー、ゴールドをラインアップ

2つの注目機能をリーズナブルな価格帯で実現

 国内のモバイル業界では、かつてのケータイ時代から、それぞれの時期に新しいトレンドが生まれ、一気に市場に広まることがあった。たとえば、古くは折りたたみデザインやカメラ付きケータイ、カラー液晶、高解像度液晶などがあったが、スマートフォン時代に入ってからは、端末のデザインそのものが似通っているうえ、各社が基本的な完成度を高める方向に注力していたこともあり、これといった大きな変革をもたらすようなトレンドは生まれてこなかった印象もある。

 しかし、昨年あたりから、各社がハイエンドモデルを中心に、競うように搭載し始めたハードウェアのトレンドがある。そのひとつが縦横比18:9のワイドディスプレイ、もうひとつが2つのイメージセンサーで新しい写真の撮り方を提案するデュアルカメラだ。

 まず、縦横比18:9のワイドディスプレイについては、これまでの多くのスマートフォンが採用していた縦横比16:9のディスプレイに比べ、端末を横向きにしたときはワイドに表示でき、縦方向に持ったときは縦長に表示できるという特徴を持つ。横向きは当然のことながら、映像コンテンツなどを視聴するときに大きく表示できるうえ、映画などは何も表示されない黒い帯のエリアを減らすことができる。縦向きについてはWebページやSNSなどのコンテンツで一度に表示できる情報量が多く、長いWebページでもスクロールさせる回数を減らすことができる。これに加え、縦横比18:9のワイドディスプレイは、端末前面のほとんどを占めるように搭載されるため、ユーザーが手にしたとき、ディスプレイだけを持ち歩いているような演出が期待できる。

 また、デュアルカメラについては、製品によって、その仕様は違い、なかには標準と望遠、広角と標準というように、焦点距離が異なるカメラを組み合わせた機種もあるが、1つのカメラを搭載した機種と大きく違うのは、「ボケ味」のある写真を撮影できるようにしていることが挙げられる。具体的には2つのカメラの被写界深度の差を利用し、特定の被写体を中心にピントを合わせ、背景などをぼかすことで、主たる被写体を際立たせた写真を撮影したり、撮影後にピントを合わせる位置を変更するといった使い方ができる。InstagramなどのSNSで写真をシェアしたときに、見映えのする写真を撮れるようにしているわけだ。

 これらのスマートフォンの新しいトレンドは、ディスプレイとカメラという部品にコストがかかるため、これまでは主に各社のフラッグシップやミッドハイクラスのモデルに中心に実現されてきたが、今回、ファーウェイから3万円を大きく切る価格帯で、これらの機能を実現した「nova lite 2」が発表された。ファーウェイと言えば、国内市場において、各携帯電話会社向けにモバイルWi-Fiルーターなどを供給する一方、SIMフリースマートフォンの幅広いラインアップを次々と投入し、シェアを拡大してきたメーカーだ。

 今回の「nova lite 2」は「nova lite」の後継機種で、同社が販売するSIMフリースマートフォンではもっともリーズナブルな価格帯のモデルに位置付けられる。ちなみに、「nova lite 2」は国内のMVNO各社を通じて販売されるMVNO専売モデルで、今のところ、家電量販店などでは直接、単品で販売はされない見込みだ。市場想定価格は2万5980円(税別)で、2月9日から販売が開始される。

5.65インチワイドビューディスプレイを搭載

 ファーウェイ製スマートフォンと言えば、大画面のMateシリーズ、ひと回りコンパクトなボディで、カメラ性能などを重視したPシリーズが展開されてきた。これらに対し、novaシリーズは2016年9月のIFA 2016で発表された新しいシリーズで、ファッション性を重視する若い世代をターゲットに展開されてきたモデルと位置付けられている。国内向けにはちょうど1年前の2017年2月に発表され、「HUAWEI nova」「HUAWEI nova lite」がMVNO各社向けを中心に販売されてきた。

 前述の通り、今回発表された「nova lite 2」は、従来の「nova lite」の後継機種に位置付けられ、基本的なコンセプトを継承しつつ、従来モデルとは違った新しいデザインに仕上げられている。そのひとつが「nova lite 2」のセールスポイントのひとつである「ワイドビューディスプレイ」だ。

 本体前面には最大2160×1080ドット表示が可能な5.65インチフルHD+対応液晶ディスプレイを搭載しており、本体前面のほとんどを覆い尽くすデザインに仕上げられている。こうしたデザインは同社の上位モデルである「HUAWEI Mate 10 Pro」「Mate 10 lite」とも共通するもので、グローバル向けでは「FullView Display」の名称で表わされている。

 画面の縦横比は18:9になり、前述のように、縦向きではWebページなどが閲覧しやすく、横向きでは映像コンテンツなどが視聴しやすい。SNSの利用頻度が高いユーザーだけでなく、モバイル環境でも動画配信サービスなどを利用しているユーザーにとっても魅力的な仕様と言えるだろう。

右側面には上側に音量キー、すぐ下に電源キーを備える。背面のダブルレンズカメラは本体からわずかに突出した仕上げ
左側面にはピンで取り出すタイプのトレイ式SIMカードスロットを備える

 5.65インチという大画面ディスプレイを搭載しながら、ボディ幅は72.05mm、厚さは7.45mmに抑えられており、ボディはスリムで持ちやすい印象だ。ちなみに5.5インチディスプレイを搭載した「iPhone 8 Plus」のボディ幅は78.1mmで、手にしたときのサイズ感がはっきりわかるくらいの違いがある。

 本体には3000mAhの大容量バッテリーが内蔵されており、底面の外部接続端子はmicroUSBを採用する。背面に搭載された指紋センサーは、画面ロック解除のほか、長押しにより、写真やビデオの撮影、着信への応答、アラームの停止などの操作が利用できる。指紋センサーをスライドさせて、通知パネルを表示したり、写真再生中のページ送りなどの操作も可能だ。

外部接続端子はmicroUSBを採用。3.5mmイヤホンマイク端子も備える
背面には指紋センサー、ダブルレンズカメラを備える。上下のパーツは材質とカラーが少し異なる。ブラックはつや消しで仕上げられているが、指紋の跡は残りやすい
NTTドコモのネットワークを利用したMVNOのSIMカードを挿したときに表示されるAPN

 チップセットは「Mate 10 lite」と同じKirin 659オクタコア(2.36GHz×4、1.7GHz×4)、RAM 3GB、ROM 32GBを搭載し、ストレージは最大256GBのmicroSDメモリーカードにも対応する。このクラスのスペックとしては十分なレベルであり、動画配信サービスなども快適に楽しむことができる。

 モバイルネットワークの通信方式及び周波数帯域の対応については、スペック表を参照していただきたいが、基本的に利用できるのはNTTドコモ及びソフトバンクのネットワークのみで、auネットワークには対応していない。VoLTEについては今のところ、ソフトバンクのみ対応とのことだったが、今回試用した開発中のデモ機では「VoLTE通話」という設定項目が有効にできたものの、VoLTEでの通話は確認できなかった。

ワイモバイルのIMカードを挿したときに表示されるAPN
ワイモバイルのSIMカードを挿したときは、モバイルネットワークの設定画面に「VoLTE通話」の項目が表示された
SIMカードトレイはデュアルSIM対応だが、LTE/3GとGSMの構成のみ利用可能。microSDメモリーカードと2枚目のnanoSIMカードは排他利用

 SIMカードはnanoSIMに対応したデュアルSIMだが、LTE/3GによるDSDS(デュアルSIM/デュアルスタンバイ)ではなく、LTE/3GとGSM対応なので、2枚目のSIMカードは主に海外渡航時などに利用するものになる。

 Wi-FiについてはIEEE802.11b/g/nの2.4GHzのみの対応となっており、5GHz帯は利用できない。価格面を考慮すると、しかたのない部分だが、集合住宅などで、2.4GHz帯の無線LANアクセスポイントの混雑が気になるユーザーには残念なところだ。

 プラットフォームはAndroid 8.0に、HUAWEIのEMUI 8.0を組み合わせた構成を採用する。ホーム画面はインストールされたアプリのアイコンが並ぶ仕様で、すぐに目的のアイコンを見つけることができるが、他のファーウェイ製端末で選択できるようなアプリ一覧ボタンからアプリ一覧画面を表示する仕様は用意されていない。Androidプラットフォームの操作に必要なナビゲーションバー(ナビゲーションキー)は戻るキーと履歴キーの並び位置を変更できるほか、ワンタッチで通知パネルを表示可能なボタンを利用する設定も選ぶことができる。さらに、画面の最下段の左右を上下にスワイプすることでナビゲーションバーの表示/非表示を選んだり、自由な位置でナビゲーションバーの操作を再現できる「ナビゲーションメニュー」の利用も可能だ。

ナビゲーションキーを常時表示にせず、必要に応じて、画面下段からスワイプして表示されることができる
自由に移動できるボタンを表示し、このボタンの左右スライドなどでナビゲーションキーの操作を利用することも可能
3本の指で下方向にスワイプすると、スクリーンショットを撮ることが可能

 また、片手で操作するとき、文字パレットを左右に寄せて表示したり、縮小したミニ画面を表示する「ワンハンドUI」、着信時に端末を裏返して、着信音を止めるなどの操作が可能な「モーションコントロール」などの機能も用意されている。スクリーンショットはこれまで指関節で操作する「ナックルジェスチャ」が採用されてきたが、今回は三本指で画面をなぞる仕様が採用されている。他のファーウェイ製端末から乗り換えるユーザーは、少し気になるポイントかもしれない。日本語入力は「SwiftKey」がプリインストールされている。

指紋センサーを使い、写真やビデオ撮影のシャッター、通知パネルの表示などの操作ができる
通知パネルは他のファーウェイ製スマートフォンとほぼ共通。並べ替えやカスタマイズもできる
文字入力のキーボードを片側に寄せて表示できる
画面を斜めにスワイプして、画面を縮小表示することもできる
文字入力はSwiftKeyが採用されており、日本語入力も問題なく、利用できる

1300万画素&200万画素のダブルレンズカメラを搭載

 「nova lite 2」のもうひとつの特徴は、やはり、背面に搭載されたダブルレンズカメラだ。

背面には1300万画素と200万画素のRGBセンサーを組み合わせたダブルレンズカメラを搭載する

 2つのセンサーを搭載したカメラは、昨年あたりから各社のスマートフォンにも採用されるようになってきたが、ファーウェイは2015年に楽天モバイル向けに供給した「honor 6 Plus」で初採用して以来、積極的に取り組んできており、「P9」ではドイツの老舗カメラメーカー「Leica(ライカ)」との協業によるダブルレンズカメラを搭載するなど、市場をリードしてきた実績を持つ。

HUAWEInova lite 2(左)は上位モデルのHUAWEI P10(右)の特徴をうまく取り込みながら、仕上げられている

 前述のように、ダブルレンズカメラの構成は製品によって、構成が異なるが、「nova lite 2」は1300万画素と200万画素のRGBセンサーから構成される。「P10」「P10 Plus」や「Mate 10 Pro」など、上位機種ではダブルレンズカメラをRGBセンサーとモノクロセンサーで構成し、モノクロセンサーで得た幅広いダイナミックレンジの明暗情報をRGBセンサーで得たカラー情報を組み合わせることで、高品質な写真を実現しているが、「nova lite 2」のダブルレンズカメラは1300万画素のRGBセンサーで写真を撮り、200万画素のRGBセンサーは被写界深度の差を利用し、ボケ味を出すための情報を得るために利用されている。

ワイドアパーチャを有効にして、アパーチャレベルを変更すると、ボケ味を変更できる
ダブルレンズカメラの撮影モード。その他を選べば、「ナイスフード」「文書スキャン」を追加できる
ダブルレンズカメラの設定画面。スマイルキャプチャは子どもの顔写真を撮るときなどにも便利だ

 実際に人物やモノをいくつか撮影してみたが、同価格帯のシングルレンズカメラのSIMフリースマートフォンに比べると、やはり、背景のボケ味などに明確に差があり、F値0.95~F値16まで、幅広い絞りを変更できるワイドアパーチャを活用することで、見映えのする写真を撮ることができた。ただ、暗いところでの撮影については同社の上位モデルとの差が大きく、普段、筆者がよく撮影を試している薄暗いバーでの撮影は、グラスやボトルなどが見えにくい仕上がりになってしまったが、屋外での夜景などについては、十分なレベルの撮影ができている。ポートレートモードではファーウェイ製端末でおなじみのビューティ設定が用意されており、10段階でエフェクトの強度を設定することができる。このあたりはファーウェイ製端末ならではのアドバンテージだろう。

夜の屋外で撮影。ショッピングモールなので、周囲がある程度、明るいため、バランス良く撮ることができた
いつもの薄暗いバーで撮影したところ、カクテルのグラスなどははっきりと見えず、少し明かりのある状態で撮る必要があった
ワイドアパーチャを有効にして撮影した。手前側の白いラベルのボトルが少し浮き上がり、後ろ側のボトルはうまくぼかされた

 一方、インカメラについては、800万画素のイメージセンサーを採用する。こちらもポートレートモードを有効にすることで、おなじみのビューティ設定を10段階で変更することができるほか、背景のボケ味のON/OFFを切り替えることが可能だ。ちなみに、インカメラで撮影するときは、手のひらをカメラに向けるだけで、3秒のタイマー撮影が起動できる「ジェスチャーセルフィー」が利用できる。手のひらは指先が上、手首が下という向きのみで起動する仕様のため、使いはじめたときはやや戸惑うかもしれないが、画面にも手のひらのアイコンが表示されるなど、視覚的にもわかりやすいので、頻繁に自分撮りをするユーザーなら、ぜひ活用したいところだ。

インカメラの撮影モード。ダブルレンズカメラほど、種類は多くない
インカメラの設定画面。あらかじめ登録した顔にビューティ効果を加えるパーフェクトセルフィーも利用できる

この内容で2万円台半ばはかなりお買い得

 ここ数年の「格安スマホ」の流れで、さまざまなメーカーからSIMフリースマートフォンが登場し、各携帯電話事業者も高価なハイエンドモデルばかりを展開するのではなく、対抗策として、買いやすい価格帯のモデルを徐々に増やしてきている。ただ、安価な価格帯のモデルは、シンプルな構成のモデルが多く、上位モデルと比較すると、どうしても我慢して使うような仕様のモデルが多くなってしまっている感は否めない。

 今回発表された「nova lite 2」は、主要メーカーのSIMフリースマートフォンの中で、もっともリーズナブルな価格帯に含まれる2万円台半ばという価格設定ながら、昨年来の各社のフラッグシップモデルなどに搭載された「縦横比18:9ワイドディスプレイ」と「ダブルレンズカメラ」という新しいトレンドをいち早く取り込み、他製品を一歩リードするモデルに仕上げられている。しかも新しいトレンドをハードウェア的に取り込むだけではなく、しっかりと上位モデルのソフトウェアやノウハウなども活かしながら構成されており、非常にお買い得感の高いモデルとなっている。外部接続端子がmicroUSBであること、Wi-Fiが2.4GHzのみであることなど、スペック的に上位モデルよりも抑えられた部分もあるが、実用上はそれほど大きなマイナスにはならないはずだ。手軽にワイドディスプレイ、ダブルレンズカメラを楽しみたいユーザーには、ぜひチェックして欲しい新モデルと言えるだろう。

法林 岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話・スマートフォンをはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるゼロからはじめるiPhone X/8/8 Plus超入門」、「できるゼロからはじめるAndroidタブレット超入門」、「できるゼロからはじめるAndroidスマートフォン超入門 改訂2版」、「できるポケット HUAWEI P10 Plus/P10/P10 lite 基本&活用ワザ完全ガイド」、「できるWindows 10 改訂3版」(インプレス)など、著書も多数。ホームページはこちらImpress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。