みんなのケータイ

「iPhone 8」「Pixel 6 Pro」「Galaxy S20+」を使う筆者は冬の指紋認証を快適に使いたい

 筆者は普段使いとして4つのスマートフォンを持ち歩いているが、このうち一番使用頻度が高いのが「iPhone 8」だ。写真撮影と取材時の録音などはPixel 6 Pro任せだが、メールやスケジュールの確認、地図やルート検索、SNSのチェックや投稿、MessengerやSMSでのやり取り、情報収集まで、ほとんどの作業は「iPhone 8」で行っている。さすがにバッテリーがヘタってきていて、最近はつねに充電をしながらでないとあっという間にバッテリー残量が赤字になってしまうほどだったが(Galaxy S20+ 5GやPixel 6 Proのバッテリ共有機能を使って無線充電)、昨年2021年末にはApple Store銀座に出向いて5940円でバッテリ換装し、ほぼ新品同然の使い勝手に戻っている。

 すでに「iPhone 13」までリリースされている昨今、なぜ2017年という5年近く前の製品を大事に使い続けているかといえば、すべてはTouch IDの存在に由来する。

 「iPhone X」で導入された「Face ID」はApple Pay使用時にサイドボタンのダブルクリックが必要で、かつ顔認証が入ることから使い勝手が悪いと個人的に思っている。Touch IDであれば、本体がスリープ状態であってもセンサーに指を乗せたまま非接触リーダーに端末を近付けるだけで決済が行えるため、「モバイル決済ジャーナリスト」を標榜する筆者にとってメイン端末はあくまでTouch IDを搭載したiPhoneであり、今後も本体のサポートが終了するまで乗り換えるつもりがない。少なくとも、Appleが今後しばらくはTouch IDに代わるソリューションをiPhoneに搭載するつもりがないらしいと判断しているからだ。

米ニューヨーク地下鉄にiPhone 8のTouch IDで乗ろうとしているところ。OMNY(ニューヨーク周辺の交通機関で使える非接触改札システム)では「オープンループ」という仕組みで非接触クレジットカードでの乗車が可能になっている

 だが、こうした筆者お気に入りのTouch IDにとっての鬼門が「冬」だ。写真にもあるようなニューヨークは毎冬に展示会取材で訪れているが、1月ともなればブリザードが到来することもあり、吹雪のなか気温はマイナス10度を下回ることも多い。寒さにはかなり強いと自負する筆者だが、さすがにこの気温下で軽装での外出は厳しく、手袋は必須アイテムだ。指紋認証のためには毎回手袋を外す必要があり、この点が面倒だ。交通機関の利用であれば「エクスプレスモード」が利用できるため指紋認証は不要だが、幸いなことにニューヨーク地下鉄のMTAはエクスプレスモードに対応しており手袋したままの乗車が可能だ。

 冬のもう1つの問題が「指の乾燥」だ。夏場の汗や水ものを触った直後の指紋認証も微妙だが、冬場は肌が乾燥し、指紋認証の成功率が格段に落ちる。気温や湿度がある程度快適に保たれている屋内とかならともかく、外出先、特に外で端末を操作しようとすると成功率の低さに愕然とすることが多い。カメラの起動などは指紋認証不要なので問題ないのだが、とっさの操作が必要なケース、例えばコード決済などアプリを使った決済サービスであったり、ポイントカードのバーコードや入館用のQRコードを出す際に戸惑うことが多い。

冬場の指紋認証をどうするか

 いろいろ調べていたが、実のところ効果的な対処方法がないというのが実情だ。対策の1つとしては「新たに(乾燥した状態の)指紋を登録し直す」ことが挙げられるが、指の乾燥は恒常的なものではなく、しばらく温めていたり、軽く湿らせた状態で放置しておくと、すぐに元の登録指紋で認証が通るようになる。こうなると、乾燥状態の指紋を登録したのでは、かえって認証が難しくなってしまう。個人的によく行う対策としては、スマートフォンの操作に使う右手または左手のいずれかを、外での移動中は極力ポケットのなかに入れておき、ある程度の汗で指が乾燥しすぎないようにしておくことが挙げられる。確実ではないものの、ある程度成功率を上げられる。

実際にTouch IDが有効に動作しているかはiPhoneの設定メニューで確認できる。センサー上に指を置くと、登録された情報をマッチングを行い、該当する指の部分がグレーアウトする(写真ではFinger 1)

 もう1つの方法は、指紋認証を諦めて強引にPINコード入力や、Androidにおけるパターンロック入力モードを起動してしまい、さっさと画面ロックを解除してしまうことだ。指紋認証で戸惑うよりは、わずか数秒で確実にロックが解除できるので、最近ではこちらの方法を選択することが多い。

 難点としては、この方法ではApple Payが利用できないことが挙げられる。Face IDの場合にはPINコード入力が選択できるが、Touch ID搭載のiPhoneでは指紋認証を求められるため、この部分で引っかかってしまう。回避策はApple Watchを併用することだが、お気に入りのTouch IDでの最大の難点であり、非常に歯がゆい。

 Apple Payから離れて筆者手持ちの他のスマートフォンを見渡すと、まず「Pixel 6 Pro」の指紋認証が割と冬場の操作に強いという印象だ。

 Pixel 6/Pixel 6 Proは従来モデルと異なり、画面内にセンサーを埋め込んで指紋認証するタイプに変更された。仕様として、センサー上に割と長時間指を置いた状態で認証を行う必要があるため、「時間がかかりすぎる」と筆者周辺で不評の声を聞いたりしたのだが、iPhoneのTouch IDがうまく動かないような状態でも、Pixel 6 Proではきちんと一定時間、指さえセンサー上に当てていれば、より高い確率で認証が成功する印象を受けた。正確なカウントは行っていないが、iPhoneでの成功率が6-7割程度のケースでも、Pixel 6 Proでは9割以上の成功率だと考えている。

Pixel 6 Proの指紋認証。認識場所以外の部分をタッチしようとすると……
このように画面が光ってポイントを指し示してくれる。評判の悪いPixel 6シリーズの指紋認証だが、個人的印象だとタッチ時間がある程度長ければ認識精度は高いと考えている

 一方で、毎回難儀しているのが「Galaxy S20+ 5G SC-52A」だ。こちらも画面にセンサーを埋め込むタイプの指紋認証だが、冬場の認識成功率は非常に低い。先ほどのシチュエーションでいえば1~2割程度の成功率に過ぎない。さらに悪いことに、このデバイスではおサイフケータイが動いている関係もあり、決済関係のアプリの多くがここにインストールされている。コード決済での支払い、ポイントカードの掲出など、この認証成功率の低さが理由で途中で利用を諦め、別の決済手段に変更してしまうことは少なくない。

 あまりの指紋認証の反応の悪さをケータイ事情に詳しい某ライター氏に愚痴っていたところ「Galaxyなら指紋より顔認証のが楽なので、そっちに設定しておけばデバイスを取り上げたときにはすぐに認証が完了している」とコメントされた。iPhoneとは異なり、Androidでは複数の認証方法が併用できるので、何も指紋認証にこだわる必要はないようだ。

個人的に毎回鬼門なのがこのGalaxy S20+ 5G SC-52Aの指紋認証。指をぴったりくっつけないと反応しないし、指の乾燥に対する認識精度も低い

 結局のところ、適材適所があるということで、生体認証が1種類しか選べないiPhoneの問題ではあるものの、メインデバイスにiPhoneを選んでいる以上は当面はこの問題がつきまといそうだ。あくまでTouch IDにこだわる筆者だが、iPhone 8が壊れて新しいiPhoneに買い換えるとき、実は割とすんなりFace IDを受け入れられるのかもしれない。