みんなのケータイ
GoogleのMVNO「Project Fi」で海外出張を乗り切る
【Nexus 6】
石川温
(2015/9/15 06:00)
海外出張の際に、まず手始めに行うのが現地で使うSIMカードの調達だ。空港に降りてすぐ売店などでプリペイドSIMカードを購入するのが恒例となっている。現地キャリアのプランやLTEなどの通信環境の充実度合いをチェックするのにも役立っている。しかし、それも結構、面倒だったりもする。
そこで、これからは「SIMカードを調達しない」という生き方を模索しようと思っている。SIMカードを買わないというのは何も国内キャリアの海外パケット定額サービスを使うわけでも、海外用Wi-Fiルーターをレンタルするわけでもない。また、ケイ・オプティコムが販売する「mineo海外用プリペイドSIM」を使うわけでもない。
自分が頼りにしようとしているのが、グーグルがアメリカで提供しているMVNOサービス「Project Fi」だ。
まず「Project Fi」だが、グーグルが募集を開始した直後の5月1日に申し込みをしていたのだった。その後、7月7日に招待状が来たのだが、アメリカのアカウントでないともう申し込めないことが判明。たまたまアメリカで作っていたアカウントがあったので、そちらで申し込み直すと、7月25日にようやく招待状が来て、申し込める状態になったのだった。
ただ、SIMカードだけでの申し込みもできたが、対応端末が「北米版のNexus 6」に限定されていた。北米版のNexus 6は、技適に対応している可能性は低く、また国内キャリアのLTEに対応したバンドもあまりない仕様となっている。国際版Nexus 6を調達しようと思ったが、果たして国際版でProject FiのSIMカードが使えるかもわからない。そこで、仕方なく、北米版Nexus 6もセットで申し込むことにした。
ネットでは、すでに次期Nexus 5などの噂も出始めている中、「このタイミングでNexus 6を買わなくてはいけないのか」と自暴自棄にもなったが、新しいサービスを体験する上では仕方ない。端末価格は499ドルだ。
ちなみに、申し込む上での番号は、今までVerizonでポストペイ契約していたiPhone 6の電話番号をMNPすることとした。この電話番号は2007年にAT&TでiPhoneが発売された時に入手したもので、しばらくプリペイド契約であったが、長年の契約が認められてポストペイに切り替えが認められたものだった。その後、2011年にVerizonからiPhoneが発売されるときに、AT&TからVerizoにMNPしたものだ。Verizonのネットワーク品質はとても良く、かなり気に入っていたのだが、アメリカ取材以外では使わず、毎月の通信費がバカにならないと思っていた。
VerizonからProject FiへのMNPは、オンライン上で電話番号と住所、カスタマー番号を入力するだけで完了する。このあたりの手軽さは日本でも見習って欲しいものだ。
Project FiのSIMカード入りNexus 6をアメリカ在住のお世話になっている方の家に送ってもらい、さらにその方が日本に来るということで、無事にIFAの出張前に実物を手にすることができた。
Project Fiが便利なのは、世界120カ国でも使えるという点だ。しかも、どの国でもデータ通信料金は1GBで10ドルという設定だ。海外の場合は3G接続の256kbpsになってしまうのがネックでもある。
実際に経由地のフランスと、目的地のドイツ・ベルリンのIFA取材に中にずっとNexus 6を使っていたが、実に快適な印象があった。海外旅行時に必要なメール、Facebook、Twitter、グーグルマップなどは全く問題ない速度で利用できる。部屋にいるときなどはインターネットラジオを聞いたりするが、それらも普通に使えた。ここ最近、LTEで150Mbpsとか225Mbpsとか最高速度が気になってしかたなかったが、案外、256kbpsでも事足りてしまうようだ。
フランスとドイツには6日間いたが、使ったデータ量は1.2GBほどで、請求は12ドル85セントだった。使った分だけ、無駄なく請求されるのは意外と悪くないと思った。
ちなみに、ドイツに滞在中、知らない番号から着信があったのだが、なんとそれはVerizonからだった。留守電には「魅力的なオファーがあるから話がしたい。Verizonに帰ってきな」と入っていた。しかも、その音声メッセージがテキスト化され、表示されていたのにはビックリした。Verizonというトップキャリアでも地道に転出したユーザーに電話しているかと思うと、アメリカでも顧客獲得競争は激しくどの国でも大変なんだと実感した。
次に使ったのがアップルの新製品発表イベントがあったサンフランシスコだ。Project Fiは本国アメリカではT-Mobile USとSprintのLTEネットワークを使う。2社のLTEよりも、公衆無線LANのほうが速い場合は、Wi-Fiを掴む設定となっている。
実際に使ってみたが、やはりLTEでつながるのは快適だ。エリアに関しても、ソフトバンク契約のiPhone 6でアメリカ放題としてSprintをつないでいるのと比較しても、広いように感じた。このあたりはT-Mobile USが接続できるメリットが生かされているのかも知れない。
Project Fiは月額基本料金が20ドル、データ通信料金は1GBで10ドルという設定だが、アメリカだけでなく、他の国に旅行しても現地で使えるという点がありがたい。使わなかった分は翌月に返金されるという仕組みもありがたい。グーグルにはぜひとも日本版Project Fiをつくって欲しいと思う。