DATAで見るケータイ業界
キャリア各社が総力戦で挑む「ポイント」経済圏作り、競争激化で増大する維持コスト
2021年8月1日 00:00
通信キャリア各社が勢力拡大にしのぎを削る「経済圏」。携帯電話の利用者という膨大な顧客基盤を、金融や決済、電力、ECなど、その他のサービスへも送客していく流れは、取り組む分野に濃淡はあれど、キャリア各社が共通して採用する戦略だ。
経済圏拡大に向け激化する「ポイントプログラム」強化
経済圏をより強固なものとすべく、各社が力をいれているのがポイントプログラムの活用だ。自社が提供するサービスを利用すれば利用するほどポイントが貯まる仕組みを導入し、エコシステムを構築している。
顧客にとっては、利用するサービスを同じグループに集約することで多くのポイントがもらえる利点がある。また企業側にも、顧客の囲い込みによる競争相手との差別化や、新たなサービスを始めた際に経済圏からの送客が期待できるなど、多くのメリットがもたらされる。
ただしここまでの話は、顧客にとって経済圏が魅力的かつ使い勝手のよいものとなっていることが前提となる。各社が経済圏のサービス競争を繰り広げるなかで、ポイント施策は重要性を増すばかりだが、一方でポイントプログラムを維持するための負担も増大している。
たとえば楽天の場合、顧客に発行したポイントの累計額は2020年9月に2兆ポイントを突破した。1兆ポイントに至るまで15年かかったのに対し、その後3年間で2兆ポイントを突破した。年間ポイント発行額は既に数千億規模に達している。
利用者・導入店舗のいずれにもキャンペーンを継続中のQRコード決済
経済圏競争の軸であるポイントと紐付いているのがQRコード決済だ。大半のQRコード決済サービスがポイントプログラムと連動しており、貯めたポイントをチャージしたり、支払時に充当したりできる。また、決済額に応じたポイント付与も行われている。
サービス普及拡大に向けて、顧客向けには各種割引キャンペーンを、導入店舗向けにはシステム手数料の軽減を続けており、現時点では各社とも収益化に至っていないとみられる。決済最大手のPayPayであっても、システム手数料の有料化は今年10月にようやく開始される状況だ。
各社とも「持ち出し」を続けているが、将来的には決済手数料だけでなく、決済アプリ利用者の広告・送客や、決済データ分析などのプラットフォームビジネスを収益源と見据えている。
とはいえ、こちらも多くの顧客が利用し続けることが大前提で、顧客が流出してしまえば画餅に帰してしまう。国内では、交通系ICカードをはじめとした電子マネーが既に広く行き渡っており、クレジットカードも含めて多様な決済手段が既にある中で選ばれ続けなければならない。もちろんキャンペーンを打ち続ければ利用者は維持できるが、収益化が遠のくジレンマを抱える。
このように、ポイントプログラムもQRコード決済も、競争激化で魅力維持の負担が日に日に増している。通信料金値下げが収益に対して影響をもたらしつつある中、各社の大盤振る舞いは、果たしていつまで続けられるのだろうか。