DATAで見るケータイ業界

携帯キャリアの「固定回線」契約数は伸び悩み傾向に

 楽天グループは、2月14日に開催した決算会見において、VNE(Virtual Network Enabler)としてフレッツに接続される新しい「楽天ひかり」を2023年度上期にも立ち上げることを公表した。

 そこで今回は、携帯キャリアの固定回線契約に関して取り上げたい。

顧客を囲い込む定番施策として「固定とのセット割」を各社が実施

 携帯キャリア各社が固定回線も積極的に販売する大きな理由は、顧客の囲い込みにある。携帯電話と固定回線の両方を導入してもらい、そこに割引を付与することで、他社へ転出するハードルを上げる手法で、各社が恒常的に行う定番施策となっている。

 楽天モバイルを除く3社は、NTTドコモ「ドコモ光セット割」、KDDI(au)「auスマートバリュー」、ソフトバンク「おうち割 光セット」との名称でそれぞれ割引サービスを実施している。携帯電話と固定回線を両方契約することで、携帯電話の利用料金から一定額を永年割り引く枠組みもほぼ共通といって良い。最近では、固定回線の代わりにホームルーターを契約した場合も同様の割引を受けられる仕組みとなっている。

 対する楽天モバイルは、携帯電話と「楽天ひかり」を両方契約すると、楽天ひかりの月額基本料を初年度(開通から最大12カ月)無料とするキャンペーンを展開中だ。

定番施策ゆえに既に普及は一巡?契約数は伸び悩み「ドコモ光」は減少に転じる

 携帯キャリア各社の固定回線は、どの程度契約されているのだろうか。IR資料で固定回線の契約数を開示している3社の契約数(2022年12月末)は、ソフトバンク「ブロードバンド」が835.4万、NTTドコモ「ドコモ光」が728.2万、KDDI「FTTH(パーソナルセグメント)」が514.2万で、3社合わせて2000万を超える契約数を抱えていることが分かる。

 KDDIの場合、この数字にはCATVが含まれていない。CATVの契約数(RGU対象世帯数)は563.4万となっており、この数字を含めると2500万超に達することとなる。

 多くの顧客を囲い込んでいることが数字の上でも明らかとなったが、定番施策ゆえに既に普及は一巡しつつあるようだ。四半期ごとの増減をみると、2022年10~12月期にNTTドコモは純減(-0.4万)に、ソフトバンクも0.2万増とほぼ横ばいの水準にとどまっている。

 KDDIは毎四半期5万前後の純増を維持していることから、市場全体が完全に頭打ちとなった訳ではないが、伸びしろは徐々に小さくなってきている。

 この背景には、セット割引の対象外となる場合が増えてきたことも指摘されよう。サブブランドの「Y!mobile」「UQ mobile」はセット割の対象(割引額などの条件がメインブランドと異なる場合もある)だが、オンライン専用プラン「ahamo」「povo」「LINEMO」はいずれもセット割の対象外だ。

 顧客囲い込みのツールとしてこれまで重宝されてきた「固定とのセット割」だが、直近で割引の大枠に変化はなく、粛々と割引が維持されてきた印象が強い。しかし、割引が適用できない新プランが浸透したことに加え、新しい「楽天ひかり」の提供を受けて楽天モバイルが攻勢を掛ける可能性もあり、今後の変化には要注目だ。

IT専門の調査・コンサルティング会社として、1993年に設立。 主に「個別プロジェクトの受託」「調査レポート」「コンサルティング」サービスを展開。 所属アナリストとの意見交換も無償で随時受け付けている。 https://www.mca.co.jp/company/analyst/analystinfo/