第480回:Web119 とは

大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我 ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連の Q&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


 「Web119」とは、声によるコミュニケーションができない人でも、携帯電話を使って、緊急の事故や急病といった内容の119番通報をできるようにするシステムです。

 仕組みとしては、利用者が携帯電話のiモードやEZWebなどのインターネット接続機能、あるいはJavaアプリで専用サイトにアクセスし、チャットページを表示して、24時間体制で待機している窓口へ文字入力で通報する、というものです。

 緊急の119番通報で伝える話と同じ内容を文字で伝えられるほか、現在の携帯電話の特徴を活かしてGPSによる位置通報機能で、ユーザーの現在地を同時に通報することもできます。

 事前登録制で運営されており、ユーザーの氏名、住所などは、「Web119」の利用開始時に登録されており、消防本部側では通報を受けた時点で、画面上でユーザーの氏名や住所を確認でき、地図で位置情報も参照できることから、音声通話で場所を聞き出すよりも正確な情報を瞬時に把握することができるというメリットもあります。

 このシステムを採用している自治体では、基本的に自治体内のエリアに居住したり通勤/通学したりする聴覚障害者向けにサービスを提供しています。利用するには、市町村役場への登録が必要になります。ユーザー側では、iモードやEZwebなど、Web119対応の携帯電話を利用することになりますが、特殊な端末ではなく、一般的な携帯電話で利用できます。京都市のように観光で訪れる聴覚障害者でも利用が可能にしている場合もあります。京都市の場合は、京都市観光案内所等で利用申込用のメールアドレスを取得し、オンラインで申し込むことが可能で、その場合、申し込んでから3日間、「Web119」の通報機能を利用できます。

携帯電話対応ならではのメリット

 これまでも多くの自治体で、聴覚障害者向けの緊急通報サービスが提供されていました。方式としてはFAXで受け付けたり、メールによる通報受付を設けているところもありますが、たとえばFAXの場合は主に自宅からの通報に限定されたり、メールでは受付から応答まで遅延が発生したりするといった課題があるとされています。

 一方、「Web119」では、携帯電話から利用できますので、どこでも通報できる、ということが大きな特徴の1つになっています。また、チャットで消防本部側がユーザーへ何らかの問いかけをすることもできますし、GPS対応の携帯電話であればより正確な位置情報を把握することもできます。ただし、その自治体が担当するエリアからの通報のみ受け付けることが多いようです。

 通報者は緊急通報開始時に「火災・救急・救助の別」「自宅・外出先の別」を入力します。消防本部側のサーバーでは通報を受け付けたことを表示して、携帯電話の固有情報をもとに氏名や住所などの情報と、通報者のおおよその位置を確認します。

 通報時に携帯電話からアクセスする際は、携帯電話の固有情報を用いてアクセスするためIDやパスワードの入力は必要なく、ボタンを押して通報を開始するだけで、消防本部がユーザーを認証することが可能になっています。

 

(大和 哲)

2010/8/17 12:54