DATAで見るケータイ業界

Tポイントからの離脱を決めたソフトバンク、焦点は共通ポイントへの対応

 これまで共通ポイントプログラム「Tポイント」を活用していたソフトバンクグループ各社が、揃って4月1日に自社サービスへ移行することが決まった。

グループ内のソフトバンクとヤフーが一斉にTポイントから離脱

 ソフトバンクは、同ブランドの携帯電話利用者を対象に、月々の携帯利用料金支払いなどにTポイントを付与してきた。これを新たに始める「ソフトバンクポイント」に変更する。貯まったポイントは、機種代金や修理代金、携帯利用料に充当できるほか、PayPayボーナスに交換して利用することも可能となる。

 また、Yahoo! JAPANは、Yahoo!ショッピングやYahoo!トラベルなどの各種サービスにおいて、付与するポイントをPayPayボーナスに変更する。クレジットカード(Yahoo!カード)は、ブランドをPayPayカードへ切り替えた上で、PayPayボーナス付与へと変更する。

今後の焦点:決済一本足か、共通ポイントにも踏み出すか?

 登録者数が4500万人を突破し、スマホ決済で先行するPayPayを活用することで、自社経済圏のさらなる強化をはかる狙いとみられるが、今後の焦点は共通ポイントの取り扱いだ。

 KDDIはもともと自社で「au WALLET ポイント」を展開していたが、共通ポイントサービスを持たない弱みを補完するため、2020年5月に「Pontaポイント」にわざわざ切り替えている。

 今回のソフトバンクの動きは、共通ポイントからの離脱となり、まさにKDDIとは逆の動きとなる。

 スマホ決済も共通ポイントも、利用金額に応じた還元を付与する枠組みとしては似ている部分が多い。特にYahoo!の各種サービスについては、単にTポイントがPayPayボーナスに変わるだけで、大きな違いはない。

 しかし、実店舗では状況が大きく異なる。共通ポイントは、店舗での支払いが現金だろうと電子マネーであろうと、ポイントカードを提示すればポイントが付与される(一部で決済方法に制限が設けられている場合もあるが)。

 その反面、4月以降共通ポイントから離脱するソフトバンクは、PayPayで支払わない限りその恩恵に浴することができない。そのため、店頭でPayPayを使いつつ、ポイントカードは他の共通ポイント(dポイントなど)を提示する、といった使われ方も生じるだろう。

 ソフトバンクは、PayPayに一本化して敢えて共通ポイントプログラムから手を引くと決めたのだろうか。はたまた、既に今後何らかのポイントサービスを打ち出すべく準備を進めているのだろうか。

 後者であれば、現在VISAデビットのプリペイドカードとなっている「ソフトバンクカード」に新たにポイントプログラムの機能を付与してゼロから立ち上げる方法や、PayPayにポイントカード機能を追加するなど、色々な方法が想起される。

 また、Tポイント以外のプログラムと再度連携する可能性も捨てきれない。全国規模の共通ポイントプログラムとしての選択肢は多くないが、ポイントサービス単体でみれば、家電量販店やドラッグストア、スーパーなどの小売各社をはじめ、クレジットカード会社や航空各社(マイレージ)など林立しており、その中から提携先を探すこともできるだろう。

 実際に切り替えが行われる4月に向け、新たな発表が打ち出されるのか、気になるところだ。

TポイントはPayPayへの交換サービスで生き残りをはかる

 なお、Tポイント側も、貯めたポイントをPayPayボーナスへ交換できるサービスの提供を予定している。ただし、今のところ開始時期や交換レートは発表されていない。

 類似のサービスとして、Tポイントを現金に交換できるサービス(PayPay銀行への入金)が現在提供されているが、これは100ポイント→85円というレートのため、見劣り感は否めない。

 「TSUTAYA」の圧倒的な顧客会員数を背景に構築されたTポイントだが、足元のレンタル事業が斜陽化し会員基盤が弱体化する中で、さらにソフトバンクグループという巨大な加盟店の離脱も決まり、正念場を迎えている。こちらも、次の一手が注目される。

IT専門の調査・コンサルティング会社として、1993年に設立。 主に「個別プロジェクトの受託」「調査レポート」「コンサルティング」サービスを展開。 所属アナリストとの意見交換も無償で随時受け付けている。 https://www.mca.co.jp/company/analyst/analystinfo/