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ドコモの赤い電動自転車が大阪に~「大阪バイクシェア」を試す

大阪バイクシェア

 東京都心部を中心としたエリアですっかりお馴染みになった、ドコモ・バイクシェアによる「赤い電動アシストつき自転車」のシェアバイクサービス、「大阪バイクシェア」が大阪市内で5月より提供開始されました。

 大阪バイクシェアは、東京都内や仙台市内で提供されているドコモ・バイクシェアのサービスと同様に、Webサイトにて会員登録を行った後、サービスエリア内のサイクルポートの好きな場所で自転車をレンタル・返却できるサービスです。

 利用料金は東京都内のサービスと同額で、月額基本料金が発生しない1回会員が最初の30分162円(税込)、以降30分毎に108円、1日乗り放題になる1日会員が1500円、月額会員の月額料金が2160円で、月額会員はレンタル開始から30分間は何回乗っても追加料金は発生しません。30分以降は1回会員と同額の30分毎に108円の料金が発生します。

 電動アシストつき自転車での移動は、徒歩で移動するにはちょっと距離が遠いけど、自転車があればさほど時間がかからない、といったケースや、観光などで電動アシストつき自転車をレンタルして自由に移動してみたい、というケースで使うと便利です。

電動アシストつき自転車で「UberEATS」を配達(東京都内)

 ほかにも、東京都内ではレストランの食事を配達してくれる「UberEATS」の配達員の移動手段としても使われており、都心部の昼・夕食時間帯には、同サービスの箱を背負って移動する配達員を目にすることが増えています。

 UberEATSは、大阪バイクシェアのサービス開始の少し前に大阪でのサービスが提供されているため、今後は大阪バイクシェアを使って配達を行うスタッフを目にする機会が増えるかもしれません。

 大阪バイクシェアは、サービスを開始した時点で大阪市内と近隣エリアに合計約20カ所にポートが設置されています。多くのポートは、大阪市内を中心に活動するNPO法人「Homedoor」(ホームドア)が提供するシェアバイクサービス「HUBchari」のポートとポートを共有する形で提供されており、市内中心部では「大丸心斎橋店」にも、自転車をレンタル・返却するためのポートが設置されています。

 このほか、自転車ポートは訪日外国人客も多く利用するホステルやホテルに多く設置されています。これは、ホテルに宿泊する訪日外国人客が移動するための手段として電動アシスト自転車のニーズがあることや、前述の「HUBchari」のポート展開が、これらの宿泊施設に多く設置されていたことが理由と考えられます。

大丸心斎橋店のポート
ホステルの駐輪場に設置されたポート

 大阪の街中を自転車で走っていると、車道が4車線以上ある大きな通りが一方通行になっており、(逆走になってしまうため)自転車で走行することができない通りがいくつかありました。地図で見ると自転車で走行できそうなルートでも、実際には一方通行などの規制によって走行できないルートがある点は注意が必要です。

 大阪バイクシェアは、スタート時点である程度の数のポートを備えている上、既に多くの利用者を抱えている東京エリアと同じように使えるサービスなのですが、最大の課題として「東京エリアで登録している会員情報のままでは、サービスを利用できない」という点が挙げられます。

 国内の最大都市圏である東京と、それに次ぐ大阪都市圏を頻繁に行き来している方は数多くいます。「見慣れた赤い自転車を、大阪(または東京)エリアでレンタルしよう!」と思い、いつも通りにおサイフケータイやFeliCa搭載の交通系ICカードをかざせば自転車をレンタルできる……というのが、多くのユーザーが期待する挙動ですが、実際には利用するエリア毎に会員登録を行わずにおサイフケータイなどをかざすと「認証失敗」というエラーが表示されます。

 筆者は、「大阪バイクシェア」の提供開始にあわせて現地入りし、サービス開始直後にレンタルしよとう、普段東京でそうしている通りにおサイフケータイを自転車にかざしてレンタルを開始…を試みたのですが、表示された内容は「認証失敗」というエラーでした。

普段通り使おうとすると「認証失敗」になった
「大阪バイクシェア」の新規会員登録が必要になる

 サービスが開始された直後の時間帯に試したため、「システムが正常稼働してないのかなぁ…。」なんて思いながら別のポートへ歩いてみると、普段東京エリアで使っているおサイフケータイを使って大阪バイクシェアの自転車をレンタルするためには、大阪バイクシェアに新規会員登録を行った上で、会員証としておサイフケータイの登録手続が必要になる。というサービス仕様を思い出しました。

 他区連携している東京エリア(江東区、千代田区、港区、中央区、新宿区、文京区、渋谷区、品川区、大田区)を除いて、利用する都市毎に会員登録が必要になるのは、大阪バイクシェアに限らずドコモ・バイクシェアのサービスにおいて共通仕様です。

 しかし、ドコモ・バイクシェアが提供する同一のプラットフォーム上のサービスを利用するために、エリア毎に会員登録が必要になるのは、率直に言って非常に面倒臭いものです。

 会員登録には、ユーザーID、パスワード、申込者の姓名、住所、支払情報などを入力する必要があります。街中でドコモ・バイクシェアの自転車を見かけたので、その場で登録して気軽にレンタルを開始できない(手間がかかる)というのが実状です。

 実際に、都内でドコモ・バイクシェアの電動アシストつき自転車に乗って移動していると、訪日外国人から「使ってみたい。どう使うの?」と声をかけられることも多いのですが、Webサイトで登録を行ってレンタルするなどの説明をしていると「手間だからいいか……」という具合に諦められることが多々ありました。

 この点は、サービスの利用開始にあたって細かな会員情報登録がほぼ不要で使える、中国発の「ofo」などのシェアバイクサービスだけでなく、国内系サービスではソフトバンク系の「HELLO CYCLING」と比べても「最初に使い始めるまでのハードルが高い」と感じます。

中国発のシェアバイクサービス「ofo」。国内で登録したアカウントで海外エリアでも利用可能

 ドコモ・バイクシェアのサービスは、東京・仙台・大阪・広島など複数都市でサービスを提供しており、都市によってレンタル料金が異なるなどの事情があるため、同一アカウントで全国各地のサービスを利用できるようにするハードルは、意外に高いものがあるのかもしれません。

 それでも、全国の交通系ICカードがほぼ相互利用できるようになり、SuicaやPASMOなどの交通系ICカードがあれば、ほとんどの都市でバス・電車などの運賃が1枚のカードで済むことを考えれば、自転車に乗るためにそれ以上の手間をかけるユーザーは、そう多く無いのではないかと思います。

 東京と大阪という二大都市で同一プラットフォームのサービスが開始された今、「1枚のICカードを使って複数エリアのサービスをシームレスに利用できる」という、ユーザー視点では「できて当たり前」と言える改善が行われることを強く願います。

 このほか、この原稿を執筆している最中に、大阪を震源とする大きな地震がありました。今回紹介している大阪バイクシェアは、6月18日の利用料を無料とすることを発表。Open Street社が提供するHELLO CYCLINGは、一定期間サービスを無料化する方針を明らかにしています。

 災害発生時、鉄道など主要な交通機関が復旧するまでに時間を要する中で、少なくとも今回の大阪の地震においては、シェアバイクサービスは正常に稼働しており、公共交通機関で移動が難しい場合に移動を助けるサービスになるかもしれません。