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香港地下鉄がスマホQRコード乗車対応、外国人客も利用できる

 2021年1月23日から香港の地下鉄(MTR)がAlipay香港によるQRコード決済の乗車に対応したのでさっそく試してみました。

香港の地下鉄がQRコードで乗れるようになった

 各国で使われているスマートフォンを使ったモバイルペイメントは交通機関に対応しているものも多くあります。しかし対応機種が限られていたりクレジットカードが必要だったり、さらにはその国の居住者でなければ使えないなど制限があるものも多くあります。

 筆者の居住する香港は日本より先にソニーのFeliCaを採用した「オクトパスカード」が普及しており、香港在住者で持っていない人はいないほどです。ですので地下鉄やバスに乗るときのキャッシュレスはかなり昔から進んでいました。しかし、コンビニなどでモバイルペイメントが普及していくと同時に、オクトパスカードへの対応も進みました。2019年10月からSamsung Payが、2020年6月からApple Pay、そして2020年10月からHuawei Payがオクトパス対応となり、対応スマートフォンで交通機関に乗車できるようになりました。

 とはいえそれぞれのサービスは対応機種が必要です。またお金をチャージできる銀行やクレジットカードが限られています。筆者は昨年、Samsung Pay対応のGalaxy Note10+ 5Gを持っていましたが、イギリス版だったため香港のSamsung Payが使えませんでした。またファーウェイのMate 40 Proの大陸版を買った直後にHuawei Payがオクトパスに対応しましたが、香港内でHuawei Payは使えるものの、オクトパスは使えず地下鉄乗車ができませんでした。

 とまあこのように「スマホがあればなんでもできる」という状況にはなっていないわけです。しかし2021年1月、NFCを使わないQRコード決済がオクトパスカードに対応。これで様々なスマートフォンで地下鉄に乗れるようになりました。Alipay(アリペイ)香港のQRコード乗車券サービス「EasyGo」がオクトパスに対応したのです。

Alipay香港対応の地下鉄駅構内広告

 Alipayの名前は聞いたことがある人は多いでしょう。WeChat Pay(ウィーチャットペイ)と並んで中国では誰もが使っているモバイルペイメントサービスです。しかしお金のチャージが難しく、外国人には使いにくいものでした。

 今回香港で対応したのは「Alipay香港」。AlipayとAlipay香港は全く別のアプリなので注意が必要です。WeChat Payは1つのアプリ内で中国と香港のアカウントを切り替えできますが、Alipayに関しては香港向けのサービスは別アプリとなっているのです。

Alipay香港(左)とAlipay(右)は別アプリになっている

 このAlipay香港は、大陸のAlipayより使いやすくなっています。スマートフォンにAlipay香港を入れた後、お金のチャージは香港のコンビニなどで現金で行えます。またクレジットカードを登録できるので、お金をチャージしなくても使えます。筆者のAlipay香港には香港と日本のクレジットカードを登録して使っています。つまり日本人がAlipay香港を自分のスマートフォンに入れて、普段使っている日本のクレジットカードが使えるわけです(デビットカードは試していません)。

 Alipay香港を開くと「EasyGo」のメニューが見えます。これがAlipay香港のQRコードモバイル乗車券システムで、ミニプログラムとして備わっています。

Alipay香港の起動画面。左上に残高HK$0.00とあるが、クレジットカードを登録しているので現金はいれておかなくていい。その下に「EasyGo」が見える

 では実際に使ってみました。まず地下鉄の入り口にはEasyGoが使える改札口の手前から紫色の大きい案内が床に貼ってあります。歩きながらAlipay香港を起動してEasyGoを起動しておくといいでしょう。なおEasyGoをスマートフォンのショートカットをスマートフォンのメイン画面に置くこともできます。

地下鉄の入り口。目立つように案内がある

 QRコードリーダー対応の改札口は1つだけということはなく、2つ以上はあるので混雑することはなさそう。既存のオクトパスカードのリーダーが上にあり、QRコードリーダーは手前側にあります。スマートフォンをかざしやすい角度になっています。

QRコードを読むリーダーは斜め上を向いている

 EasyGoを起動すると、QRコードの下に「Adult」と見えますが、ここをタップして子供、年配者、大人一等車(MTR東線のファーストクラス)の切り替えができます。さらにその下に「MASTERCARD」が見えますが、ここをタップすると複数登録しておいた他のカードへの切り替え、あるいは現金をチャージしていれば現金に切り替えできます。

EasyGoを起動するとQRコードが表示される

 ここで、中国でQRコードを使って地下鉄に乗ったことがある人は、読み取りに1~2秒かかって「遅いなあ」といつも思われたかもしれません。筆者もしっかり読み取らせようと、リーダーの前にスマートフォンのQRコードを向けて2秒くらい読ませようとしたのですが、かざした瞬間に「ピッ」と鳴って読み取り完了。そのままにしていると再度読ませようと認識されたのか、改札口上部のディスプレイにエラー表示が出てしまいました。つまりQRコードだから遅い、とあえて余計なことは考えずに、さっとかざしてすぐに改札をくぐる、とすればよいようです。

スマートフォンのQRコードを読ませる。読み取り時間は思ったより高速

 あとは地下鉄に乗車。目的地の駅で降りれば、出口の改札口の前にも入り口と同じ紫色の大きい案内があります。

こちらは出口。やはりわかりやすく表示されている

 そして同様にEasyGoを起動してリーダーにタップ。なおQRコードは定期的に変わるので、地下鉄乗車中に同じ画面を出しっぱなしにしていた場合はリロードする必要があります。まあ乗っている間は他のアプリを使うでしょうから、出口前で再度起動すればいいでしょう。QRコードが無事読み取りされれば改札口を出ることができます。同時にAlipay香港を使って地下鉄に乗ったことと料金が通知バーから表示されます。

下車時は利用時間と料金が通知される

 使ってみての感想は、QRコードの読み取りが思ったよりも早いので十分普段使いできると思いました。アプリの起動は必要なものの、Apple Pay、Samsung Pay、Huawei Payに対応していない銀行口座・クレジットカードやスマートフォンしか持っていなくても使えるのは便利です。クレジットカードの登録が嫌な人は現金をコンビニで入れればいいわけです。

 現時点で対応している交通機関は地下鉄と一部のバス。香港のバスやフェリーは乗車時支払いのみ(下車時にもICカードを再タッチする必要なし)なので、いずれすべての交通機関がQRコード決済に対応するでしょうね。QRコードリーダーの設置準備中のバスを街中で見かけたことがあります。

 まあ海外に自由に行ける日が戻ってくるまでまだだいぶ時間がかかると思いますが、香港に来る機会が訪れたらぜひAlipay香港を使って香港滞在をキャッシュレスで楽しんでください。