みんなのケータイ

個性的な「Leitz Phone 1」で考えさせられた日本のスマホ市場のあり方

【Leitz Phone 1】

 この夏商戦スマホは各社ともカメラに関して気合いが入っており、正直、どの機種を購入すべきか迷っていた。

 最初はGalaxy S21が気になったこともあり、せっかくのオリンピックイヤーということでGalaxy S21 5G Olympic Games Editionを選択肢に入れたが、一方でXperia 1 IIIの完成度の高さも気になっていた。

 そうこうしているうちにシャープが1インチセンサーを載せたAQUOS R6を発表。ここ数年、仕事用のデジカメはソニーのRX10シリーズとRX100シリーズという1インチセンサーを載せたものを愛用してきたので「久々に1インチセンサーを載せたスマホが登場したか」と歓喜に沸いていたのであった。「こりゃ、AQUOS R6を買うしかないな」と思っていたら、とある業界関係者から「なにやら、シャープはライカとまだ隠し球を持っているみたい」とささやく声が……。

 すると6月17日にライカとソフトバンクが「Leitz Phone 1」を発表。AQUOS R6と比べて5万円近く高いのだが、メディア向けのタッチアンドトライで見て触った実感がとてもよかったので、NTTドコモで予約していたAQUOS R6をキャンセルして、ソフトバンクでLeitz Phone 1を予約したのだった。

 Leitz Phone 1が届いた直後、ご挨拶代わりにソフトバンクのSIMカードを入れていたが、すぐにNTTドコモのSIMカードに切り替えてしまった。Leitz Phone 1は一括購入でなくても、SIMロックが解除された状態で販売されている。これも、総務省が地道にSIMロック解除を訴えてきた成果が出てきたと言えるだろう。

 いまでは端末と通信契約が分離され、通信契約をしていなくても、キャリアから端末を購入できるようになった。SIMロックも解除が前提となっている。

 端末と通信契約、それぞれ自由に選べるのはユーザー視点とすれば大歓迎であるが、Leitz Phone 1を購入して改めて、これからの日本のスマホ市場はどうなってしまうのか、ちょっと先行きが不透明になる感じがしてきている。

 ソフトバンクとしては、他キャリアと差別化をしたくて、ユーザーを新規に獲得したいからこそ、ライカと手を組み、シャープ「AQUOS R6」をベースにLeitz Phone 1を作り、独占販売してきたはずだ。実際、自分はNTTドコモでAQUOS R6をキャンセルし、Leitz Phone 1を購入している。

 しかし、通信契約をしていなくても、キャリアから端末を購入できるようになったことで、ソフトバンクを契約していないにも関わらず、Leitz Phone 1を購入している人もいるはずだろう。

 つまり、キャリアはLeitz Phone 1のような個性的なスマホを企画しても、通信料金収入を必ずしも見込めない状況になりつつある。

 Leitz Phone 1は18万円という高価なスマホであり、売れ残るリスクは相当、あるはずだ。メーカー単独で企画し、販売するのは難しく、全国にショップ網を持ち、通信料金収入を見込めるキャリアだからこそ、実現できた企画端末とも言える。

 今後、通信料金収入が見込めず、単なる端末販売となると、ここまで尖った製品をキャリアが企画、販売するのは難しくなるのではないか。

 これまでキャリアは、デザインに特化したものやシニア向けや子供向けなど、特定のニーズに絞った端末も多数、出してきた。これも、販売リスクがあっても、通信料収入が見込め、ショップ網や割引施策などで、なんとか在庫を処分できるという後ろ盾があったからだ。

 総務省がやっている施策は「キャリアは通信回線を安く提供すればいい」という考え方に過ぎない。

 しかし、これまでキャリアは時に個性的だったり最先端な端末を提供することで、ユーザーの生活を楽しませてきた感がある。

 確かにキャリアは通信回線を提供し、端末はメーカーが作り販売するという完全分離モデルでもいいのかも知れない。しかし、それでは、メーカーが売れるものしか作らず、保守的にならざるを得なくなるのは間違いない。

 特に「こんなの売れるのかな」という奇抜な端末は、結構、キャリア主導のモデルだったりしてきた。ひょっとすると、そんな端末はLeitz Phone 1が最後になるんじゃないか。

 日本のスマホ市場がこれからつまらなくなるような気がして、ちょっと切なくなるのであった。